006 研修2日目 不合格者の声、朝食、個別面接
「オルアさんと一緒なら頑張れそう。」と、アリムは言った。
「自分の分の家事は自分でしてくださいね。」と、オルアは返した。「わたしも自分の分は自分でします。料理は、どちらが作るにしても2人分作りましょう。お互いが好きな食事を紹介できますから。」
「水回りは文句が出ないように別々にしますか?」と、アリムは尋ねた。
「お互いの部屋に交互に泊まることで好みを確かめ合いましょう。」と、オルアは提案した。
◇
司会は、面接の手配をしていた。
42名の一次合格者を出したということは、差し引き157名の不合格者も出したということだ。
その者たちが、eksというSNSに悪評を書き込んでいる。
その悪評と応募者の情報をリンクされたものを確認していた。
「まあ、予想通りか。」と、司会は呟いた。
はっきり言って、司会というよりは総司令というか総責任者のような業務をしている。
容姿が売りの若い女性を演じた方が、相手を油断させやすいから司会として、応募者たちの前に出ている。
ちやほやしてきた連中の本性、利益をもたらさない相手や格下の相手に対する本音を知って、うんざりしている。
「二の句が継げない。あきれてものが言えないとは正にこの状況を言うのだろうな。」と、司会は言った。
eksというSNSへの書き込みには匿名性が有り、身元特定するためには法的な手続きを済ませて3ヵ月以上の日数が掛かる。そう思い込んでいる連中が多いようだ。
カセイダード王国の技術力をもってすれば、簡単に確認できる。ただ、できることを公表していないだけだ。
つまり、すべてバレている。
「逆バリアフリーに気付いたひとは、アリムさんだけでしたね。」と、医師は言った。
「ほかにも気付いたものがいたはずだが、声をあげなかったようだな。」と、司会は返した。
「そうでしょうか?なにか根拠でも?」と、医師は尋ねた。
「この束にある応募者は、色覚に対する配慮が無かったと文句を書き込んでいる。」と、司会は説明した。「そして、もう1つの束にある応募者は、聴覚情報処理を苦手とするものの書き込みだ。さらに、この束が、『一気にこれだけの量を覚えられるか、ふざけんな!』という書き込みだ。」
「おやまあ、アリムさんのあとで、『わたしもそう思います。』と言えば良かったのに。」と、医師は言った。
「自分の弱みや欠点を知られたくなかったのだろうな。気位を捨てるべきだったな。」と、司会は評した。
「面接は、アリムさんを含む43名に行うのですか?」と、医師は確認した。
「アリムさんを除く42名に行う。」と、司会は答えた。「アリムさんはオルアが最も厳しい面接をするから不要だ。」
「24時間一緒という観察下に置かれるから、ボロが出るでしょうね。」と、医師は納得した。
「オルアの参照パラメーターはクラスターの見本のようなものだからな。」と、司会は言った。「でも、昨日の会話を聞く限り、合格しているな。わざと怒らせて、おちょくって、人柄を試したようだ。」
「アリムさんを気に入ったかもしれませんね。」と、医師は言った。
「目に涙を浮かべて反応を見ていたからな。」と、司会は続けた。「他人のこころに寄り添えるかどうかまで、調べたかったようだ。」
「そして、現時点で合格している。」と、医師は結論づけた。
「仲良く朝食を食べていたから、そうだろうな。」と、司会は同意した。
「はあー、うらやましい。」と、司会と医師は声を揃えた。
◇
「朝食は、パン派ですか?ごはん派ですか?」と、オルアはアリムに尋ねた。
「ごはん派です。」と、アリムは答えた。
「では、ごはんを食べに行きましょう。」と、オルアは促した。
ふたりが着いた食堂は、バイキング形式だった。
「すべての料理が小さい皿に分けてあるから、良いですね。」と、アリムは感想を述べた。
「そうですか?皿洗いが大変そうですが。」と、オルアは言った。
「それでも、食べ物をぐちゃぐちゃにされるよりはマシです。」と、アリムは返した。「一番わかりやすいのが小さいケーキですが、トングではさんで取るときに周囲のケーキの形が崩されて、誰も食べなくなってしまいます。他のメニューでも、大きなお皿の中がかき回されて、不味そうに見えて残ります。」
「経営者視点ですか?」と、オルアは尋ねた。
「いいえ、わたしは多分、飢えて死ぬ気がしているので、食べ物で遊ぶ人が大嫌いです。」と、アリムは断言した。
「たとえば?」と、オルアは問い返した。
「いろいろなドリンクを混ぜて、不味い味にして、飲めなくなって捨てるとか。一度に多くの食べ物を取って、食べられずに残すとか。払うお金は同じだから、なにも問題ないとか。」と、アリムは例を挙げた。
「そういう考え方が嫌いです。」
「みんなが、あなたのように考えるなら、良い世界になりますね。」と、オルアは言った。「でも、これからは食べることを心配しなくてよいのでは?」
「明日の保証なんて無いです。」と、アリムは答えた。「食べることが出来るときに食べないと不安です。それでも、必要以上に食べて太ることも間違っています。」
「わたしに気を許してくれていることは嬉しく思います。」と、オルアは言った。「でも、他の人に言うと正義感ぶって、嫌な奴となるかもしれません。こころの中を見せるひとは十分に選んでくださいね。」
「そうですね。」と、アリムは頷いた。
席についてからは、「これ美味しいね。」とか感想を言いあった。
お互いの顔を見ながら色々な料理を楽しんだ。
「ふたりで食べるといつもより美味しく感じるね。」と、オルアは言った。
「うん。」と、アリムは相槌を打った。
『久しぶりに笑顔になれた気がする。』と、アリムは幸せを感じた。
ふたりなら幸せ
そんな歌が有りましたね。
◇
一次試験合格者42名の部屋を訪問して、個別に面接が実施された。
面接を実施したものは、司会でも医師でもない、応募者にとって初めて会う2人組の美しい女性だった。
お読みいただき、ありがとうございます。 作者のサアロフィアです。
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