ラリネットへ向かう中
今の私の強さをギルドの皆に伝えた後、私とティノちゃんはラリネットへ向かうことにした。準備をする中、エンカが近付いた。
「おい、いつ行くんだ?」
「明日には行くわ。根無し草の私たちの方が動きやすいからね」
「俺も付いて行くぞ」
エンカはそう言ったが、私はため息を吐いてこう言った。
「あんたはモツアルトのギルドに所属しているでしょうが。ジャッジメントライトを追い詰めたのはいいけれど、あいつらがいつ反撃を仕掛けてくるか分からないわ。自分が守る場所をちゃんと守りなさい」
「お前たちに頼り切ってばかりじゃいられない。俺も行く」
何が何でも私とティノちゃんに同行しようとするエンカだが、私はエンカに近付いてこう言った。
「あんたには十分頼ったわ。私が修行でいなかった三年間、ずっと頑張ってたんでしょ?」
「まぁな。ジャッジメントライトの戦士を相手に、何度も戦った」
「だから今度は私の番。今の私には、アソパを斬り倒す自信があるから」
「一度負けた相手だぞ。勝てるかどうか分からないぞ」
「だからこそよ。一度戦って負けたけど、あいつの強さは把握した。だから確信できる。今の私には奴に勝てる確率があるってね」
私はそう言いながらエンカに向かってウインクをした。エンカは多少不安そうな顔をしていたが、ため息を吐いて私にこう言った。
「じゃあお前たちに任せる。死ぬんじゃねーぞ」
「死なないわ。絶対にね」
私は笑顔でエンカにこう言葉を返した。
翌朝。荷物をリュックに入れた私とティノちゃんはベトベムの門の前にいた。
「では皆さん。行ってきます」
「私たちがラリネットに行っている間、世界のことをお願いします」
私とティノちゃんがこう言うと、ギルドの皆さんは手を振って私とティノちゃんの旅立ちを見送った。その中には、エンカやソセジさんもいた。久々の再会だったけど、二人とも元気でよかった。そう思いながら、私は旅立った。
その道中、歩きながらティノちゃんが話しかけた。
「さて、これからラリネットへ向かいましょう」
「そうね。ここからだと、数日かかるわ。道中情報を集めながら行くわよ」
「はい」
すぐに向かうなら、ティノちゃんの魔力で飛んで移動したいのだが、ラリネットの状況がどうなっているのか分からない。アソパの奴がいたとしたら、奴が私たちの存在を察して逃げてしまう恐れがある。だから、魔力で飛んで向かうことを止め、バスと電車と徒歩で移動することにしたのだ。時間はかかるのだが、道中で休む宿や、電車やバスの中でいろんな人に話しかけることができるし、噂話でジャッジメントライトのことが出るかもしれないのだ。今はどんな些細な情報でも、ジャッジメントライトのことが知りたいのだ。
旅立ってから数分後、私とティノちゃんはバスに乗って移動を始めた。座って少し休んでいると、後ろの席に座る人の話し声が聞こえた。
「最近、変な戦士が増えたよね」
「やっぱりそうよね。最初は都会の周りだけかと思ったけど、最近は地方などで見かけるそうよ。おっかないわねぇ」
「一体何をしたいのか分からないのが、恐ろしいよね」
変な戦士か。私はティノちゃんの方を向いて話しかけた。
「変な戦士の話って知ってる?」
「聞いたことがあります。何を考えているのか分からないけど、かなり強い戦士がうろついていると」
「かなり強い? ギルドの戦士でも歯が立たないの?」
「そうらしいです。魔力の学校をすぐに卒業した後、私は修行を兼ねてギルドの戦士として再び活躍していましたけど、ベトベム周辺では見かけませんでしたね」
「そう。一度、どんな奴か会ってみたいわね」
「そんなことを言わないでくださいよ。そういうことを言うと、本当に出てきますよ」
ティノちゃんが慌てながらこう言った。だけど、旅をする中で変な戦士と遭遇することがあるだろう。その時まで、お楽しみはとっておくことにするか。
