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三年後の世界


 修行を終えた私は、エロジジイことラゴンさんの家に戻って来た。家の中にはお茶を飲むラゴンさん、そして丁寧に置かれているヴァーギンさんの姿があった。


「修行お疲れさん。三年間、ずっと戦っていたようじゃな」


「三年間! 私、三年間も修行していたんですか!」


「まーの。あの小屋には確認用のモニターがあるが、日付とか出ない安物だからのー」


 ラゴンさんはそう言って、私にヴァーギンさんを渡した。


「ほれ、英雄ヴァーギンじゃ。ヴァーギンが戻って来たこと、いろんなことを聞いたぞ」


「そうですか」


 ヴァーギンさんを受け取る時、ラゴンさんは嬉しそうな顔をしていた。この三年間の間、ずっと弟子であったヴァーギンさんと話をしていたのだろう。そう思う中、私は家の中を見回した。


「あれ? ティノちゃんは?」


「ベトベムへ戻ったぞ。もう一度勉強し直すと言ってな。じゃが、すぐに学校を卒業して、ベトベムのギルドで活躍しているぞ」


「へー。鍛え直ししているんですね。で、連絡できます?」


(ちょっと待ってろ。俺が脳内で話しかけてみる)


 と言って、ヴァーギンさんがテレパシーでティノちゃんに呼びかけを始めた。




 俺はテレパシーのような技でティノに連絡を取った。師匠の家からベトベムまではかなり離れているが、果たして連絡できるだろうか。少し不安だ。


(ティノ、ティノ。俺だ。ヴァーギンだ)


(ふぇっ! ヴァーギンさん! お、お久しぶりです!)


 ティノの声が聞こえた。よし。テレパシー成功だ。


(エクスが今戻って来た。今、ティノは何をしているんだ?)


(依頼を終えて戻って来たところです。丁度良かった。今からそっちへ向かいます!)


(そうか。こっちに来るまで数日かかると伝えておくよ……え? 今から?)


 俺はティノが今から来ると聞き、少し不審に思った。ベトベムから師匠の家までは、かなり距離がある。片道数日かかるはずだが、すぐに来れるはずがない。


(今から向かうと言ったが……)


(そうですか。早くティノちゃんと会いたいなー)


 と、エクスはお茶を飲みながらこう言った。それから数分後、誰かが扉をノックした。


「誰じゃー? 宅配便ならポストへ……」


「違います! ティノです!」


 何と、家に来たのは宅配便ではなくティノだった! 片道数日かかる道を、たった数分で来たのか! 一体どうやって?


「ティノちゃん。久しぶり」


 エクスはティノに向かって手を振ってこう言った。ティノはエクスを見て、一目散にエクスに抱き着いた。


「エクスさん! お久しぶりです! この三年間でたくましくなりましたね!」


「ティノちゃんもたくましくなったわよ。まさか、ここまで飛んで来たの?」


「はい。この三年間、魔力を勉強し直し、鍛え直しました! 今なら数分で世界を飛び回れます!」


「ははは。強くなったわね」


 どうやら、ティノは魔力を使ってここまで飛んできたようだ。エクスにしろ、ティノにしろ、この二人の成長速度は俺よりすごい。俺はただ、笑うことしかできないや。




 ティノちゃんとも再会したし、そろそろジャッジメントライトとの戦いを再開しよう。そう思って私は立ち上がろうとした。だが、ラゴンさんが私を止めた。


「旅立つ前にいろいろと話をしよう」


「話? まぁ……三年間ずっと修行していたから、何も知らないわね」


 私の言葉を聞き、ティノちゃんは驚いた。


「えええええ! じゃあ、あのことも知らないんですか?」


「あのこと? いいニュース? 悪いニュース?」


「いいニュースです。ジャッジメントライトが裏ギルドとして世間に公表されました。政治家やメディアなどに繋がりがあることも世間に公表しました」


 おお! それはいいニュースだ! 奴らは裏ギルドながら、政治家やメディアに繋がりを作り、悪い噂を立てないようにしていた。だが、政治家やメディアの盾がなくなり、奴らを守る物がなくなったようだ!


