無茶ぶりは当然のこと…
雨がやんだのは数十分後だった
窓から覗く紺色の空からはいつの間にかこぼれ日のように月の光が注いでいた
―――――丁度その時だった
今まで黙りコクっていた希來が話しかけてきたのは
「…化粧?出来るんだ、キモ!」
おい、ちょこっとでも心配してた俺の気持ちを返せ
…でもまあ、もう大丈夫だろう
希來は単純に隣にいる、わかりあえる、同じ目線に立ってくれる人が欲しかっただけだ
上からでもなく、下からでもなく対等に
接してくれるヤツだ
そしてそれが何故か俺だったのだろう…罰当たりな
…さしずめ同級生とかは関わり方を忘れている
のだろう、なんせ俺と会う前〔恐らく〕から年上のお姉さん口説いて遊んでたんだからな、この年で
…それに同級生の女子はガキっぽくて面倒くさいのだそうだ
つくづく、嫌なヤツだな
「メイクは大事なのよ、メイクは…
女はメイク次第で可愛くない子も可愛く
見えちゃうんだから…騙されちゃダメよ~?」
「う゛キモい!オカマ!変態!
あーぁ…なんでこんなヤツに目ぇつけちゃったん
だろ?…何で気付けなかったんだろΣ( ̄ロ ̄lll)」
相っ変わらず毒舌だねぇ~
「でもお陰で友達が出来てよかったな、後輩君?」
「はぁ!?何それ?友達?後輩?百歩譲って知り合いならあるだろうけどそれはないね!」
…テメェ
「じゃあ舞翔に言ったことは何だったのかな
希來君?」
「そ、それは、あ、あれだよ、あれ、
そう言っとけば絶対大丈夫だろ?」
へぇ~そうなんだ…答えになってねぇ(  ̄▽ ̄)
「言っとくが舞翔は常識的な人間じゃねぇよ?」
ガサツで勇ましくて男みたいで…まあ、顔はクールでスタイルも悪くないな、でもメッサ強ぇし怒ると違う意味で怖いね…なんつーか言葉とやってることが噛み合ってねぇしな
「あぁん?あたしが非常識人ってことかぁ?
そうだとしてもお前にだけは言われたくねぇなぁ」
……ゲ!
「い、いつの間にかお帰りになっていたのですね…
舞翔様…お、俺は非常識人とは言っておりません
ことよオホホホホ…イッテェー!」
こ、こういう感じに優しい口調で間接技を
決めるというね…痛っ!
実の息子になんてことするんだ!
しかも希來もとい客の前で!!
「…つーかお前何やってんだよ!?出掛けんのか?」
「おう」
やっと間接技から解放されました
外れるかと思った…
舞翔がいればどこぞのボディービルダーとかクソも同然なんじゃないか!?
「はぁ…あんたも飽きないねぇ、いつまでやってるつもりだよ?」
そーッスね、飽きるまででしょうか
「まあ、止めないけど…
そういや坊や、名前聞いてなかったな
なんだ?哉翔に拉致られたのか?いや、カナか」
おいー!んなわけあるかー!
誰がガキ引っかけんだよ!
流石に俺はその辺はしっかりしてんよ
「実は…そうなんです」
「おいテメェ!何嘘言ってんだぁ!」
しませんよ?俺はそんなヤバいヤツじゃ
ありませんよ?
「あーもーうるさいな、一々…冗談ですよもちろん
今年の冬に丁度カナちゃんに会って、この前今度は哉翔に会ったんです
で、なんかすぐに打ち解けたんで…今の結果に
あ、申し遅れました、雛宮 希來です」
…意外とフツーじゃねぇか
「あーそう、希來ね、うん、覚えるわ
哉翔の友達は三人くらいしかいないからね
仲良くしてやってよ」
三人で悪いですか…?その中の一人は俺の
ガールフレンドですけどね
「あ、はい、こちらこそ…時に哉翔、まだ?」
はいはい、もう少し……っと
「出来た、行くぜ?」
゜.゜.゜.゜.゜.゜.゜..
今俺は…私は希來の家に着いた
春だからってナメてたわ、寒い((+_+))
でもそんなこと言ってたら可愛い服が着れないわね
我慢我慢!
