アソパの行方
アソパの行方をギルドはキャッチしている。ということは、アソパがどこにいるか知っているということか。私はその話を聞いて心の中で喜んだ。しばらく重役が話をしていたが、司会者が咳ばらいをしてこう言った。
「話を続けましょう。次の議題、ジャッジメントライトの幹部、アソパの行方について話をします」
そう言った後、司会者の後ろにあるモニターの写真が変わった。どこかの町らしいが、映像の中央にはアソパの姿があった。三年前、直接奴と戦ったから分かる。あれは間違いなくアソパだ!
「これは三日前に衛星写真で映した写真です。アソパはラリネットと言う町に潜伏しています」
「ラリネット? あそこは確か……砂漠が近くにありましたね」
「そうだ。あそこにいるとは思わなかった……いや、人目が付かない場所にいるのは当たり前だな」
「何をやっているのか分かるか?」
「いえ、全然分かりません」
などと、声が聞こえた。この写真を写したのは三日前。すぐに行けば、奴がいるはずだ。
「とにかく早くラリネットへ向かいます!」
私が立ち上がってこう言うと、重役たちは驚いて私の方を見た。
「エクスさん。あなたとティノさんだけでは危険です。ここからラリネットまでは数日かかります。そして、あなたが動いたことをジャッジメントライトが知れば、確実に襲われます」
「大丈夫です。私は奴を倒すために三年間、ずっと修行をしていました。昔は奴に負けましたが、今は奴を倒せる自信があります」
私がこう言うと、重役の一人がため息を吐いた。
「確かに強くなったようだが、実力を見たい。一度、外に出よう」
「外へ?」
外に出て一体何をするつもりだろう? 私はそう考えながら、外に出ることにした。
会議を一度中断し、向かった場所は訓練場。すでに何人かのギルドの戦士が模擬戦をやっていたが、私たちの姿を見て模擬戦を止めた。
「では今から、ベトベムに所属する腕利きの戦士と戦ってもらう。そこで、君の腕を見てからこれからの動きを考える」
重役の言葉を聞き、私はにやりと笑ってこう言った。
「じゃあ、全員倒したらすぐに向かってもいいんですね?」
「構わん。だが、そう簡単に倒せると思わない方がいいぞ」
「うっしゃ! 簡単に倒して見せます!」
私はそう言って軽く準備運動を始めた。ティノちゃんが私に近付き、心配そうにこう言った。
「エクスさん、それなりに手加減してくださいね。本気出したら、相手が大怪我しますので」
「大丈夫よ。加減できるから」
そんな話をしていると、大きな木刀を持った男が私の方を向き、手招きをしていた。どうやら、最初の相手はこいつの用だ。
「俺はワンキール。ベトベムのギルドの戦士の中で、上の強さだと言われている」
「あっそう。丁寧に名乗ってくれてありがとう。私の名前は知っているよね?」
「もちろんだ。ジャッジメントライトの怨敵のエクスだろ? お前とは一度戦いたかったんだ」
そう言って、ワンキールは大きな木刀を構えた。
「さぁ来い」
「先手で攻撃してもいいの? はっきり言って、ハンデが必要なのはあんたの方だと思うけど」
私は相手を挑発するように笑いながらこう言った。この笑みを見たワンキールは、歯を食いしばってこう言った。
「その余裕が仇となることを、思い知れェェェェェ!」
ワンキールは叫びながら私に向かって走り出した。大きな木刀を持っているから、それなりに力があるだろうと思われる。だが、今の私には通用しない。私はワンキールが攻撃する前に素早く木刀を振り、ワンキールに攻撃を仕掛けた。
「なっ……」
攻撃を受け、バランスを崩したワンキールはそのまま後ろに倒れた。
「とりあえず一本。まだやるつもり? それならまた相手になるけど」
私がこう聞くと、ワンキールは立ち上がってこう言った。
「今のはまぐれだ。もう一度手合わせ願いたい!」
「ストップだワンキール。今の攻撃はまぐれじゃない。エクスはお前の攻撃に合わせて木刀を振るった。それに、お前の攻撃を見切っていた」
