激しい修行の末
私は生きるために、何度も剣聖の森に生息する危険なモンスターを狩り、その肉を食べ、その皮を服などの素材にし、骨や牙などを武器として作っていた。最初は慣れない作業だったが、何度も行ううちに次第に慣れてきた。強さの方も自分でも徐々に強くなっていることを把握し、少しずつ戦うモンスターを見定めて、強い奴と戦うようにした。だけど、あの金色の熊は倒せないでいた。
「はぁ、今日もやばかったわ……」
私はため息を吐きながら、金色の熊の手によって傷付いた箇所を治療しながら、周りを見渡した。何回もあの金色の熊に戦いを挑んだが、また倒せなかった。傷を癒した後、私はあくびをしながら小屋へ向かって歩いた。その途中、狼の群れが私を見つけた。だが、あいつらは私を見て恐怖を感じ、後ろに下がっていた。
「かかって来なさいよ。私のことが怖いのかしら?」
と、私は挑発するようにこう言った。けど、奴らは情けない声を上げて逃げて行った。修行を始めた時は、この森に生息する狼に頻繁に襲われたが、今はそんなに襲われることはなくなった。私を強者と判断し、戦っても勝てないから逃げたのだろう。
とりあえず。疲れたから小屋に戻って保存食でも食べて寝よう。そう考えた私は小屋へ向かった。
俺は師匠にネットのニュースを見せてもらっていた。師匠の家にはモニターはあるが、テレビとして使用していない。エロ動画を見る時のために使うようだ。師匠曰く、ニュースはネットでパッと見れるからそれでいいとのこと。まぁ、確かにそうだが。
「今日も何も大きな事件はないのー」
(そうですね。ジャッジメントライトの動きが分からないのが不満ですが)
「奴らはメディアの連中にも繋がりがあるから、不利になるようなことを記事にするなって言われているのじゃろう。卑劣なやり方じゃ」
師匠はそう言って深いため息を吐いた。そんな中、俺はある記事を見つけた。
(師匠、この若き天才魔力使いって記事を見せてください)
「何じゃ? 若き天才魔力使い? 変なタイトルじゃのー」
(いいから早く見せてください)
「せっかちは早死にするぞー。あ、お前はとっくに死んでいたんじゃった。メンゴメンゴ」
師匠は俺が気になった生地のタイトルをクリックした。やはり俺の創造通り、この記事にはティノのことが書かれていた。
「ほー。あの嬢ちゃんの活躍が記事にされてるぞ。ほうほう。魔力の学校に学び直しで再入学し、最短で卒業か。別れてから、嬢ちゃんも頑張っているようじゃの」
(ええ。ティノも力を付けるため、努力しているようですね)
「エクスのねーちゃんも、頑張っているようじゃ。まだ生きておる」
(そうですか。よかった……)
エクスはまだ生きている。あの森は危険なモンスターが生息しているから、俺なしで生きて帰って来るか心配だったのだ。だが、まだ生きているなら安心だ。生き抜くことができるほど、エクスは強くなったわけか。さて、二人はどれくらいに修行を終えるのだろう。俺はそれまで待つしかできないが、気長に待とう。
修行を始めて三年が経過した。この三年で私の体力、魔力はかなり強くなったと思う。そのおかげで、この森に生息するモンスター共は私を見ただけで一目散に逃げて行く。絶対に勝てないと察したのだろう。
だけど、まだ私は修行が終わったと思っていない。唯一勝てていない奴がこの森にいる。あの金色の熊だ。この三年間、私は何度も奴と戦い、傷付いて逃げている。あいつを倒さないと、修行を終えた気にならないのだ。
「さて……」
私は準備運動を終え、多数の獲物の牙や爪、骨を組み合わせて作った大剣を手にし、森へ向かった。三年間、この森で過ごしたため、どの場所にどのモンスターが生息しているのか理解できる。そして、あの金色の熊の出現場所も完全に把握していた。だから、すぐに奴を見つけることができる。
「見つけたわ。金色の熊」