「それはいい状況ね! で、どうやったの?」


「アチーナさんです。アチーナさんがジャッジメントライトの裏のことを演説で話し、奴らの悪行の証拠をばらまいたんです!」


「へぇ。アチーナさんが。頑張っているわね」


「証拠はギルドが提供しました。あの時は大きなニュースになりましたよ」


 修行をしていたから、この時のメディアがどれだけ大騒ぎしていたのか気になる。多分、いろんな所からメタメタに叩かれ、慌てたのだろう。


「で、奴らは今何をやっているの?」


「悪行がばれた後、裏で動いているようです。私もベトベムのギルドに協力して、ジャッジメントライトの殲滅を行っていました」


「殲滅か……まだ、テロを計画していたのね」


「そんな感じです。でも、私が前に立って奴らを倒したため、全ての計画を台無しにしました」


「私の代わりに戦ってくれてありがとう」


 私はそう言って、ティノちゃんの頭を撫でた。


 この三年間でジャッジメントライトの動きはかなり制限されたようだ。裏ギルドと言われるようになったため、人目に付くことはできないだろう。メディアによる盾、政治家にいよる賄賂などの金銭もなくなった。多分、まともな動きができないだろう。


「私が修行している間に、奴らはかなり弱体化したようね。叩くなら今しかないわ」


「ですが、奴らのアジトが分かりません。裏で動いているジャッジメントライトの戦士を倒して捕まえては取り調べをしているのですが、奴らは口を割りません……いや、割ることができません」


 ティノちゃんの言葉を聞き、私はあることを思った。アソパが言っていた、改造戦士の話である。


「ねぇティノちゃん、この三年間でジャッジメントライトの改造戦士と戦った?」


「それらしい戦士なら、何回か戦いました。奴らはかなり強いです。私が魔力を込めて放った攻撃も耐えました」


「そう……かなり耐久力があるわね」


「口が割れないのも、改造を受けた影響かもしれません」


「改造して戦士がパワーアップ。そして取り調べでも何も言えない。計画しているわね」


「私もそう思います」


 私とティノちゃんが話をしていると、ラゴンさんが咳ばらいをした。


「ジャッジメントライトのことについてなんじゃが、一つ二人に話をしておきたいことがある」


「何ですか?」


 私がこう聞くと、ラゴンさんはとりあえず座れと言い、私とティノちゃんを座らせた。


「修行の邪魔になると思って話をしておかなかったのじゃが、わしはジャッジメントライトのことをある程度は理解している」


「ええ!」


「ヴァーギンのことがあったからの。それに、こー見えてわしは裏のこともちょいちょい知っている。ジャッジメントライトが偽善活動を行いつつ、裏では犯罪行為に手を染めていることもな」


 そう言った後、ラゴンさんはお茶を飲んで一服した。一体何を知っているのかこっちは気になっているのに。


「そう急かすなよエクスのねーちゃん。一つ、昔話を聞いておくれ」


 ラゴンさんは思い出すかのように、話を始めた。


「ヴァーギンがわしの弟子になる前の話じゃ。わしは今と変わらず立派な剣士になるつもりで修行に来る若造共の相手をしていた。そんな中、かなりの才能を秘めた男がやって来たのじゃ」


「かなりの才能……」


 私はその言葉を聞き、つばを飲み込んだ。ラゴンさんがそう言うため、かなり腕がいい剣士なのだろう。


「そいつはエクスのねーちゃんと同じようにサバイバル生活を行った。そして、長年の修行を得て剣の才能を開花し、天才以上と言われるほどの強さを手に入れた」


「天才以上。まさか、私よりも強いんですか?」


「かもしれんのう。今、あいつがどうしているか分からないが……」


 ラゴンさんはそう言うと、ため息を吐いて話を続けた。


「そいつの名はザム・ブレークファート。元、ギルドの戦士で……今はジャッジメントライトのボスをやっている男じゃよ」


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