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謎の戦士の正体


 今回の戦いは肉体的よりも、精神的に疲れを感じた。何度も斬っても相手は立ち上がり、腕や足を切っても立ち上がる。


「エクスさん。治療が終わりました」


「ありがとう……ティノちゃん」


 精神的に疲れている私の様子を見てか、ティノちゃんが心配して私に近付いて抱きしめた。


「かなり疲れているようですね。魔力の学校で、疲れた精神を癒す方法を学んだことが役に立つ時が来ました」


「ハグをしながら魔力を使って精神を癒し、ダメージも回復するのね。すごい便利ね」


「えへへ。そんなに褒めても何も出ませんよ~」


 ティノちゃんは少し照れながら笑った。とりあえず、ティノちゃんのおかげで大分楽になった。その後、私は倒れている謎の戦士を見てため息を吐いた。身元が分からないため、近くの町のギルドへ連行しておくか。




 私とティノちゃんは近くの町に立ち寄り、倒した戦士を連行した。ギルドの人は私とティノちゃんを見て驚いていたが、倒した戦士を見て状況を把握した。


「身元を調べますので、しばらくお待ちください」


「どの位かかりますか?」


「最低一時間はかかると思ってください。もし、戦いで疲れているようなら、ギルドの休憩場を使ってください」


「ありがとうございます。では、お言葉に甘えます」


 話の後、私とティノちゃんはギルドの休憩場へ向かった。ここのギルドには戦士のための無料自動販売機がある。そこで飲み物を貰おう。私はコーヒーを手にしてソファに座り、ティノちゃんは紅茶を手にして横に座った。


「あの戦士はジャッジメントライトだと思うけど、身元が分かるかしらねぇ?」


「多分分からないと思います。ストッパーブレイクの影響で、まともに話をすることができません」


「でしょうね。私の考えだけど、ストッパーブレイクの影響で痛覚も感覚もなくなって、狂戦士となった。と、思うわ」


「何も感じないですか……怖いですね。どうしてストッパーブレイクなんて使ったんでしょうか?」


「強くなるため。使うことを拒んでも、無理矢理使わせたんでしょうね」


「酷い……どうしてそんなことを……」


「追い込まれたから、どんな方法を使ってもこの状況を脱したいんでしょう。でも、このまま私が潰してやるわ」


 と言って、私はコーヒーを飲み終えた。そんな中、私とティノちゃんの周りにはギルドの人たちが集まっていた。有名人が来ているから、集まったんだろう。


「私たち、いつの間にか有名人になったみたいね」


「そうみたいですね」


 私とティノちゃんが顔を見合わせながらこう言うと、そこから写真攻め、サイン攻めを受けた。これじゃあまるで芸能人だ。




 ギルドの人たちの相手をしたおかげか、あっという間に時は流れた。そのおかげで、あの戦士の身元を特定するまでの時間を潰すことができた。私とティノちゃんはギルドの取り調べ室にいる。部屋の中にいる取調官は困った顔をしながら私が倒した戦士の取り調べをしていたが、あの戦士が持っていた荷物で身元の特定ができたようだ。