変な戦士の話を聞いた後、不意に私はストッパーブレイクのことを思い出した。三年前、あいつらはストッパーブレイクについていろいろと研究をしていたようだった。三年後の今、奴らはストッパーブレイクを使って強い戦士を作り出したのだろう。もし、噂になっている変な戦士がストッパーブレイクによって改造された戦士なら……まずいな。この三年で奴らの強い戦士を作る計画はかなり進んでいるかもしれない。
「ティノちゃん。いずれ私たちは変な戦士と戦うかもしれないわよ。覚悟しておいた方がいいわ」
「そうですよね。でも、どうしてですか?」
「ストッパーブレイクの話を思い出して。この三年で奴らはストッパーブレイクを使った最強戦士作成計画を実行しているかもしれない」
「最強の戦士を作る……ああ! そんな話が……あっ!」
「変な戦士の正体が見えて来た? 私の推測だけど、変な戦士が出てきたのはジャッジメントライトのせい」
「だとしたら……酷いことをしますね」
「一度もあったことがないから何とも言えないけど……まぁ、残酷なことをしているってことには変わりないわね」
私はため息を吐きながらこう言った。追い詰めたと思っていたが、あいつらはあいつらで逆転の一手を考えていたようだ。もし、デリートボンバーも改良されているのであれば……かなり危険かもしれない。
いろいろと考えていると、急にバスが止まった。シートベルトをしていた私たちは無事だったが、していなかった人たちは体や頭をぶつけて悲鳴を上げていた。
「乗客の皆様、失礼しました! 突如、人が道路に飛び出してきたので、急ブレーキを行いました」
どうやら、道路に飛び込んできた輩がいるらしい。一体どんな奴だと思いながら、私は外を見た。飛び込んで来た奴は黒い軽鎧を着ていて、腰には市販で売られている長めの剣が携えてあった。
「一体どんなバカが飛び込んで来たんだ?」
「本当に迷惑よね」
「いたた……うわ、たんこぶができた」
などと、乗客の皆さんが次々と文句を言い始めた。私も少々呆れながら時間が過ぎるのを待ったが、いくら待ってもバスは進まなかった。
「まだ飛び出してきた人が前にいるの?」
私は運転手に近付き、こう聞いた。私の言葉を聞いた運転手は頷いて返事を返し、外を見た。
「変な人ですよ。ずっとこっちを見ているんですよ。表情も変えないから、怖くて怖くて……」
運転手の言う通り、変な戦士はずっとバスの方を見ている。何かを探しているのか……いや、探しているのは私みたいだ!
「運転手さん。今すぐ扉を開けて。奴の狙いは私!」
「え? へ?」
「驚いていないで早く開けて!」
「わ……分かりました!」
運転手が急いでバスの扉を開けた後、私は変な戦士に向かって飛び蹴りを放った。バスの入口まで走って来たティノちゃんが、私の方を見て叫ぶのが聞こえた。
「エクスさん!」
「ティノちゃん、バスの中の人たちを守って! こいつ、噂の変な戦士だよ!」
私がこう言うと、倒れた変な戦士はすぐに起き上がり、剣を抜いて私に斬りかかった。私は剣を使って変な戦士の一撃を受け止め、がら空きの腹に向かって蹴りを放った。再び変な戦士は転倒したが、転倒の反動を使って起き上がった。
「エクス……シルバハート……エクス! シルバハァァァァァトォォォォォ!」
変な戦士は叫びながら私に斬りかかった。やはり狙いは私の命! なら、ジャッジメントライトの手がかかった戦士だな!
「かかって来なさい。返り討ちにしてあげるわよ!」
「殺す! エクス・シルバハート! お前を殺す!」
変な戦士は叫び声と共に、剣を私に向かって振り下ろした。私は攻撃を剣で受け止め、奴の顔を見た。奴は私の顔を睨むように見て、歯をむき出しにして怒りをあらわにしているようだった。こんな奴の怒りを買った覚えはないが、多分ジャッジメントライトの関係者だろう。返り討ちにしてやるわ!
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