私は目の前を見てこう言った。私が来るのを待っていたかのように、金色の熊は森の中でも障害物がなく、広くて戦いやすい場所に立っていた。私が来るのを待っていたようだ。さて、向こうもやる気ならこっちも本気を出さないと。
金色の熊は大きな声を上げながら、私に向かって突っ込んで来た。私は手製の大剣を振り、奴に反撃を放った。大剣の刃は奴の両手に命中し、浅い傷を付けた。奴は動きを止め、私を睨んだ。
「ファーストアタックは私がもらったわ」
どや顔で私はこう言った。金色の熊は叫び声を上げながら毛を逆立て、猛スピードで私に接近した。私は大剣を構え、奴の突進を防御した。大剣で奴の突進を受け止めたため、素材となっているモンスターの牙の破片や、爪の破片が周囲に舞った。これを狙っていた。
「喰らえ!」
私は魔力を解放し、宙に舞った破片を奴に向けて放った。どんなに目がよくても、小さな破片が飛んで来たら見切るのは無理に近い。そして、金色の熊はかなりでかい。たとえ早くても、当たり判定が大きいから確実に回避できる確率は低い。急所に当たらなくても、体のどこかに攻撃は当たる。
そう思った直後、金色の熊は悲鳴を上げた。どうやら、破片の一部が奴の急所に当たったようだ。
「やーっと私の勝ちね!」
私はそう言って、金色の熊に向かって大剣を振り下ろした。渾身の一撃が、奴の腹に命中した。血が流れたのを見た私は、大きく息を吐いた。
「ようやくあんたに勝てたわね……」
私の声を聞いたのか、金色の熊は弱弱しく呼吸を始めた。その時、小さな声が聞こえた。しばらくして、三匹の小さな金色の子熊が金色の熊に駆け寄った。私は魔力を解放し、金色の熊に近付いた。小熊は私がとどめを刺すのだろうと思っているのか、私を睨んだ。
「そんなことしないわよ、心配しないで」
そう言って、私は金色の熊を治療した。金色の熊は傷が治ったことを察し、私の顔を見た。多分、驚いているんだと思う。
「今までずっと、子供を守るために戦っていたのね。あんたの子供を殺すほど、私は外道じゃないわ」
治療を終えた後、金色の熊は立ち上がって私をじっと見ていた。すると、子熊の一匹が木の実を持って金色の熊に渡した。どうやら、お礼でこの木の実を渡すつもりなのだろう。
「お礼はいいわ。もっと強くなって、しっかりと子供を守りなさい。それと、できるなら人目に付かない森の奥深くを根城にした方がいいわよ」
私は金色の熊にそう言ったが、人の言葉が分からないだろうと思っていた。だけど、金色の熊は子熊を連れて去って行った。私の言葉を理解したのだろう。でもま、私が目標としていた金色の熊を倒すって目的を果たしたから、そろそろ修行を終えるとしよう。
私は道具を持ち帰るために、一度小屋へ戻った。小屋の中にはトイレやシャワーがあっても、パソコンやタブレットと言った電子機器はない。もちろん、カレンダーもないからどの位時が経過したのか分からない。でもま、あのエロジジイとヴァーギンさんと会えば、時の流れや今、何が起きているのか分かるだろう。そう思いながら支度をしていた。
「さて、戻るとしますか」
私は荷物を詰め込んだ後、ヴァーギンさんがいるあのエロジジイの家に向かって歩いて行った。その途中、私を見たモンスターたちは悲鳴を上げながら逃げて行った。
「もう戦わないってのに」
私は笑いながらこう言った。そして数分後、見慣れた家の姿が見えてきた。
「やっと戻って来た」
私はそう呟いた後、走り出した。エロジジイの家の前に立ち、私はノックした。
「ほーい。どちらさん?」
「私です。エクスです」
「エクスのねーちゃんか! 修行を終えて戻って来たのか! さっき、モニターで小屋を見たらいなかったから、まだ外で修行しているのかと思ったよ。ま、とりあえず家の中に入りなさい」
その声を聞き、私は扉を開けて家の中に入った。
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