ザムの過去と罪
私はラゴンさんから聞いたことをギルドの皆に話した。ジャッジメントライトのボス、ザム・ブレークファートがヴァーギンさんの師匠のラゴンさんの弟子であり、元はギルドの戦士であったことを。この話を聞いたギルドの皆は、どよめきの声を上げていた。
「元ギルドの戦士がジャッジメントライトのボスだと?」
「ザム・ブレークファート? 知らん名前だな……」
「どうしてギルドの戦士だった奴があんな組織を……」
流石に皆驚くか。元はギルドの戦士だった人が、今は危険な裏ギルドのボスをやっているんだから。エンカもそうだけど、ソセジさんも驚いていた。
「エクスさん、もしかして剣聖の森で修行をしていたのか?」
ソセジさんがこう聞いてきたため、私はそうですと答えた。
「やはりそうか。私も聞いたことがある。剣聖の森という、剣士のための修行場があると。そこには、伝説の剣士が暮らしていると聞いていたが……」
「伝説の剣士……あのエロジジイはそんなふうに言われているんですね。前々走には見えませんでしたけど」
「エロジジイ? 君は一体あの森で何を修行したのだ?」
「サバイバル生活です。修行の話はまた後でしますね」
私がこう言うと、重役の一人がこう言った。
「私はザム・ブレークファートのことを知っている。若い戦士は知らないようだから、今話をしたい」
その言葉を聞いた他の皆は、すぐにお願いしますと言った。私も名前とクソ真面目な性格で悪は嫌いということしか知らないため、ザムのことをよく知っておきたい。そう思っていると、その重役はザム・ブレークファートのことを話し始めた。
「ザム・ブレークファートと私は同期でした。ギルドに入ったのは確か二十年前のこと、ザムはかなり真面目な男で、どんな些細な悪事も許さない男でした。ザムは同時期に入ったギルドの戦士と比べて、かなり強かった。恐ろしいほど強かった。訓練で模擬戦を何度もやったが、敵わなかった。ザムは模擬戦で負けたことがありませんでした。同期の戦士は全員ザムに勝てなかったんです」
ここまで話すと、その重役はため息を吐いて話を続けた。
「ですが、ザムは真面目過ぎたのです。そして、誰よりも深く悪を憎みました。悪を滅ぼすためなら、ザムは問答無用で悪人を殺しました。ザムの手によって、裏ギルドもいくつか壊滅しましたが、生き残った裏ギルドの戦士は一人もいませんでした。皆、ザムの手によって皆殺しにされたのです。そして、悪事に加担した無害な人も、ザムは殺しました」
「もしかして、無理矢理悪事に加担された人もザムは殺したのか?」
「はい。どんな理由があろうと、悪を働いたら悪というのがザムの考えでした」
「何て真面目で、恐ろしい奴だ……」
話を聞いた一人の重役が、恐ろしさのあまり震えだした。とにかく悪人を殺しまくるってのはラゴンさんから聞いていたけど、そこまでやるなんてやりすぎだと私は思った。だが、まだその重役の話は続いていた。
「しばらくしてから、ザムは別の大きなギルドに異動となりました。それから連絡はしなかったのですが、ギルドの新聞でザムが活躍しているのは知っていました。ある時からザムの記事が載らなくなり、その後に私はザムがギルドを辞めて行方が分からなくなったことを知りました。以上で私の話は終わりです」
ふむ。大きなギルドに異動してから、ザムは活躍していたけど何らかの理由でギルドを辞めてどこかに行ったのか。多分、そのギルドに移ってから何かあったようだ。闇落ちするような、酷い出来事が。私はそう思いながら、話を聞いていた。
「エクスさん。ザムについて他に知っていることはありませんか?」
いきなり話しかけられたため、私は少し驚いた。だが、すぐに我に戻って言葉を返した。
「いえ。私がラゴンさんから伝えられたのはザムがジャッジメントライトのボスをやっていることだけです」
「どうしてラゴンさんはそのことを知っているのか、質問はしたのか?」
「いえ。それはしていませんが……」
確かに気になる。どうしてラゴンさんはザムがジャッジメントのボスをやっているのだと知っているのだろう? そう思うと、ヴァーギンさんが話しかけてきた。
(今からテレパシーで師匠に連絡をするか?)
