辛い修行の日々
翌日から、私は必要なものを自分で作るため、ありとあらゆることを行った。武器である剣を作るために、いろいろと無茶をしながらモンスターを倒し、そのモンスターの骨や牙、角を加工しては剣のような形にし、それを使ってモンスターに戦いを挑んだ。だが、作った武器は数回使っただけで壊れてしまった。武器を作ることは学んでいないが、何度も武器を作るうちに徐々にコツを掴んだ。
生きるためには食事も必要だ。私は簡単にとることができるキノコや植物などを探した。だけど、毒もあるかもしれない物をそう簡単に口に運ぶことはしない。私は捕らえたモンスターに毒見をさせ、様子を見た。だが、一部のモンスターはキノコや植物を見ただけで、恐怖で震えあがる様子を見せていた。その様子を見て、毒の有無を確認していた。ちなみに、毒見で使用したモンスターは私が後で始末して、おいしく食べました。
最初の目標は小さなことだった。だが、その目標はいずれ大きな物へ変貌するだろう。とにかく生きる。それを目標として修行を耐え抜こう。
私は狩りを終え、小屋に戻って来た。着ている服ももうボロボロ。この小屋に着替えなんて物はない。倒したモンスターの毛皮を利用して作らないといけないのだ。
「ふぅ……やるしかないわね」
私は風邪をひかないように、モンスターの毛皮で作った簡易な毛布を体に巻き、服を作り始めた。だけど、剣を使うしか能のない私にいきなり服を作ることは不可能に近かった。
「うーむ……」
私は出来上がった服を見て、困ったようにうなり声を上げた。薄い。薄すぎるのだ。こんな薄い服を着て戦ったら、一撃でやられる。この森に住むモンスターは、私の反応速度に対応するモンスターがうじゃうじゃいる。こんなんじゃあすぐにやられてしまう。
「仕方ないわね」
私は諦めずに、服を作り始めた。だが、あまり納得がいく出来のいい服を作ることはできなかった。そんなことをしていると、もう夜になっていた。
「しゃーないわね……」
とりあえず私はシャワーを浴び、寝ることにした。
翌日。私は森に出て狩りを行った。何度もモンスターと戦っているが、初日より力と魔力が増した気がする。魔力を使っても、あまり疲れを感じないのだ。
「ふぅ……」
私は息を吐き、魔力を解放した。解放した魔力を一つにまとめ、剣に似た形を作り上げた。
「最初からこうすればよかったかも」
私はそう言いながら、襲い掛かって来る狼やイノシシ、熊のようなモンスターと戦いを始めた。目の前にいる熊のモンスターは私に接近し、右手を振り下ろした。熊のモンスターの動きは早い。最初は見切るのができなかった。だが、何度も戦ううちにこいつの攻撃を見切ることができた。私は熊のモンスターの攻撃をかわし、素早く魔力の剣を振るって熊の右手を斬り落とした。
「おっと。危ない」
私は急いで斬り落とした熊の右手を受け取った。熊の右手ってそれなりに美味しいのよね。私が熊の右手を手にすると、それを見た狼のモンスターが一斉に私に襲い掛かって来た。
「毛皮がたくさん。服が作れるかも」
私はそう言って素早く魔力の剣を振るった。この攻撃で、狼のモンスターの群れはあっという間にその場に倒れた。これで何着が服を作ることができるだろう。あとは一匹、イノシシのモンスターだけだ。そいつは私を睨み、突進の構えを取っていた。
「へぇ。やる気の用ね」
戦うつもりのイノシシを見て、私はにやりと笑った。その直後、イノシシは猛スピードで私に襲い掛かった。私は魔力の剣を前に突き出し、イノシシが自分で魔力の剣に刺さるのを待った。結果、魔力の剣はイノシシの額に突き刺さった。
