表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/36

面会


 第一会議室に到着し、中に入るとそこにはすでに人が集まっている。


 だが昨日の緊急招集と比べれればその人数は少ない。

 碧と黒柳の二人を除けば最高責任者とそれぞれの部の代表、会わせても十人にも満たない、その中に青島と朱里の姿はなかった。


「来てくれたか、朝早くにも関わらず呼び出しを掛けてしまって申し訳ない」


 最初にそう言ったのは召集を掛けたであろう最高責任者の老人。


「何があったんです?」


 前置きは良いから早く話してくれと言わんばかりに黒柳は質問していく、彼もまた藍川という存在に対して大きな心配を寄せているのだ。


「今から説明する、まずは着いてくれ」

「はい……」


 そういって黒柳は席の方へ向かう、黙っていた碧もその後を追うようにして黒柳の隣に座る。

 そしてついに会議が始まる。


「さて……皆、予想は付いているだろうが……先ほど藍川君の意識が戻った」


 それは喜べる事、だがそう語る老人の口は重い、やはり都合の良いだけの結果となったわけではないようだ。


「あの、それで藍川さんは今……」


 一刻も早く彼の様子を見たい、そう思った碧は自ら発言していく。


「君は彼の『観測者』だったね、彼の意識は明瞭で記憶の喪失なども確認されていない」


 それだけ聞けば悪いことは何も起こっていない、そう判断したとしても全く問題はないだろう、だが次に発した言葉によってそれは疑問によって覆われる事となる。


「だが、彼に何が起こっているのか……まだ不明なんだ」


 老人はそう言った。

 意識は明瞭で記憶の喪失も確認ないのに不明?

 その言葉の意味が良く理解できず碧は何も言えなかった。

 それを補足するかのように老人は続けていく。


「私は以前の彼とは数回言葉を交わした程度だ、日常的に接していた君と比べれば断言出来るほどの確信はない、だが……それにしても今の彼は……」


 老人は口ごもる、その様子を聞いていた周りの人たちも目線を泳がせたり、何か考えこむかの様に俯いたりし始める。

 ここにいるのは私を除いてこの施設を代表するような位置にいる人たちだ、その人たちがここまで動揺している様子を見せるのはますます不安に思えてくる。


「……彼に会うことは」


 だが碧は普段の様子とはまるで違って発言していく、そこには藍川に対する強い思いがひしひしと感じられる。


「そうだな、君ならあるいは……」


そう責任者が口にする、だが隣に座っていた男、施設の副所長が反論する。


「代表! 詳しいことが判明するまでは……その安易に他者と接触させるべきではないと思われます」

「いや、彼女は以前まで彼の最も近くにいた人間だ、彼女なら以前の彼との違いも分かるかもしれない」

「……わかりました、念のため手配は行っておきます」


 そう二人の間で交わされる言葉、それは聞いているだけでも彼の状況が悪いという事を示している。


「碧……」


 隣に座る部長も心配そうに碧の方を見る


「部長、藍川さんの一番近くにいたのは私です、私なら彼の状態を区別できます」


 碧はそう言い切った、そこに偽りはない。

 彼の事なら何でも分かる、その自信があった。


「観測者」としては勿論、それとは違う個人的な部分においても彼の事についてならば自分が一番知っている、その存在でありたいと強く願っていた、今の彼に接することは義務だ。


「よし、碧君今から説明する事を良く聞いてくれ」


 そう前置いた後で責任者は語り始める。

 その説明が終わった後、私は彼に会うこととなった。


――今の彼に。



 数時間後、重厚な扉の前に碧は立っていた。

 扉は複数のロックによって閉じられ管理室において積極的な解除動作を行った場合に限り初めてその開錠が許される。


 そのやりすぎと断言できるほどの物理的な防衛が掛けられた部屋の中に藍川はいる。

 ついに彼と会う、その期待と同時に緑の中では同時に不安も大きくなっていった。


「――碧君、準備は良いかね?」


 耳に装着したデバイスから聞こえて来るのは責任者の声。


「はい、大丈夫です」

「――その先の部屋は二重の構造となっている、今目の前にある扉の先にも同様の構造の一回り小さな部屋が存在し、そこで強化ガラス越しに面会できるようになっている」


 まずはそこへ向かってくれ。


 そこで通信は途切れる、と同時に扉から複数のガキンガキンという音が鳴り響く。

 扉のロックの解除音だ。

 その音が鳴りやむと重厚な扉がゆっくりと左右にスライドし開いていく。


「すぅ……はぁ……」


 碧は軽く深呼吸をするとその部屋の中に入っていく。


 部屋はかなりの広さだった、イメージとしてはホールのようなものか。

 広さは大体二十五メートルメートル四方ほどあり天井までの高さも五メートル近くある。


 それらを見渡していると天井と床の中間あたりにガラスのような透明な部分で隔てられた部屋のようなものがあり先ほど会議室にいた人たちが全員そこで見守っているのが見える。


 勿論、黒柳もそこにいて他の人たちと一緒にこちらを見下ろしている。

 部屋の周囲には監視カメラなども設置してありますます厳戒態勢での監視が行われている部屋であるという事が感じられた。


 そして部屋の中央に鎮座しているもの、大きな部屋の中に備えられたもう一つの小さな部屋。

 形状はコンテナハウスの様であり、中に入るための扉とその扉の開錠のために使われる配線がそこから床を伝って伸びている。


 その部屋の四方の一面、ちょうどこちらを向いている方はガラス張りになっていて中の様子が確認できる。

 中にあるのはベッドとトイレ、洗面所。

 そして――彼。


 服装は病院の患者が着ているようなゆったりとしたものだった、その恰好を除けば彼の顔も雰囲気も何も変化はないように碧には見えた。


「――碧君、アクリル板の部分に椅子が設置してある、そこで彼と話をしてみてくれ」

「……はい」


 デバイスの指示に従ってガラス面の前に移動する、アクリル板には小さな穴が複数開けられちょうど留置場にいる人間との面会を行っているような状態だ。


 碧は椅子に腰かけ向こう側にいる藍川を見つめる、藍川も彼女の姿に気が付きベッドに座ったままこちらを向いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