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王国爆死録 ヴァルハイト王国 暗殺連鎖〜爆破テロ  作者: 南蛇井


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66/75

:制御不能

――赤光が、世界の奥底から噴き上がった。


魔導核の中心。

幾何学的な魔導陣が、一瞬だけ収縮し、

次の刹那には心臓の鼓動のように脈動した。


ドン――と、空気が跳ねる。

床を這う導管が波打ち、魔力の流れが液体のように生き物じみた動きを見せる。

壁面を走るルーンが自己修復を始め、次いで――自己増殖に転じた。

もはやそれは制御ではない。

理論の形をした生命活動だった。


赤光が、まるで呼吸をするように明滅を繰り返す。

息を吸うたび、天井の魔力管が膨張し、

吐くたびに、床の陣が光の血管を震わせる。


カメラが引く。

城の全景が映る。

その構造全体が――ひとつの巨大な生体器官として鼓動していた。


アランは、息を呑んだ。

「……これは、装置じゃない……生きている……」


彼の呟きを呑み込むように、世界が再び鼓動する。


ナレーション:

「臨界点を超えた“理論”は、もはや理論ではない。

 それは呼吸し、鼓動する――存在の意志として。」


次の瞬間、赤光が膨張し、

音もなく――世界そのものが、息をした。



天井が、呻いた。

石柱の根元が軋み、圧縮された魔力のうねりに耐えきれず――

パキンッ、と亀裂が走る。


瞬間、接合部のルーン管が破裂。

内側から吹き出した蒸気が霧となり、

赤い霧が視界を覆い尽くす。


光は霞に溶け、影だけが浮かび上がった。

遠くで制御盤のガラスが砕け、

飛び散った火花が軌跡を描き、

アランとルークの輪郭を影絵のように黒く切り取る。


「ゴウン……ゴウン……」

低周波が空気を撓ませる。

それは金属の共鳴ではなかった――鼓動だった。

機械の駆動音に混じり、微かに“呼吸音”のようなノイズが混じる。

世界が、生きている。

この魔導核が、ただの装置ではなく、

何かの生命の心臓であることを告げていた。


アランは赤霧の中、目を見開く。

胸の奥にまで響く重低音が、皮膚を内側から震わせた。


アラン(内心):

「……これは、装置じゃない。

 生きている……! まるで、世界が――息をしているみたいだ……」


天井から崩落した石片が床に叩きつけられ、

赤い霧の中で火花が花のように咲く。

音と光が、もはや災厄の調べを奏で始めていた。


操作盤が、悲鳴を上げていた。

赤い文字が乱舞するように点滅し、

次々と警告音が積み重なる。


STABILITY:CRITICAL

CORE TEMPERATURE:MAXIMUM

OVERRIDE DENIED

SELF-ACTIVATION:CONFIRMED


パネルの隙間から火花が迸り、

アランの頬をかすめた光が、まるで焼けつくように熱かった。


スクリーンの片隅で、

英数字の羅列が無限に流れ続けている――

「USER AUTHORITY:REVOKED」

「CONTROL ACCESS:TERMINATED」

つまり、もう誰にも止められない。

人間の手は、この機構から切り離された。


アランの息が荒くなる。

「くそっ……反応を止めろ……! 応答しろッ!」

彼の叫びは、機械の鼓動の中に吸い込まれていく。


カメラが――いや、意識が――

魔導核の中心へと引き寄せられていく。

そこには、鼓動している何かがあった。

金属でも石でもない。

――まるで、人の心臓のような形。


その脈動が、光を吐く。

赤から白へ、一瞬の閃光。

その瞬間、光の中に“影”が交錯する。


幼い頃の兄弟――

作業台に並んで模型を作っていた、あの姿。

笑うルーク。

頷くアラン。


それは記憶ではなかった。

世界そのものが、兄弟の記憶を素材として再構築している。

彼らの過去が、装置の内部で“構成要素”に変わっていく。


心拍音が高鳴る。

ドクン、ドクン、と世界全体が同じテンポで震える。

重低音の波に混ざって、高周波のノイズが鋭く刺さる――

呼吸と鼓動が重なり合い、一つの生命音になる。


その音が、全ての音を飲み込む。

崩壊音も、叫びも、もう聞こえない。


そして――

ナレーションが、静かに、決定的に響く。


「世界の意志が、ついに閾値を超えた。

 制御の名を捨て、存在そのものが燃え上がる。」


その言葉が終わると同時に、

全ての音が――消えた。


無音。

ただ一つ。

魔導核の中心で、

赤い鼓動だけが、静かに、確かに、点滅を続けていた。





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