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4/4

4 覚醒



 祠の奥にはゲームの原作通り大天使ミヒャエルの像があった。そしてその像の前に一振りの剣が奉納するかのように置かれていた。


 私は恐る恐るその剣を手にした。


 何も起きなかった。


(やっぱりゲームとは違うの?)


 私は失望した。


 外で待ち受けている敵の大群。


 そして、この後の圧倒的な敵軍の侵攻を思うと絶望的な気持ちになった。


 すると、後ろからなにか不思議な気配がした。


 振り向くと大天使ミヒャエル像が輝き始めていた。


「なに? なにが始まるの?」


 私は剣を抱くようにして後退りした。


 フラッシュが焚かれたような閃光が走った。


 思わず目を閉じた。


「ジャンヌ」


 私を呼ぶ声がした。


 目を開くと、5歳の時に見た天使が前に立っていた。


「こうしてあなたの前に姿を現すのは10年ぶりですね」


「は、はい……」


「私が来た理由はもう分かっていますね」


「あなたは……」


「そうミヒャエルです」


 ミヒャエルは守護の天使だった。


「あなた方を守るために降りてきました。ジャンヌ、あなたは私の使いとして、国を護りなさい。あなたには私の加護を分け与えましょう」


 突然、体が軽くなり、浮いているような感覚になった。


「えええええ」


 自分の体が光っていた。


「これであなたは私の加護を得ました。さあ、行きなさい」


 私は今、全属性の魔法を無限の魔力で使えるようになったのだと自覚した。また剣術のスキルも得て、転生前の武術の腕とは比較にならない力も得たことを実感した。


 祭壇の横にあった剣帯を腰に巻くとミヒャエルの剣を吊るした。


 私は出口に向かって歩いた。


 祠の出入り口に私が着くと、石の扉が自動的に開いた。


 外に出た。


 頬に冷たい小雪がかかる。


「おい。聖女だ」


「出てきたぞ」


「できれば生け捕りにしろ」


「貴重な実験体だ」


 敵兵はさっきよりもさらに増えていた。


 辺りは静かだった。


 私は展開していた北部大隊が敗北し、撤退したことを悟った。


 敵軍の中で一人で孤立している状態だ。


 そのせいか、敵は余裕があった。剣を多少使えても、しょせんは聖女。たった一人ではなにもできないとたかをくくっているのが明らかだ。


 だから、私を生け捕りにして、人体実験の被検体にでもする気だ。


 私は剣を抜いた。


 正面には100人近い敵兵がいた。


 みんな私を見て笑っている。


 何度も斬られて服はボロボロで血まみれだ。スカートは引きちぎったので太腿は露わになっている。

 

 血まみれで半裸のジョブは聖女の少女になにができるという顔をして私を見ていた。


「おい」


 隊長らしき男が出てきた。


「投降しろ。そうすれば、命までは奪わない。負傷兵を癒やし、自らの傷も治したんだろ。魔力は底をついているはずだ。次に一太刀浴びたら、もう自分では回復できないぞ」


「バカね」


 こいつらは、私が今大天使ミヒャエルの加護を受けたことを知らない。ただの聖女ならそうだろう。いや、ただの聖女ならとっくにくたばっている。だが、私はジャンヌだ。この物語の主人公にして、今、最強のチートな力を与えられたのだ。


 試しに剣に火炎魔法をかけてみた。


 思った通り発動し、剣は炎を帯びた。


「魔剣か。祠で魔剣を得たのだな」


 まだ勘違いをしているようだ。


「だが、いくら魔剣でも一人でこの人数を相手にしては勝ち目はないぞ」


 魔剣ではない。剣で魔法を発動させているのだ。


 私は笑った。


 隊長は怪訝な顔をしたが、私につられて笑った。


 すると私を囲んでいた兵士たちも下卑た笑いをした。


 みんなが笑い声を出した。


 連中はこれから私を凌辱することでも考えているのだろう。


 だが、それはない。


 なぜなら、もうすぐみんな死ぬからだ。


 私は剣を横薙ぎにした。


 すると火炎が巨大な渦となり、兵士たちを襲った。


 一振り、二振り、火炎がドラゴンのブレスのように兵士を舐め回す。


「「「「「ぎゃあああああああああああああああああ」」」」」」


 兵士たちが火だるまになり、断末魔をあげる。


「次はこれね」


 私は風属性の魔法を剣にかけ、剣を振った。


 竜巻が起こり、火炎の勢いをさらに増した上、兵士を吹き飛ばす。


 さらに剣を手に舞う。


 風神の刃が無数飛び出て、兵士の首を飛ばす。


「土魔法も試さないとね」


 私は大地に呼びかけた。


 巨大地震が起き、地割れがした。


 兵士たちは立っていることができず、その大半は割れた地面に飲み込まれた。


 そして、割れた地面が元に戻る。


 飲み込まれた兵士は地中で圧死した。


 まだ、無傷で残っている兵士は数名だけだった。


「ば、化け物」


 逃げようとする兵士と、まだ息があった兵士たちにブリザードが吹く。


 瞬く間に、兵士たちは氷結した。


 まるで白い彫像だ。


(ここまではゲームの設定どおりね)


 嫌になるくらいチートな力だ。


 だが、問題はここからだ。


 ゲームではジャンヌは戦場では無敵だが、あまりのその人外な力ゆえ、あらゆる方面から恐れられ、暗殺や陰謀に巻き込まれる。


 どうプレイしても最後はバッドエンディングで、主人公が死ぬのが、原作のゲームだ。死にゲー、クソゲーとだから酷評されたのだ。


(この世界に転生した以上、絶対に死亡フラグを折って、生き延びてやる)


 ジャンヌになった私はそう自分に誓った。


 

序章はこれで完結です。


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