(お願いします。会議に出ている人たちには、後日連絡すると言っておきます)
(任せた。師匠への話については俺に任せろ)
そう言って、ヴァーギンさんはラゴンさんへテレパシーを始めた。
剣となって三年経過した。俺に触った人にテレパシーという形で連絡はできる。そのことは転生してすぐに理解できた。だが、どこまでできるか分からない。ベトベムから師匠がいる剣聖の森まではかなり距離がある。この距離があっても、テレパシーが通じればいいのだが。
(師匠。師匠。俺です、ヴァーギンさんです。声が聞こえるなら返事をしてください)
俺がこう呼びかけると、師匠の驚く声が響いた。どうやら、俺の声が聞こえたようだ。
(いきなり話しかけるなヴァーギン! 今、お楽しみの真っ最中だったのに!)
(いい歳して思春期の子供みたいなことをしないでください。大事な話があるからテレパシーをしたのに)
(男はいくつになっても子供じゃ。それより、大事な話って何じゃ?)
(どうして師匠はザムがジャッジメントライトのボスをやっていることを知っているのですか? 話を聞いた時は衝撃が強すぎて、話すことができなかったのですが……)
俺はこう聞くと、師匠は唸り声を上げていた。何か話しにくいことがあるのか?
(しゃーないのー。話しておくか。数年前、いきなり奴がわしんちにやって来たんじゃ。その時、わしは奴が悪を滅ぼすためなら人を殺すってことを知っていたから、叱ってやろうかと思ったんじゃが、あいつはギルドを辞めたこと、そしてギルドに変わるような正義のための新しい組織を作るって言ってたんじゃ。名前は決めていたと言っていた。その時に話していた名前が、ジャッジメントライトだったのじゃ)
(奴が数年前に……)
(そうじゃ。ジャッジメントライトが裏で活躍する前の話じゃからの。で、話は終わりか?)
(はい。ありがとうございます。お楽しみも控えてくださいね、歳なんですから。情けない死に方をしないでくださいよ)
(へーへー、分かりやしたよーっと)
師匠はそう言って話を打ち切った。俺はすぐにこのことをエクスとティノに話した。
ヴァーギンさんから話を聞いた。奴がジャッジメントライトとして活躍する前に、ラゴンさんに会っていたとは。少し驚いた。だが、それ以上に驚く話を私は聞いていた。
ジャッジメントライトが裏ギルドとされた後、かなり苦しい状況だと私は聞いている。ジャッジメントライトに入っていた信者みたいな人も、続々と辞めているようだ。その上、繋がりがあった政治家は皆辞めさせられ、メディアとの繋がりも断たれてしまった。そのため、何か動いたら確実にメディアが騒ぎ、悪事が知られてしまった関係もあるのか、関係ない事件も関係があるように報道されている。今のジャッジメントライトはかなり追い詰められている。
「奴らは金銭的にも人数的にも苦しい状況だ。下手に動いたらギルドに捕まり、取り調べを受けると察している」
「そうだな。状況としてはこちらが有利だが、いつ状況が動くか分からない。奴らを潰すなら今しかない!」
などと、重役が次々とこう言っている。そんな中、ティノちゃんが私にこう言った。
「そう言えば、アソパはどこにいるんでしょうか?」
「アソパねぇ……あいつもこんな状況だから派手な動きをしないと思うけど……」
私がこう話すと、その話を聞いていた前に座るギルドの戦士が振り返り、小さな声でこう言った。
「このことも話すようだ。ギルドはアソパの動きをチャッキしたらしい」
その話を聞き、私とティノちゃんは目を丸くして驚きながら顔を見合わせた。
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