「あの戦士はスーテゴーマ・ヒドスギンと言う男です。ドッチカと言う町に住んでいたようですが、数年前にジャッジメントライトに入ったようです」


「それで、ストッパーブレイクを使わされてこんなになったのね」


「恐らくそうでしょう」


 私と話をしているギルドの戦士は、ボーっとしているスーテゴーマを見て、恐ろしそうにこう言った。


「恐ろしい薬ですよ。あれを使ったらこうなるんですね……」


「薬を使って力を得ても、それ以上の代償を受けることになります。奴らはそれが分からないんです。それか、分かってそれをやっているか……」


「どちらにしろ、最悪な連中ですよ。エクスさん、早くジャッジメントライトなんてぶっ潰してくださいよ」


「分かってるわ。あんな連中、サクッと倒してやるわよ」


 私がそう言うと、ギルドの戦士は頼りにしていますと小さく呟いた。




 本当はすぐにラリネットへ向かおうとしたいのだが、夜遅いためかもうバスはない。あの騒動でかなり時間を使ってしまった。


「これから旅立つのは危険ですね」


「私はそうでもないけど。まぁ、バスの方が楽だし、夜は危険なモンスターがうじゃうじゃいるからあまり出たくないわねー」


「では、一晩このギルドで泊って行きませんか?」


 と、ギルドの人がこう言った。それはありがたい。今から宿に予約しようとしても、満室でできないだろう。町中で野宿するしかないかと思っていたが、泊めてくれるのならありがたい。


「ありがとうございます。では、言葉に甘えます」


「分かりました。客用の部屋が空いています。ベットは一つしかありませんが、それでもよければ」


「私とティノちゃんで使うので大丈夫です。それでは、案内をお願いします」


 その後、私とティノちゃんは客用の部屋に案内された。ベッドは一つしかないが、それ以外はテレビや冷蔵庫、エアコンがある。それらがあれば十分だ。


「エクスさんとティノさんが泊るのはキッチンの係に伝えておきます。好きなタイミングで食事を楽しんでくださいね」


 と言って、ギルドの人は去って行った。さて、少し休もう。私は椅子を取り出し、背伸びをして座った。


「今日は疲れましたね」


「これから、同じような奴に襲われるかもね」


(エクスの言う通りだな。今後、ストッパーブレイクを使った戦士との戦いが多くなるかもしれないな)


 ヴァーギンさんの言葉を聞き、私とティノちゃんは頷いた。


 ストッパーブレイクを使った戦士と初めて戦ったが、苦戦しはしなかったが面倒だと私は思った。痛覚がないせいか、どれだけ斬られても立ち上がる。下手に攻撃を続けたら、相手はいずれ死んでしまう。敵の腕や足を斬り落としても、私は命までは奪わない。人を殺したら、あいつらと同じクズ野郎になってしまう。どんな悪党でも命を奪わないが私が自分自身に決めたルール。下手すれば、このルールを破ってしまう。


(エクス、悪人の命を奪うことにためらいを感じているんだな)


 ヴァーギンさんがこう言った。私はため息を吐き、言葉を返した。


(ええ。絶対に命を奪わないが私のルールなので)


(ギルドの戦士には、悪人と戦って殺してしまっても、罪にならない法律があるのは知っているか?)


(ギルドの戦士になる前に、頑張って勉強しました。ギルドに関する法律はすべて覚えています。ですが、私は絶対に殺しません。やったらやったで気分が悪いし、人を殺す奴と同格になってしまいます。それに……)


(それに?)


(あいつらの罪は法律で裁く。私は奴らと戦うだけ、裁く権利はないと思っています。それと、死んで楽にしたら、罪を負った苦しみを味わわせることができませんからね)


(そ……そうか……)


 自分でもぶっ飛んだことを考えていると思う。だけど、この考えを持って今まで戦って来た。多分、これからもずっとそうだろう。


「エクスさんも、ただひたすらに悪人の手足を斬り落とすだけではないんですね」


「楽よりも苦しみを与えないと。今なら本気を出したらもっとえぐいことができるんだけど」


「そんなことを言わないでくださいよ。まだ食事前なのに……」


「あ、ごめんごめん。そんな話をするもんじゃないね」


 ちょっとやっちまったな。私は自分のミスをごまかすかのように笑った。ヴァーギンさんの呆れるようなため息が脳内で響いた。


 その後、私とティノちゃんはキッチンへ向かい、食事をした。ギルドの人たちは、私とティノちゃんの前にある盛りに盛られた料理を見て目を丸くして驚いていた。


「大食いと言う話は聞いていたが……結構食うな」


「派手に魔力を使ったり、動いたりするから魔力を使うのか」


「俺たちもあれだけ食えば強くなれるだろうか?」


 などと、周りから声が聞こえた。そんな中、一人のギルドの戦士が私とティノちゃんに近付いた。


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