誰かを好きって気持ちは簡単に消せるものじゃないよ…私たちは心をもった人間だもの
……うう、切ない。
愛歌も、失恋したことがあってね。3週間くらい前かな……?
●ちゃんって子なんだけど…すごく優しくてあったかくてすてきな子で……本当に本当に大好きで
もう一度、君と話がしたい……
『名前のない歌』 作詞:日野 愛歌
はじめて出会ったあの日、君は泣き止まない赤ん坊の
涙をそっとぬぐって誰かを慈しむ心を教えてくれたね
はじめて別れたこの日、君は泣き疲れた老人の
涙腺をひっかいて 誰かを失う痛みを教えてくれたね
いつか二人でお花畑で暮らすんだって思ってた
僕が思い描いていた季節には君と僕と赤ちゃんがいて
そこには痛みも苦しみも嘘も真実もなくて
ただ灰色のプリズムだけが 粉雪のように舞っていた
君と愛した昨日では 生命の歌が響き合う
僕が壊した明日では 月と太陽がくるくると追いかけっこしてる
色褪せることもできないまま モノクロの月日は
西へ東へサイクルし 自分が死んでしまったことにすら気付かない
今この地平線には ≪世界≫の片隅で君の返り血で濡れた掌を
ぼうぜんと見つめる 僕だけがのこされていた
この記憶をデリートしようとゴミ箱に手を伸ばすたびに
寂しがりやの天使がだだをこねる
あの記録をローディングしようと祈りを捧げるほどに
残酷なる悪魔が カレンダーを真っ黒にぬりつぶす
『誰かを好きって気持ちはそんなに簡単に消えるものじゃないよ……
だって私たちは生きてるんだもの。ココロをもった人間なんだもの』
君は今、どこで何をしているのだろうか?
闘うことを覚えた君は、逃げることを覚えた僕を追いかけてきてくれるだろうか?
僕は今、ここで何をしているんだろうか?
こんなバーチャルな世界でしか自分の想いをトレースできない僕を
君はしかってくれるだろうか?
『僕には彼女の想いを蔑ろにしてまで、貫き通したい想いがあるんです』
『そんなのは愛じゃない……ただのエゴじゃないか 俺のバカヤロウ…』
ただ今は君の幸せだけを願う
白馬の王子さまになれなかったホビットに白雪姫の右にいる資格はない
狼からのくちづけを拒んだ赤ずきんに褥に狂うベッドはない
ただ僕は君の優しさだけを妬む
零と唯のはざまでひなどりの影法師に翻弄される
薄っぺらなドッペルゲンガー 彼はふと自分が偽者だったことに気付く
ただ君は君の明日だけを舐れ
美しい蝶の羽をもぎ、その燐粉で身体が麻痺してしまった腹減り蜘蛛は
八つの青い葉にかけた巣ごと≪世界≫をきれいに食べてしまおう
だから……
もう二度と逢えない遠くに行ってしまった君へ 名前のない歌を捧げます
どうか君のココロに届きますように
ばいばい。
さようなら。
おやすみなさい。
ありがとう。
『――僕はあなたを忘れません』
『あなたの想い――届きました』