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今の俺ができること

「ふぁ〜。よく寝た。」

小鳥のさえずりが外から聞こえてくる。今日もいい天気だ。

「あっおはようございます!」

隣には寝巻きから着替え終わったメグが座っていた。朝一番から元気な声の挨拶を聞けて、ヒカルの眠気はどこかへ飛んでいってしまう。

「お顔失礼しますね。」

メグが突然濡れたタオルで顔を拭いていく。今まではこんなことしていなかったはずだ。

「えっどうしたんだ?」

「ちょっとお顔が汚れていましたので。」

本当は涙の跡が残ってしまっているのを気付かれたらショックを受けてしまうんじゃないかと心配だったからだ。

「…もしかして涙の跡を消そうとしてるのか?」

「えっ知ってたんですか?てっきり気づいていないものかと。」

ヒカルが言い当ててきて驚く。

「いや何となくそうじゃないかって。当たってたんだな。」

「ヒカル様…昨日の夜悪い夢を見てたみたいで…。覚えてたりしませんか?」

「なんか夢を見たのは覚えてるけど内容は忘れちゃったな。」

どこか気まずそうな顔をするメグ。ヒカルが頭を撫でながら優しく声を掛けてあげる。

「これからは隠さなくてもいいよ。別に気にしてないし。その代わり…。」

少し頬を赤くして言い淀む。

「その代わり、一緒に寝ないか?そうすれば寝てる時も安心できると思うから…。」

ヒカルからのまさかの提案に即座に頷く。

「もちろんそうさせていただきます!」

嬉しそうに笑顔で答える様子にずきりと心が痛む。

(ここに来てからメグに助けられてばかりだ。本当にこれでいいのだろうか?)

ヒカル自身、完全にメグに依存してしまっていることを理解していた。メグから離れると周りのものが急に恐ろしく見え出す。離れていく姿を見るだけでも不安になってしまっていた。

「私は朝ごはんの支度をしてきますので。お着替えはそこに置いてありますよ。」

「あっ待って!」

歩いて行こうとするメグを呼び止める。

「俺も手伝うよ!ちょっと待ってて!」

急いではだけてしまった寝巻きを脱ごうとする。すると服についていたボタンに髪の毛が絡まってしまった。取り外そうとしていると、メグが自身のブラシとコームを持ってきた。

「ちょっと後ろを向いててください。せっかく綺麗な髪なんですから傷めないようにしないと。」

結局、髪を解かしている間にいつも朝ごはんを食べ始める時間になってしまった。

(またメグに迷惑をかけてしまった…。)

明らかに顔が曇りだしたヒカルはベッドから降りて炊事場に向かおうとする。不意にある疑問が頭に浮かぶ。

(あれ?杖で片手が塞がってるのにどうやって手伝えばいいんだ?)

メグは気づいていたようで炊事場に何かを持っていく。

「ヒカル様はこれを使って食材を切ってください。」

持っていったのは足の長い椅子だ。確かにこれに座りながら切れば両手が使える。

早速座ると置かれている包丁を使い、慣れた手つきでレタスに刃を入れる。

ちくっと指先に痛みが走る。瞬時に何が起こったのかを察する。

(手が小さくなったから指と包丁の間の距離を見間違えたのか!)

メグに交代してもらい、手当をするために家に入る。炊事場に戻った時にはすでに料理を運ぼうとしているところだった。

ヒカルがメグに教えたベーコンバーガー(ハンバーグの代わりにベーコンを挟んだ)と野菜スープがダイニングテーブルに並ぶ。いつもならどれも見るだけでお腹が音を鳴らしてしまうぐらい美味しそうに見えるのだが、どうにも食欲が湧かない。

「ヒカル様?」

バーガーを手に持ったまま呆けているとメグが心配そうに見つめてきた。

「あっ…えっと…。」

「…私に話して見ませんか?ヒカル様が抱えている心配事を。」

俯いたまま顔を上げられない。話したところでメグからは気にしていないから大丈夫としか返ってこないだろうと思っていたからだ。

黙っていてもしょうがないので自身の気持ちを正直に伝える。すると予想に反した答えが返ってきた。

「じゃあヒカル様も誰かを助けるために何か始めて見るのははどうでしょう?」

「えっ?今の俺がか?」

何をするにも助けが必要な今のヒカルができること。そんなのあるのか?

ふと頭の中にあの親子の顔が思い浮かんだ。事件の日以降外に出ることができなかったため、約束の日はとうにすぎている。ヒカルは親子との約束を破ってしまったことをずっと悔やんでいた。

(何かできることは…。あっ!あれなら!)

頭の中で一つの答えを導き出す。

「あっ!何か思いついた顔をしましたね。よければ私も手伝いましょうか?」

「ありがとう。でもこれは俺だけで頑張らないといけないことなんだ。」

ヒカルはバーガーを口いっぱいに入れるとまだ整理されていない荷物を漁り出す。

「あっふぁ!」

呂律の回らない口で叫ぶと色とりどりの布を引きずり出す。昔、メグのために服を作ったときの残りだ。

そのまま床に広げた布を睨みつける。

「この色と色がたくさん残ってるなら…。いや…。」

メグはぶつぶつと呟くヒカルを椅子に座って眺める。ヒカルの目からは決意を込めた光が漏れ出ていた。

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