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再びベトベムへ


 三年前は電車とバスを利用して数日かかったが、今はティノちゃんのおかげでラゴンさんのいる村からベトベムまでは、魔力を使って飛んで数分で移動できる。


「はい。着きました」


「ありがとう。いやー、ティノちゃんの魔力結構強くなったわね」


「それほどでも~」


 私とティノちゃんが話をしていると、ベトベムの門番が私を見て驚いた表情をした。


「あ……あなたはエクスさん! 戻って来たんですね!」


「はい。三年間修業していました」


「いきなり消えたから、皆驚きましたよ! 今、ギルドに連絡しますのでお待ちください!」


「大丈夫。今からそっちに行くから」


「いきなり来たら皆驚きますよ。最初にクッションみたいな形で話をしておいた方がいいと思いますが」


 うーむ。確かに門番さんの言う通りだ。もし、ギルドで大事な話をしている最中に私が帰ってきたら、驚いて話どころじゃないからね。とりあえず門番さんの言う通り、話を通してもらおう。


「話を通しました。今、迎えの車が来るそうです」


「分かったわ。それじゃあ、迎えが来るまで休んでいるわ」


 そう言った後、私とティノちゃんは近くの自動販売機へ向かってジュースを買った。


 数分後、ギルドの迎えの車がやって来た。運転手は私とティノちゃんを見て、にやりと笑った。


「エクスさんですね。俺はギルドでドライバーを務めている男です。さ。早速車に乗ってください」


「では」


 私とティノちゃんは車に乗り、車が動くのを待った。そんな中、ティノちゃんはドライバーの顔を見て驚いた。


「えええええ! あなたが送迎するんですか!」


「そうだ。俺みたいなのが適任だって言われたんだよ」


「本当は?」


「暇だから」


 ドライバーはそう言って窓を開け始めた。私はティノちゃんの方を見て、こう聞いた。


「知り合い? 親しそうに話していたけど」


「騒動の後なんですが、車の運転手としてギルドに入ったハチロクって人です。運転の技術は高いのですが……運転の仕方にかなり問題があって……」


「さ、ドライブの時間だぜベイビーたち!」


 と言って、ハチロクさんは思いっきりアクセルペダルを踏みこみ、それと同時に荒々しい音が鳴り響いた。車内にいるけれど、それでも聞こえる。その位うるさいエンジン音なのだろう。私がそう思っていると、車が猛スピードで走り出した。


「いやァァァァァァァァァァ!」


「うっはー。結構飛ばすわねー。この車、改造してある?」


「エクスさんの察しの通り。目的地までマッハで到着するため、いろんな所を改造してあるのよ!」


 ハチロクさんは笑いながら話をした。しかも、私の方を振り返って。ティノちゃんは前を見て、さらに悲鳴を上げた。


「いぎゃァァァァァァァァァァ! 前を見てください! 車が来てます!」


「あっそう。かわせばいいだけよ」


 そう答えながら、ハチロクさんは急ハンドルをし、前から来た車をかわした。だが、次に見えたのはカーブだった。


「おっ! ドリフトチャンスだ! かっこいい所を見せてやるから期待していてくれよ!」


「そんなことをしなくていいから! 安全に運転してくださーい!」


 ティノちゃんの叫び声が響く中、ハチロクさんは歓喜の声を上げながら車の運転をしていた。




 なんつー荒々しい運転手だ。ドリフトはもちろん、中央車線を走って前の車を追い抜いたり、変な所を走って近道するなど、とんでもない運転をしやがった。エクスはなんともないようだが、ティノは疲れ果ててボロボロになっていた。


