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第43話 もしかすると大変なのかもね。

本日もこれが2話目になります。1話目を読まれてない方は1話戻って読んでくださいますよう宜しくおねがいします。



 昼休み、俺はいつものように中庭にやって来たわけなんだけど今日はなぜか美樹さんが手ぶらで来ていた。


「お待たせしました。食べましょうかといつもなら言うところなんですけど、美樹さん手ぶらですね。お弁当はどうしたんです? 」


 俺はもし忘れたのなら売店でなにか買うか学食に行く必要があると思って聞いてみると


「蒼汰さん、大丈夫ですよ。今日は用事がありましていつもより早く学校に来なくてはいけませんでした。なので、美優ちゃんにお弁当を持ってきて貰う予定なんですよ」


「そういうことですか。なら美優が来るまで待ってましょうかね? 」


 理由がわかり、そのように美樹さんに言ったところ、美樹さんと千夏さんがなぜか怖い目をして俺を見ていた。恐る恐る


「えーと、俺なにかしましたっけ? 」


 尋ねてみると


「いつの間に美優ちゃんのことを名前で……それもさんもつけず呼び捨てで呼んでいるのですか? 」


「うん。私達もさん付けなのに。いつの間にそんなに仲良くなっているのか……」


 ふたり揃って名前呼びについて突っ込んできた。まさかそこを突っ込まれるとは。


「……ふたりとも怖いですって。いえね、この間美優から千穂さんと美樹さんが俺のことを名前で呼んでいて、美優だけ名字で呼んでいたらしく家族内で疎外感がありすぎたから名前で呼ばせてほしいって言われたんですよ。ついでに名前で呼んでほしいっていうのもですね。それから名前で呼んでいます。さんをつけてないのは同級生だからですよ。ふたりは先輩じゃないですか? だからさん付けですよ? おかしくないでしょ? 」


 なにか言い訳じみた言葉になってしまった感があるが間違っていないぞ。そういう理由だから。


「そういうことか。でもな、先輩とか関係なく呼び捨てで呼んでほしいなと私は思ったのだが……」


「そうです、そうです。美優ちゃんだけズルいです。私もさん付けじゃなく名前だけで呼んでほしいです」


 なんか最近このパターン多いなと思いながらも


「はい、わかりましたよ。美樹、千夏。これでいいですか? 」


「ああ」「はい」


 ふたりはとりあえず落ち着いてくれたようだ。


 そんな会話をしていると美優がやって来たようで


「お待たせしました、姉さん。」


 そう言って美樹にお弁当を差し出した。


「よっ」


 俺は手を上げて挨拶をしたわけだけど


「珍しいわね、蒼汰くんから挨拶してくるなんて」


 そんな事を言われてしまう。


「そりゃ美樹の弁当持ってきてくれたわけでしょ? 関係がないわけじゃないんだから挨拶くらいするよ」


「はぁ? 美樹? いつの間に呼び捨てに……」


「ああ、今なったよ。お前のこと美優って呼んでたから改めさせられた」


 俺は苦笑しながら美優に言う。


「はははっ姉さんの嫉妬か。見たかったな」


 そんな事を言って美優は笑った。


「美優ちゃん、お姉ちゃんをからかっちゃ駄目なんですよ? 」


 ちょっと頬を膨らませた美樹が美優にそう言った。千夏はそんな美樹を見て苦笑しながら


「美優ちゃんもよかったら一緒に食べないかい? 」


 美優を誘ってみる。


「はい、お邪魔でないようでしたらお邪魔します」


 美優はそう言って美樹の横に座るのだった。




 当たり障りのない会話をしているはずなのだが、なぜか美樹と千夏の顔が少しずつ変わっているような気がする。俺はこそっと


「美優、なぜか先輩ふたりが怒っているように見えるのは俺だけか? 」


 聞いてみると


「いいえ、私にもそう見えます。蒼汰くんなにかしましたか? 」


 美優もそう思っているようで俺に問いかけてきた。


「いや……普段通りのはずなんだが」


 仕方ないと俺はふたりに直接聞いてみることにする。




「あの、美樹に千夏。なぜだかわかりませんが怒ってないですか? 」


 そう聞いてみると


「蒼汰さんと美優ちゃんの会話を聞いてて思ったのですが、なぜ美優ちゃんと私達との会話に違いがあるのでしょうか? 先輩だからですか? タメ口と言えばでいいんでしょうか。私達には丁寧ですけど美優にはタメ口という言葉遣いで話されています」


「そうだな。美優ちゃんとの会話のほうが気楽に話している気がする。私達との会話は緊張するということなのだろうか? 」


 ふたりはどうも言葉遣いのことが気になっていたようだ。というか……今日2度目か。このパターン。


「そういうことですか。えっとふたりは俺がタメ口での言葉遣いがいいんですか? 」


「ああ」「はい」


 ふたりは揃ったように返事をした。俺は観念して


「わかり……わかった、わかったよ。これからこの言葉遣いで話すからそれでいい? 」


「はい、それでお願いします。蒼汰さんをもっと近くなったように感じられて嬉しいです」


「そうだな。親近感が湧いてその方が良いよ」


 そう言ってふたりは笑ってくれたので俺は胸をなでおろすのだった。






 美優はなにかに気付いたようで


「今気付いたんだけど千夏先輩のことも呼び捨てにしてない? どういうこと? 」


 そう俺に問いただしてくる。


「ああ、千夏も呼び捨てが良いって言われたからな」


「はぁ、千夏先輩もなのね。もしかするとあなたも大変なのかも。両手に花っていうのも……いいことばかりじゃないってことね。頑張って頂戴」


 そう言って俺と先輩たちを見渡した後、苦笑いをする美優だった。

 





お読みいただき有難うございます。

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