「で、どーすんの?」
そーだったそーだった
何も説明してなかったわ
「要はお父さんにお前に少しでも興味がわけばいいのよね?」
希來が一番求めているものはただの親の子に対する愛情というやつね
普通親なら当たり前に持っているものだろうけど生憎私もわからない
だから興味を持ってくれるようなことをすればいんじゃない?
そーすれば少しは知ろうとか見ようとか思ってくれるはずでしょ
「それどーやんの?」
「別に私がお父さんに挨拶するだけで
いんじゃない?」
興味を持つ…友達関係に…ってね☆
驚くかな?寧ろ引くかな?
「はぁ!?え?まさかと思うけどおれには変態の友達がいますって父さんに言うわけ??」
イエス!絶対興味持つって
「ですです、そーですよ?」
「却下!!」
「なんで!?最善策じゃん!!」
完璧じゃん!手っ取り早いじゃん!楽じゃん!
「どこが!おれが恥じかいて終わりじゃん!!」
知るか!
「じゃあどーするのよ!?私はそのつもりで
来たのよ?」
「はぁ!?と、父さん落とすとか
言ってなかったっけ?」
落とすよ?とりあえずね
「お父さんは落ちます…未知の世界に行ってしまった息子を追いかけて恐ろしい現実に」
「意味解んないんだけどぉ!?やっぱりそれだとおれが恥じかいて終わりじゃん!!絶対却下!!」
「覚悟してください、私にはもうこの良案……」
「希來…!」
あ…!誰か来た
自分の家の門の前で言い争われてたら不審に思うのは普通か
にしても綺麗な人ね
「ヤバっ、姉さんだ」
「お姉さん?綺麗ね」
そのお姉さんはこっちに小走りしながら
近づいてきて
「何時だと思ってるの!?みんな心配してたのよ!」
希來に一喝した
「今?8時ちょい前くらいかな
心配してた?フッ笑わせないでよ」
希來?
「…!何を言ってるの?さぁ、部屋に入りなさい
……あなたは?」
ん?あぁ、一応カナでいっとくか
「えっと、私希來の友達の穂波カナっていいます」
「友達?…まぁあいわ、気を付けて帰りなさいね」
買えるの?帰っていいの?……チラ
おぉ、希來からのどうにかしろという視線!
へいへい、わかってるわよ
世話の焼ける…でも困ったわね、今私カナだし
あ、そうだ!一か八かであの手を使おう
確か希來のお父さんの会社は…
「姉さん、おれ帰って来たんじゃないけど」
「はあ?何バカなこと言ってるの?父さん帰って
来てるわよ」
「だから、何?おれは…」
「紹介したい人がいるのよね?希來?」
希來の言葉を遮って話を変えた
乗ってよ、私に合わせてよね
「え?あ、そう、父さんに会わせたい人がいるんだ
まだ来てないけどその内来るしカナの知り合いだから」
ナイス
「何?」
「いいからカナも部屋に入れて」
アハハハハハ無理矢理だね、随分と
「…そう、まあいいわ、どうぞ」
「お邪魔します」
.゜.゜.゜.゜.゜.゜..
部屋に入れてもらうとそこには威厳のある真面目そうなおでこの眩しい中年期男性とメガネをかけた赤髪をポニーテールにした大人美人な女性がソファーに座っていた
そして聞こえないくらいの声で希來が聞いてきた
「どーすんの?なんかあるんでしょ?」
ありますとも
「まー少し待ってなって 適当に雑談でもしてなよ」
場所が場所だからね
ここからだと3、40分かかるしね
「無理、嫌だ」
いやそれは困る
…仕方ないわね、私が何か話を
「希來、遅いじゃないか!今まで何をしていたんだ学校もサボったらしいな、どういうことなんだ!?」
…!
ビックリした(*゜Q゜*)
いきなり怒鳴ったよ、この人…お父さん?
「別に、てゆーか何?少し遅くなるくらい普通じゃない?もう中学生だよ?部活してくればこのくらいの時間になるの当たり前でょ?」
…部活やれば確かにそうね
部活やれば
そしてこの話し合いはまだまだ続いた
一悶着したのは
空気を読まずに鳴ったチャイムだった
ピンポーン――――――――
やっと来たわね
そしてやっとこの空気から解放されるわ
「誰かしら?ハーイ」
そう言って希來のお母さんは玄関へ向かった