修行の成果
ラリネットにいるであろうアソパを探しに来た私とティノちゃん。町を歩いて情報を探す中、ジャッジメントライトの戦士であるスタネートと名乗る男に襲われた。スタネートの武器は両手のかぎ爪。それを使って戦うつもりのようだ。他にもジャッジメントライトの戦士を連れてきている。一対一で勝てないから仲間を引き連れたようだけど、雑魚を連れ来ても意味がないのに。
「ティノちゃん、周りの相手を任せてもいい?」
「分かりました。エクスさん、あんなのに負けないでくださいね」
「大丈夫。すぐに終わると思うから」
私がそう言うと、ティノちゃんは魔力を解放してストッパーブレイクを使ったであろうジャッジメントライトの戦士を一掃した。あっという間に倒された仲間を見たスタネートは、私に向かって走って来ていた。
「予想以上ですねぇ。エクス・シルバハートにくっついてくるだけのチビがここまで強くなるとは」
「三年間修業してきたのよ。ティノちゃんも、私も」
「そうなんですか。それじゃあ、三年間無駄なことをしてきたと後悔させてあげましょう!」
なーにを言っているんだかこいつは。私を倒せると思っているようだ。私はため息を吐きつつ、走って来るスタネートを見た。
「おやおや、私の速度を見て、驚いて固まったんですかぁ?」
「固まってないわよ。そんな速度で走れるってことを自慢にするアホがいるから、呆れてるだけ。速さだけで私を倒せると思わないでよ」
私がため息を吐きながらこう言うと、スタネートは怒りの形相を見せた。
「なら、お前はそれ以上に速いということか!」
「まーね」
私はあくびをしてこう答えた。その直後、奴が私に接近して右手のかぎ爪で私を突こうとした。だけどまぁ、何ともわかりやすい動きだ。簡単にかわすことができる。私は奴の左手側に移動し、攻撃を回避した。
「なっ!」
「なーに驚いてんのよ。分かりやすい動きをしたから避けられるんでしょうが」
自慢の攻撃がかわされたことを察した奴は、目を丸くして驚いていた。何とまぁ酷いマヌケ面だこと。
この三年間でエクスはかなり成長した。極限のサバイバル生活がエクスの体力や精神を鍛えさせたようだ。
「グッ! 今のはまぐれだ!」
スタネートはエクスの方を向いて再び攻撃を仕掛けたが、この攻撃もエクスは難なく回避した。
「ガッ! クッ……クソォ!」
なかなか攻撃が当たらないことでスタネートは苛立ったのか、エクスに向かってがむしゃらにかぎ爪を振り回した。素早い動きだが、簡単に攻撃を見切ることができる。後ろにいるティノが、杖をスタネートに向けている。攻撃を仕掛けるつもりだな。だが、エクスは攻撃をかわす中、ティノにウインクをした。大丈夫と言う合図のようだ。それに気付いたティノは杖を下ろし、様子を見た。
「グッ! いい加減このかぎ爪で切り裂かれろよ!」
スタネートは叫びながら両手のかぎ爪を振り下ろした。エクスは後ろに下がって攻撃をかわし、剣で突きを放った。
「ばーん」
「うわぁっ!」
目の前に剣先が現れたことで、奴は悲鳴を上げながら驚いた。そして、後ろに転倒して体を震わせていた。エクスは笑いながらスタネートを見下ろした。
「バーカねぇ。あんたみたいな奴を殺しても、得も何もないわ」
「こ……この女! 私を見下しているのか!」
「犯罪者共は全員格下。見下される存在なのよ」
「ジャッジメントライトは違うぞ!」
「同じよ。あいつらも犯罪者」
エクスは挑発をするかのようにこう言った。その言葉を聞いたスタネートは、魔力を解放した。
「私を怒らせたことを後悔しろよ? すぐにお前を斬り刻んで殺してやる!」
「それがあんたの本気ってわけね。ふーむ……ま、本気を出さなくても勝てるわね」
エクスは呆れるようにため息を吐きながらこう言った。その言葉を聞き、怒りを爆発させたスタネートは叫び声を上げながらエクスに襲い掛かった。
「エクス・シルバハート! お前は殺さないといけない存在だァァァァァ!」
