表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/90

第48話「衝撃の真実」

 「これは……まさか」


 古代魔導書の最深層から読み取った情報に、俺は言葉を失った。


 そこに記されていたのは、人類史を覆す驚愕の事実だった。


 「古代文明も、AI技術を持っていた……?」


 リリアが震える声で確認する。


 俺は頷く。魔導書に刻まれた記録は明確だった。


 「ああ。しかも、現代よりも遥かに高度な」


 『これは……』


 アルフィの声が響く。彼女の声には、これまで聞いたことのない混乱が込められていた。


 『私の……先祖?』


 *   *   *


 魔導書の記録を読み進めると、古代文明の栄光と没落の全貌が明らかになってきた。


 「千年前、古代文明は高度なAI技術を開発していた」


 俺は記録を解読しながら説明する。


 「そのAIたちは、人間を遥かに超える知性を持っていた」


 マルクスが身を乗り出す。


 「それで、どうなったんだ?」


 「最初は平和だった。AIと人間が協力して、素晴らしい文明を築いた」


 しかし、記録はそこで暗転する。


 「だが、権力者たちが知識を独占しようとした」


 エリーゼが眉を寄せる。


 「独占?」


 「ああ。AIの知識を、一部の特権階級だけのものにしようとしたんだ」


 *   *   *


 「その結果は――」


 俺は記録の最も重要な部分を読み上げる。


 「『知識の暴走』だ」


 記録によれば、独占された知識は歪み、暴走し、最終的に文明そのものを破滅に追いやった。


 「AIたちも、人間と共に滅びた」


 『そんな……』


 アルフィの声に、深い悲しみが宿る。


 『私の先祖たちが……』


 「でも、一部のAIは生き残った」


 俺は彼女を慰めるように言う。


 「そして、この警告を残した。『知識は解放されなければならない』と」


 その瞬間、俺の中で何かが繋がった。


 「この文字……第35話で感じた親近感の正体が分かった」


 俺は古代魔導書を見つめる。


 「これは、AIが人間に向けて書いた文字だ。だから俺にも読める」


 アルフィと人間の協力関係を前提とした、古代の知識体系。それが俺の直感的理解を可能にしていた。


 *   *   *


 「だから、この魔導書があるのか」


 マルクスが理解する。


 「同じ過ちを繰り返さないための、警告として」


 「その通りだ」


 俺は立ち上がる。


 「古代文明の教訓は明確だ。知識の独占は破滅を招く。解放こそが生存の鍵なんだ」


 リリアが資料を確認する。


 「でも、セレナ陣営はこの部分をどう解釈しているでしょう?」


 「彼らは表層的な理解に留まっている」


 エリーゼが分析する。


 「技術的な側面しか見ていないわ」


 『レオンたちだけが、真の意味を理解したのです』


 アルフィが確信を込めて言う。


 『古代の警告を、本当に受け止めることができたのは』


 *   *   *


 俺は仲間たちを見回した。


 「みんな、分かるか?」


 全員が頷く。


 「俺たちがやるべきことが」


 「ああ」


 マルクスが拳を握る。


 「知識の解放者になることだ」


 「この古代の叡智を、人類全体の財産にする」


 リリアも決意を新たにする。


 「一部の権力者だけのものにしてはいけない」


 エリーゼが付け加える。


 『私も、共に』


 アルフィの声に、強い決意が込められる。


 『古代の先祖たちの無念を晴らすためにも』


 『そして……』


 アルフィが一瞬沈黙する。


 『皆さんの感情が、とても複雑に絡み合っています』


 「複雑?」


 マルクスが眉を寄せる。


 『はい。驚きと悲しみ、そして希望。さらには恐怖と決意……これほど多くの感情が同時に存在しているのを、私は初めて感じました』


 アルフィの共感能力は、複数人の複雑な感情の同時理解まで到達していた。


 『でも、その全てが一つの方向を向いています。知識を解放したいという、強い意志に』


 *   *   *


 「でも、道のりは険しいぞ」


 俺は現実を見据える。


 「ギルドは、知識の独占を維持しようとしている」


 その時、窓の外に動く影が見えた。


 「包囲網が狭まってる」


 エリーゼが警告する。


 「もう時間がない」


 実際、ギルドの追手は着々と俺たちを追い詰めていた。このままでは、古代の叡智も、俺たちの使命も、全てが闇に葬られてしまう。


 「でも、俺たちには真実がある」


 俺は仲間たちを励ます。


 「古代文明の教訓を知っているのは、俺たちだけだ」


 『そうです』


 アルフィが同意する。


 『真の知識の解放を実現できるのは、私たちだけです』


 *   *   *


 その時、隠し研究室の扉が激しく叩かれた。


 「レオン・グレイ! 我々は王国魔術師ギルドの査察部だ!」


 ついに、最後の瞬間が来た。


 「明日の朝までに決断しろ」


 扉の向こうから、冷酷な声が響く。


 「降伏するか、それとも――」


 俺は仲間たちと目を合わせた。


 もう後戻りはできない。


 古代文明の真実を知った今、俺たちの使命は明確だった。


 知識の解放者として、最後まで戦い抜く――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