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第42話 親子水入らず。



 放課後、千夏さんが新見に断りを入れるため会うらしく俺はひとりで帰ることになった。美樹さんも千夏さんが心配だからと着いていくと言っているので。まあ、断るだけらしいので問題はないかなと思っている。さすがに新見も変なことはしないだろうし。


 俺はホームルームが終わると、すぐ鞄を持ち帰宅しようとしたところ


「もうお帰りか。先輩待たせちゃ悪いもんな」


 圭佑がそんな事を言ってきた。


「いや、今日はひとりだぞ。ふたりとも用事があるからってね」


「ほう、ひとりで寂しくお帰りか」


「前までひとりだっただろうに。前のように早く帰って家事するだけだ。ここのところ親父に外食させる機会増えたからなんか作ってやんないとなあ。ということでまたな」

 

 親父にちょっと申し訳ないなと思ってる俺としては今日はいい機会かもしれないなんて思っていた。




 まあ料理と言っても大したものは出来ないから、酒のつまみに良いだろう揚げ物くらいにしとくかと鳥とじゃがいも、れんこん等を唐揚げ、または素揚げにしてみた。簡単だし美味しいしこれでいいだろと俺は用意を済ませた。


 帰ってくるまでに風呂に入ったりとすることはしておいた。勉強もきちんとしておく。赤点なんて取って親父に迷惑かけたくないからな。


 勉強をしている間にどうも親父が帰ってきたようで「ただいま」の声がしたような気がする。

 俺は勉強をとりあえず途中でやめ、親父の元へと行った。




 親父はもうテーブルについて揚げ物を食べていた。


「親父、おかえり。ってもう食べてんのかよ」


 俺は呆れて親父に言った。


「ただいま。いやいやすまん。美味しそうなものが目の前にあったんでな。いつもありがとうな、蒼汰」


「いや、ここのところ外食してもらってたしな。悪かったなあと思って今日は酒のつまみって感じで適当に揚げてみたわ」


 俺はそう言って冷蔵庫からビールを取り出して親父に渡す。


「どうぞっと」


「おっ気が利いてるな、ありがとう」


 親父は受け取って早速ビールを飲んだ。


「やっぱ美味いな」


 何が美味しいのか俺にはわからないが美味そうに飲む親父に笑いが出る。すこし落ち着いた感じになったので俺はオヤジの対面に座って揚げ物をつまむことにする。


「そうそう親父、話があったんだ」


「ん? 改まってどうした? 」


 親父が不思議そうに聞いてくる。


「ああ、最近俺が遅くなったりした理由を話しとこうと思ってね」


 そう言って美樹さんと千夏さんのことについて話をした。告白されたこと、ふたりに好意を得ていること、これからその関係上遅くなったりこれからもあるかもしれないこと等。


「ほう、そうか。蒼汰に好意を持ってくれる人が現れたか。そんな話を聞くと父ちゃん嬉しいなあ……」


 親父はしみじみとそう言ってくれる。


「俺は蒼汰が付き合うなら相手がどんな人かなんてどうでもいい。お前が選ぶ人なんだからな。ただ、わかっていると思うが相手の好意は大切にしろ。誠実に付き合え。無下にしたら俺は許さんぞ」


「わかってるって。俺自身嫌な目に合ってるんだから。あんな目に合わせる気なんて毛頭ないよ」


「わかってるならいい。まあ、気が向いたら父さんにも紹介してくれ。ただ、ふたりか。どっちを選ぶとか蒼汰なりに考えているのか? 」


 親父はふたり相手がいることに気がいってしまっているようだ。


「ちょっと困惑気味かな、今は。多分今は美樹さんのほうが恋愛感情的に言えば好きだと思うよ。そういう感情を考えて先に見て居たわけだから。ただ、だから美樹さんを選ぶかというとちょっと違うかな。俺の気持ちってものがまだまだよくわかってないからさ。だけどふたりとも友達として好きな人だからさ。これからもふたりをよく見て感じてきちんと結論出すつもり」


 俺は素直に思っていること話した。


「俺も経験したこと無いからなあ。まあ、しっかり悩んで悩みまくって決めろよ。軽い気持ちで選ぶと後悔するからな。でもまあ、俺の場合は追っかけることしかしてないからよくわからんがな。おまけに追っかけた母ちゃんに逃げられてしまったわけだし」


 親父はちょっと苦笑した。


「親父は失敗したと思ってる? 」


 俺は親父に母さんを選んだことについてどう思っているか聞いてみた。


「いや、母ちゃんはあんな人だったけどそれでも蒼汰が生まれたからな。それだけで失敗したとは思わないな。良かったことだと思ってるよ」


 そう言うと親父は俺に優しい笑顔を向けてくれた。

お読みいただき有難うございます。

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