「あんたが私を殺すことはできないわ」
エクスはこう言うと、素早く剣を振るった。その直後に金属が音を立てながら折れる音が響いた。攻撃を終えたスタネートは、自身が持つかぎ爪の異変に気付いたようだ。
「な……あ……ああ……私のかぎ爪が……」
奴が持っていたかぎ爪は三分の二以下に斬り落とされていた。それもそのはず。エクスが素早く剣を振るった時に、奴のかぎ爪は斬って折られていたからだ。攻撃後にこのことに気付くとは、奴もまだまだ弱いな。
「クソッ! だが、魔力があれば似たような武器を作ることができる!」
と言って奴は折れたかぎ爪に魔力を発し、大きな爪を作った。
「これなら攻撃をかわすことができないだろう!」
「あほらし。さっきのかぎ爪がちょーっとだけ伸びただけじゃない。その程度で私を倒せると思わないでよ」
「倒せるさ!」
スタネートは叫びながら、右腕を大きく振り上げてエクスに襲い掛かった。エクスは呆れたようにため息を吐き、剣を構えた。
「じゃあ教えてあげるわよ。格下が敵を倒す以外に考えを持たずに、格上に襲い掛かったことが、後で後悔するって!」
そう言って、エクスは剣を振るった。エクスが振るった剣は、スタネートの右腕を斬り落とした。
「なっ! ギャアアアアア!」
攻撃を受けたスタネートは、宙に浮いた。エクスはその隙に奴の近くに飛び上がり、剣を再び構えた。
「後悔した? そして、自分の実力のなさを痛感した?」
「く……クソ女が……」
スタネートは、苦しそうな表情でエクスを睨んだ。その睨みに対し、エクスはにやりと笑い、何も言わずにスタネートの左腕を斬り落とした。
「ガアアアアア!」
「うるさいわねー。いい加減地面に激突しなさい」
エクスは空中で向きを変え、スタネートに向かって蹴りを放った。蹴り飛ばされたスタネートは、空き家の壁に激突した。砂やほこりが舞ってあいつがどうなったか分からないが、しばらくして上半身が地面にめり込んだスタネートの姿が見えた。完全に気を失っているようだ。
「ふぅ。大したことなかったわねー」
「そうでしたね。操られていたと思われる人もそこまで強くはありませんでしたし」
エクスとティノは合流し、倒した敵を見ながらそんな話をしていた。この二人、本当に強くなったな。
しばらくして、騒ぎを聞きつけたギルドの戦士がやって来た。スタネートたちはギルドの戦士によって運ばれた。全員気を失っているため、楽に担架で運ぶことができた。
「大丈夫ですか、エクスさん? どうやら、ジャッジメントライトの戦士に襲われたようですね」
「大したことなかったわ。本気を出して戦ってなかったし」
私は心配するギルドの戦士の問いにこう答えた。そんな中、担架でスタネートを運ぶギルドの戦士が驚きの声を上げた。
「こいつはアソパの部下と言われているスタネートだ。かなり早くて強いと言われているが……」
「そうだったのね。意外だわ、アソパの奴がこんな雑魚を部下にするなんて」
「エクスさんが強くなりすぎたのでは?」
ティノちゃんが私を見ながらこう言った。運ばれるスタネートたちを見送っていると、ギルドの戦士が私とティノちゃんにこう言った。
「奴らのことで話が聞きたいので、一度ギルドへ戻ってもらえませんか?」
「いいわよ。あいつら、何かしら情報を知っていると思うし」
私はそう答え、ティノちゃんと共にギルドへ戻った。
歩く中、私はさっきのギルドの戦士の言葉を思い出していた。スタネートはアソパの部下であると。もし、こいつがアソパの部下で何かを知っているとしたら、何が何でも聞き出さないといけない。アソパの情報が欲しいからここに来たんだ。どんなことをやっても、絶対にアソパの情報を聞き出してやる! そう思いながら、私はギルドに向かって歩いた。
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