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封印した記憶を探して  作者: さくら優


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9/12

9.隠し事

かるかんとタロを殺した時の動画は、同じアカウントから投稿されていた。お約束というか、やはり海外のサーバーを経由していたそうで、投稿者はすぐには見つけられないらしいが、おそらく時間の問題だろうということだ。


タロを殺して刑務所に入っていた男も疑われたが、まだ証拠がないらしく、並行して捜査が進められている。


田渕のところにも、今別の刑事が話を聞きに行っているらしい。


警察が巽たちに話を聞きに来たのは、20年前の誘拐事件との関連を調べるためだった。

少なくとも、かるかんが殺された事件は、20年前の事件と関わりがあることが、今回の動画の件で明らかになった。


「お二人は旅館の犬が殺された日の朝、そこにいらしたとか」

「はい」

「何か、変わったことはありませんでしたか?」

「変わったこと?」


巽は弓弦と顔を見合わせる。20年前の犯人に似た男が従業員の中にいたことは砂川に話してある。彼は警察に話をすると言っていた。従業員のことは警察も調べただろうし、似ていただけで赤の他人だったことはわかっているだろう。


念のため大木にそのことを話すと、彼は静かに頷いた。


「はい。従業員については調べてあります。身元はしっかりしています」

「じゃあ、やっぱり俺の勘違いなんですね」


そのこと以外に思い当たることはない。一瞬、巽が子どもの頃に住んでいた家を見ていた時に、妙な視線を感じたことを言おうかとも思ったが、これこそ本当にただの勘違いだろうから黙っていた。


大木は、また何か思い出したら連絡をくれと、名刺を渡して帰っていった。



   ✦✦✦


「たつ兄、今日、うち泊まっていかない?」


車で家の方に向かいながら、ふいに弓弦が呟いた。


「え? なんで?」

「⋯なんとなく。嫌ならいいんだけど、なんか⋯、疲れたのかな」


弓弦は煮え切らない返事をしながら苦笑する。


言われて初めて気が付いた。弓弦は最近、何度も実家のある田舎と自宅を往復している。昨日と今日は2日連続だ。疲れていて当然だった。

当たり前のように家まで送ってもらう気でいたが、そこから弓弦の自宅までもまた距離がある。


適当なところで降ろしてもらっても良かったが、それよりも夕飯でも作ってやって労ってやりたかった。


「いいよ。弓弦んち泊まる。ごめんな、2日連続で疲れたよな」

「ううん。今日は俺が自分から行くって言ったんだし。俺だって香菜ちゃんのこと心配だったからね」

「夕飯なんか作ってやるよ。何がいい?」

「たつ兄が作ってくれるの? やったぁ!」


無邪気に笑う弓弦に、巽も自然と笑みが溢れた。


「そういえば、香菜ちゃんの迎えに来てた人って、彼氏さんかな?」

「だろうな。もうすぐ結婚するって言ってたし」

「そうなんだ」


この話題はあまり良くないかと思ったが、弓弦は気にした様子はない。


「優しそうな人だったよね」

「そう、だな⋯」


それきり黙ってしまう巽に、弓弦がくすっと笑う。


「たつ兄、俺がまだ香菜ちゃんのこと好きだと思ってる?」

「え? いや、その⋯。付き合ってたの、だいぶ前の話だし」

「そうだね〜。その後誰とも付き合わないから、未練があるのかな〜みたいな?」

「う⋯、違うのか?」

「そんなんじゃないよ」


絶妙なタイミングで家に着いてしまったので、話はそこで終わりになった。


巽はとりあえず、約束したので夕食を作ることにする。


あり物で適当に作ってテーブルに並べると、弓弦は目を輝かせた。


「すごい! 美味しそう」

「大したものじゃないけどな」

「全然そんなことないよ。いただきまーす」


パチンと両手を合わせる弓弦に倣って、巽も手を合わせる。しばらく黙々と食事を進めていたが、やがて弓弦は、先ほどなんとなく消化不良だった香菜とのことを、ぽつりと零した。


「俺は、たつ兄みたいに上手く出来なかったから、振られちゃったんだよね」

「え?」


上手く? 何を?


「⋯⋯下ネタ?」

「なわけないでしょ」


当然だが違った。


「たつ兄、自分で上手いと思ってるんだ」

「そういう意味じゃない」

「あはは」


軽く睨むと、弓弦は楽しそうに笑う。


「で、何が上手く出来なかったって?」

「んー?」


弓弦は、悩んでいるのか、そもそも言う気がないのか、誤魔化すように視線を逸らし食事を続ける。辛抱強く顔を見つめ続けると、観念したかのように苦笑した。


「⋯隠し通すのが」

「え?」


隠し通す?


「いや、違うな。ごめん、忘れて」

「なんなんだよ」

「だから、結局そこまで本気じゃなかったってこと」


ごちそうさま、と言って弓弦は席を立つ。これ以上は話す気がなさそうだ。結局ますますよくわからなくなったような気がして、巽は溜息を吐いた。


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