表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/7

3話 同級生と新しい夢

 見知らぬ顔の男性から声をかけられた私は驚く。

「えっと..よしなが…?」

私は気づく、[吉永]という名前は戸籍謄本で見た私の実母の姓だ。


「すみません。どちら様ですか?」

「小学校同じ品田だけど、覚えてない?」

「ごめんなさい..実は..」

 私は14歳より前の記憶を失っていること、当時のことを知るためにここに来たことを話す。


「そうだったんだ..。大変だったんだね..」

 品田さんは小学生当時この村に住んでおり、私と同級生だったそうだ。


「あの..良かったら、昔の話を聞かせてくれませんか?」

「うん、いいよ。そうしたらちょっと、この道の先にうちの畑があってそこに行く途中だったんだけど、作業しながらでも大丈夫?」

「そうだったんですね..すみません。全然大丈夫です。」


 私はバス停通りに戻り、後ろをついて歩く。

「おとなしい子だね。何歳」

「彗花っていうんです。まだ六カ月で」

「そうなんだ、可愛い子だね」

「ありがとうございます。よかったねけいちゃん」

「はは、一応同級生なんだから、敬語じゃなくていいんだよ」

「あっ、そうですね。あっ」

 そんな会話をしながら歩いていると、品田君の畑につく。畑の脇に椅子を用意してくれたので私はそこに座る。

「僕と君は小学校同級生で中学校は違うから、小学校の時の事なら話せるよ。」

 品田君は農作業をしながら話す。


「そうなんだ、私と品田君は仲良かったの?」

「そうだね。地元の子の仲良し組の一人って感じだったかな。

 よくさっきの川に集まってみんなで一緒に遊んだよ」

「それっていつ頃の話?」

「小学校2年生~4年生くらいまでだったかな?」

 私が思い出した記憶と一致していく。やはり私はここで生まれ育ったんだと。

「私の実の母は病気で亡くなったみたいなんだけど何か知ってる?」

「うーん、それは知らないけど、病気だったっていうのは知っているよ。」

「どうして?」

「小学校高学年になると吉永とはあまり遊ばなくなったんだけど。お母さんが入院してるから病院にお見舞いに行ってるって聞いたことがあるよ。」


 実母は本当に病気だったようだ。母が言っていた話が全てだったのかもしれないと今更になって思い始める。

「どうして小学校高学年頃はあまり遊ばなくなったの?」

「他にも仲が良かった男子・女子いたけど、その年頃になると、男子女子でグループが分かれていくんだよね。

 それに吉永は昔はよく笑う元気な子のイメージだったんだけど、高学年頃はちょっと暗くなって、話しかけづらくなった印象があったな。お母さんのことがあったからかもしれないけど。」

「そうだったんだ。」

「僕が知っていることはそんなところかな。中学校は僕は一時的にこの村を離れていたからよく知らないし」

「うん、でも助かりました。ありがとう」


「ところでもうこんな時間だけど、今日帰るの?」

「あっ」

 話をしていたらもう夕方になっていた。今から帰るのは時間的にもこの子(彗花)的にも厳しかった。


「よければ、宿屋を紹介するよ?」

「本当?そうしてくれるとすごくありがたいです。」

 距離的にどこかに泊まることになるかもしれないと準備はしてきていたので、今日は紹介してくれるところに泊まることにした。


「すぐ近くだから案内するよ。そこの宿屋の娘さんも僕らと同じ小学校で当時顔見知りだったよ。2つ上の上級生だったけどね。」

「そうなんだ。お手間かけちゃってごめんね。ありがとう。」


 また私はバス停通りを村まで戻った。そして、小さな宿屋にたどり着く。看板には「河之宿」と書かれている。


挿絵(By みてみん)

 

「こんばんわー」

「はーい」

 品田君が扉を開けると、中から同じくらいの年齢の女性が出てくる。

「あれ、品田どうしたの?あっ」

その人は私を見るなり驚いたような表情を浮かべた。

「玲花ちゃん?玲花ちゃんよね!なつかしいわぁ」

「あっ..こんばんは。」

よそよそしい態度をとってしまった私を見て、品田君が事情を説明してくれる。

 ・・・


「そんなことがあったんだ。私に手伝えることがあったら力になるからとりあえず上がっていきな。」

「ありがとうございます。」


私はこの宿にお邪魔することになった。

「品田君、いろいろとありがとう。」

「いいえ、がんばってね。」

 品田君と別れ、私は部屋に案内される。少し古いが落ち着いた雰囲気の小さめな旅館だ。


「今日はここを使っていいからね。小さいけど温泉もあるから後で案内するね。」

「あの..すみません。」

「ん?」

「お名前って..?」

「ああ、そうだよねごめん、私は伊藤 彩芽、26歳で、玲花ちゃんとは学年違いだけど同じ小学校と中学校だったよ。」

「伊藤さん、今日はありがとうございます。宜しくお願いします。」


「彩芽でいいよぉ、ちょっと今夕食の準備中だから、後で時間ができたらまた来るね。ゆっくりしてて」

「わかりました。ありがとうございます。」


 私は、中学校の時の話を後で彩芽さんに聞いてみようと考えていた。

 とりあえず、歩きっぱなしで疲れていたので、一息ついて、彗花のおむつを取り替える。

「今日はお疲れ様、けいちゃん」

 私は彗花を抱きかかえながら座っていると急に眠気が襲ってくる。今日は朝早くから動いてたせいだろう。

彗花も眠そうにしている。

「けいちゃんも眠いよねぇ」


 ふと気づくと、私は人ごみにいる。

「ここは…?」

 そこはおそらく病院のロビー、人が行き交う。

すごく大きい病院というほどではないが、地元のクリニックや小さな医院といった規模の病院ではないようだ。

きっとまたわたしは夢の中..

 隣にはいつもの女の子。

「早くお母さんのところ行こう?」

「ここはどこの病院?」

 やはり女の子からの返答はない。


私はその不思議な夢の中の景色をしっかりと目に焼き付けながら、夢から覚めていく..

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