と、後ろから声が聞こえた。声の主はワンキールより小柄な男、木刀の長さは他と変わらず。だが、余裕そうな表情と態度がこの男の強さを現している。
「ペルダン。俺はまだ負けていないぞ」
「そう言っても、負けは負け。真剣で戦っていたら、お前の首はぶっ飛んでたよ。次は俺がやる」
ペルダンと呼ばれた男は私の前に立ち、右手で木刀を持った。
「俺はペルダン。結構早いぜ」
「早さが自慢なのね。それじゃ、とっととやりましょう」
「そうだな」
と言って、ペルダンは素早く走り出した。
「ペルダンの韋駄天剣術だ!」
「早く走って相手の目をごまかし、その隙に攻撃するというちょっと卑怯な技だ!」
「すげぇ、相変わらずあいつの早さはとんでもねーぜ! まるでバイクが走っているかのようだ!」
周りのギルドの戦士たちは驚きの声を上げている。ペルダンが早く走るから、目で追えないのだろう。だが、私は走り出した直後から動きを目で追っている。
「どうしたんだい? 俺の早さに目が追い付けないのかい?」
ペルダンは私が目で追えないと察し、得意げにこう言っている。私はため息を吐き、タイミングを合わせて木刀を前に出した。すると、走っていたペルダンが木刀に激突し、激しく宙を舞った。そして、床に落ちた。
「結構音が響いたわね。おーい、起きてるー?」
私はペルダンの頬を叩いたが、気絶しているようで何も反応しなかった。どうしようと思っていると、別の声が聞こえた。
「ワンキールもペルダンも情けない。次はこの俺が戦ってやるぜ!」
そう声を出したのは大柄な男。両手にはそれぞれ大きな木刀が握られていた。その姿を見たギルドの戦士は、声を上げた。
「お前は裏ギルドの戦士、千人斬りのウィクトゥス! 依頼に行ったと思ったが、戻って来たのか!」
「ついさっき戻って来たんだよ! そしたら、おもしれーことやってるって聞いてな! あのエクスが喧嘩相手を探しているようだな。俺がやってやるぜ」
と言って、ウィクトゥスという男が私の前に立った。裏ギルドの戦士を千人斬ったと言っているが、その実力は本物だろうか?
「お前がエクス・シルバハートか。俺から見ると、やっぱりちっちゃいなぁ!」
「あんたがでかいからでしょーが。で、次の相手はあんたでいい?」
「当然だ。早速始めようぜ!」
ウィクトゥスはそう言って左手の木刀を私に向かって振り下ろした。私は攻撃を察してかわし、ウィクトゥスの動きを見た。やはり、私が攻撃をかわすと察して次の攻撃の動作を行っていた。
「避けたつもりか? これでも喰らえェェェェェ!」
風を切る音が私の耳に響く。その位、ウィクトゥスの攻撃の威力が高いという証拠だ。だが、攻撃なんて当たらなければ意味がない。私は高く飛び上がって攻撃をかわし、ウィクトゥスを睨んだ。
「なかなかの運動神経だな! だが、俺はお前よりも筋肉も力もあるぞ!」
「だからどうしたの? 私に攻撃が当たらなければ、筋肉も力もあっても意味がないわよ」
「当たればの話だろ? 当ててやるさァァァァァ!」
その後、ウィクトゥスは両手の大きな木刀を私に向かって振り回した。だがやはり、ウィクトゥスの攻撃速度は遅い。私はウィクトゥスが持つ大きな木刀を足場にし、蹴っては攻撃をかわしていた。しばらく攻撃をかわしていると、ウィクトゥスは息を上げていた。
「はぁ……はぁ……嘘だろ? 攻撃が全然当たらない……」
「あんたの攻撃、遅いから簡単にかわすことができるわ。だから言ったでしょ。筋肉と力があっても意味がないって。格上の相手を戦う時は、攻めることも必要だけど避けることや技術のことも考えないといけないわね」
と言って、私は木刀をウィクトゥスの首元に当てた。
「これが真剣だったら、あんたの首はポーンって飛んでるわ。これで私の勝ちは確定ね」
私は笑顔でこう言ったが、ウィクトゥスは目を丸くして私を見ていることしかできなかった。
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