訓練1日目
春休みって・・・
朝起きて目を覚ます。
部屋の窓を開け、二段ベッドの一段目で寝ているアキトの布団を奪って外に干しておく。
まぁ、窓枠に引っ掻けるだけなのだが。
「布団も干すには少し早いけど、これで起きるだろ。」
それでもまだ、すぐには起きそうにもないので顔を洗いに行くことにする。
部屋自体には手洗いがないので、共用トイレまで行く。
「あ、歯磨きとか全然してないや。ってか、歯磨きの文化あんのかな…」
どの宿の浴場やトイレ等は全て1階に設備されているため、一度降りなければならない。
「今日から7日間も訓練するのかぁ…。最近あんまり体動かしてなかったからなぁ。筋肉痛とかなりそうだな 。」
街に着いた日の夜、筋肉痛に見舞われた記憶がフラッシュバックする。
「あの時よりキツくなるだろうよ。」
「お、アキト起きたのか…」
いつの間にかアキトが横にいた。まだ眠たそうだが思ったよりすぐ起きれたようだ。
「お前布団はがした上に魔法で部屋の室温下げただろ?寒すぎて起きちまったよ・・。」
「……いや気のせいじゃないか?寝ぼけてたんだじゃね?」
「ったく後で覚えとけよな。」
「いやぁ、今日は天気がいいから楽しい講習ができそうだなぁ。」
なんて朝から友人を魔法の実験台にしながら遊ぶ。その後アキトに朝食のスープを冷やされたので明日はもっと室温を下げることを心に決めた。
これからの講習に気を揉みながら、受付嬢との約束の時間を目指してギルドを目指す。
ギルドの朝は人が意外と多い、ただしそれは昨晩からの飲み明かしであったり、二日酔いで動けないやつなど…まぁ兎に角理由が酒な場合が多い。これはどこでも似たような話であるらしい。
しかし、このギルドではギルドマスターがクエストを勝手に指定することがあるらしくいつまでもそうしてはいられないそうで…。
クエストボードを受付嬢達が整理し始めた。
クエストの更新、そして追加が行われるようだ。
「おっしゃぁあ!今日はこのまま休みだっ!」
「マジかよぉ、昨日も指定クエストあったじゃんマスター!」
「えぇ…マスター私たちこのクエストむりじゃないですか?」
クエストを確認し終えた人達がそれぞれ声を上げる。
「えぇっと…クエスト内容に文句や質問ある人は端のカウンターにどうぞ。」
「受付嬢ってすごいな、あの強面前に文句あるなら来い!なんて言うのか。俺には怖すぎるだわ。」
「確かに…でも意外と並ぶ人少ない…?」
「言われてみれば…列って初心者対応のとこに並ぶのか。」
「他のとこではクエスト受注とかするからじゃね?」
「それもそうか。…にしても昨日の人遅いなぁ。」
「まぁどうすることもできないし、座ってだらだらしとこうぜ。」
アキトとだべりながら、10分ほど時間をつぶしていると例の受付嬢が出てきた。
「おぉ、あんた達待たせて悪かったな。詫びとして私が昼飯は好きなだけ奢ってやろう。訓練は地下でやるからついてきな。」
「「了解であります!」」
「何言ってんだか…その元気をぜひとも維持してほしいところだな。」
そういってギルドカウンター横にある階段に向かう。地下には通称広場と言われる訓練施設があるらしく冒険者ならだれでも使えるように解放されているようだ。どうやら講習場所はそこらしい。
「ってか、僕たち育ち盛りで結構食べますけど大丈夫です?」
階段を下りて少し厳重なドアを開けるとやはり大きな空間が広がっていた。
見るからに初心者上がりの人たちが多くみえる。
「あぁ、昼飯が食べれるといいな?」
「えっ・・」
「それってどういう・・」
何故か俺たちの疑問には答えてくれず、その代わり広場にいる人たちに向けてこう言った。
「すまんが今日はこの2人の訓練ために場所を開けてくれないか?一緒にやりたい奴は残ってくれて構わない。」
ただこれだけだ、しかし広場にいる人たちは荷物をまとめ、逃げるように帰って行ってしまった。
この時すれ違った人たちの俺たち2人に送った同情の目を忘れをることはないだろう。
「よし、邪魔者はいなくなったしこれから講習を行う。5日ほどはここを使う、訓練時間以外も使用してかまわない。何か質問があるか?」
「残りの2日間は何を?」
「一応実戦をサポートする予定日にしてある。他にはあるかい?」
「それと気になったんですが…なんであんなに頑丈そうな扉なんですか?」
「お前たちが逃げないようにするための致し方ない措置だよ。」
「えっ?」
この反応、さらに今さっきの人たちの反応・・・。
このとき俺たちは初めて完璧な意思疎通ができたのではないかと思う。
(これは・・・やばいやつか?)
(やばいな。逃げるか?)
(逃げよう・・なかったことにしよう。)
扉の位置は受付嬢を挟み反対側だ。距離は20mといったところか・・。
左右に分かれて同時に駆け出せばどちらかが犠牲になる確率は高いが、少なからず一人は逃げれる可能性が高い。この可能性にすべてをかけることにした。
「あれってなんです?」
俺はアキトの斜め前を指さし聴いた。受付嬢が振り向いた瞬間を狙いスタートを切る。
そして俺は扉へと向かって駆け出した。逃げることが今生き残る方法だと。
ハイクソー!