「もう……これからは別の人を送迎に頼みます」


「そんなことを言うなよティノちゃん。また頼ってくれよ」


「あなたみたいな人がいずれ大きな事故を起こすんですよ! 本当にもう、ギルドはどーしてこんな危険運転をするおっかない人を雇ったんですかねぇ……」


「まぁまぁ、手っ取り早くギルドに到着したからいいじゃないの。で、これが新しいベトベムのギルドね」


 俺たちが目にするのは、新たに生まれ変わったベトベムのギルド。三年前、ジャッジメントライトの攻撃を受けて半壊してしまったが、この三年間で復興したようだ。


 入口の前にいる戦士が、エクスたちを見て声を上げて近付いた。見たことのない戦士だが、きっと新入りなのだろう。


「あなたがエクス・シルバハートですね! 俺、あなたみたいな剣士になりたくてギルドに入りました!」


「私もです! あなたが剣を振るう所が美しく、かっこいいので……ずっと憧れていました!」


 二人の新入りにこう言われ、流石のエクスも照れているようだ。そんな中、入口から別の戦士がやって来た。この戦士は見たことがある。


「おい。話をしている暇があれば、エクスに近付けるように修行でもしておけ」


 この戦士は二人の新入りにこう言った後、エクスに近付いた。


「久しぶりだな、エクス」


「えーっと……まさか、エンカ?」


「その通りだ」


 エンカを見たエクスは、驚いた表情をしてまじまじとエンカを見ていた。この三年間で鍛えたのはエクスだけではないようだ。エンカも強くなるため、かなり鍛えたようだ。三年前と比べて、筋肉の量が増えている。成長したようだ。


「本当は修行した後のお前と模擬戦をやりたいが、今はそれどころじゃない」


「ジャッジメントライトの話をしていたのね」


「そんな所だ。ティノ。エクスを会議室に案内してくれ」


「はい」


 その後、俺たちは会議室へ向かうことになった。会議と聞いたエクスは嫌な顔をすると思ったが、その表情は見られなかった。


(嫌いな会議が始まるのに、平気でいられるな)


(今回ばかりは重要なので、逃げることを考えていません)


(そうだな。もしかしたら、新しい話を聞くことができる。ちゃんと耳にしておけよ)


 俺がそう言うと、エクスは分かったと返事を返した。数分後、俺たちは会議室に入った。扉を開けて中に入ると、エクスの姿を見たギルドの戦士たちや、重役が驚きの声を上げた。


「久しぶりだな、エクス」


「かなりたくましくなって戻って来たようだな」


「見た目で分かる。三年前と比べてかなり強くなった」


「褒めてくれてありがとうございます」


 エクスはそう言って、頭を下げた。その時、手招きをするギルドの戦士を見つけた。エクスはその戦士の顔を見て、急いでその戦士の元へ向かった。


「久しぶりです。ソセジさん」


「本当に久しぶりだな。ティノから聞いたぞ。三年間、ずっと修行をしていたって」


 手招きをしたのはソセジだった。見た目は変わらないが、少しだけしわが増えたように見える。そんな中、会議が始まった。


「では、ジャッジメントライトの調査結果について話をする」


 司会者がそう言うと、一人のギルドの戦士が立ち上がった。


「今回の結果も何も得ることはできませんでした。ジャッジメントライトの動きも裏ギルドと認定されてから、目立たなくなっています。そのせいか、ジャッジメントライトの戦士を捕らえることが難しくなっています」


「そうか。裏ギルドと認定し、動きを制限していいこともあるが……捕らえて話を割ることも難しくなるな……」


 戦士と重役は唸り声を上げながら話をしていた。確かにその通りだ。裏ギルドとして認定されたら、目立つことができなくなる。奴らの動きを制限することもできるが、捕まえることも容易ではなくなる。ふむ……こんな結果になるとは思わなかった。


(ヴァーギンさん。あのことを皆に伝えた方がいいですよね?)


(あのこと……ザム・ブレークファートのことだな)


(はい。奴のことを皆に伝えれば、話が展開すると思いますので)


(そうだな。頼むぞエクス。奴のことを皆に伝えてくれ)


 俺がこう言った後、エクスは手を上げて立ち上がった。


「これから話すことは、かなり重要になります。皆さん、しっかり聞いてください」


 エクスの声を聞き、戦士や重役たちは一斉にエクスの方に視線を動かした。


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