「勘と動きはいいけれど、頭の方は悪いようね」
私は魔力の剣を消しながらこう言った。それなりにこの場で戦いを積めば、強くなれる。私はそう思っていた。だが、数日戦えば強くなれるなんてそんな簡単な修行じゃない。私はそう思いながら、倒した獲物を魔力の紐を使って持ち出した。
小屋に戻って獲物を加工し、干し肉などを作っていた。そんな中、私はある気配を感じた。荒い鼻呼吸、地響きかと思われるほどの足音、邪魔な木々がなぎ倒される音。恐らく、私が戦った狼やイノシシ、熊よりも強い奴が後を追いかけて来たのだろう。
「来なさい」
私は身構えながらこう言った。姿を現したのは、金色の毛を生やした巨大熊だった。今まで私が戦った熊よりも、倍以上のデカさだ。こいつの攻撃を喰らったら、確実に大きな怪我を負う! 私はそう思い、魔力を解放した。だが、そいつはその前に私に突進した。
「ガハッ!」
強烈な突進だった。突進を受けた私は地面に転がり、しばらく痛みで立ち上がることができなかった。そんな中、金色の熊は声を上げ、私に向かって接近して右腕を振り下ろした。攻撃させるかと私は思いながら、風の刃を放って反撃を行った。だが、風の刃は奴の体に当たって消滅してしまった。まさか、金色の毛は魔力を通さないほどの防御力があるのか! そう思った直後、奴の攻撃が私の脇腹に命中した。
「ガァァァァ!」
深い傷だ! 脇腹から熱を感じる。血がかなり流れているようだ。私は魔力を解放し、金色の熊を追い払った。奴は私の魔力を感じ、怯えるように逃げて行った。防御力は高くても、魔力に対しては弱いのか。次にあいつとあったら、強い魔力を使って戦おう。そう考えながら、私は魔力で無理矢理傷を抑え、小屋の中に戻った。
小屋に戻った直後、私はその場に倒れた。魔力が消えた瞬間、再び血が流れ始めた。とにかく血を止めないと。失血死してしまう。私は魔力を使って血を止めようとしたのだが、激痛が体中を駆け巡り、まともに腕を動かすことができなかった。動かない腕、流れる血。ああ、私はここで死ぬのかと思ったが、その時にティノちゃんの顔が頭に浮かんだ。それから、私たちと縁があったギルドの戦士たちの顔が浮かび、最後にヴァーギンさんの姿が浮かんだ。そうだ。私は強くなるためにこの修行を始めたんだ。こんな所で死んでたまるか。そう思い、気合で腕を動かして魔力を解放し、血を止めた。
さて……血を止めたのはいいけれど、ほっておいたら血はまた出る。次にするのは魔力で傷の消毒。そして、傷を塞ぐことだ。私は治癒法で習った消毒のやり方で、傷に触れた。
「あああああ!」
悲鳴が出るほどかなり痛い。だが、これをしなければ菌が体の中に入ってとんでもないことになる。治療しなければいけないのだ。私は何とか我慢し、消毒を終えた。さて、次は傷を縫わないと。魔力で糸と針を作り、傷の手当てを行った。針が体を貫く痛みはあまり感じなかった。傷を受けた時と消毒をした時の痛みが強かったため、感覚が少し麻痺しているようだ。
「ふ……ふぅ……」
とりあえず手当は終わった。だが、まだ体が動かない。しばらく安静しなければいけないようだ。修行が終わるまで、私はあと何回大きな傷を受けるのだろうか?
今頃エクスはどんな修行をしているのだろうか? 俺はあの時の修行を思い出しながらこう考えていた。幼いながらも、俺はあの森で剣を使って生きてきた。そして、生き抜く知恵も、生き抜くための根性を手に入れた。エクスがこの修行でそれらを得れば、確実に強くなれる。俺はそう思っていた。
「ヴァーギン。暇じゃから何か話せ」
いきなり師匠に無茶ぶりをされた。俺はため息を吐きながら、こう言った。
(話すネタがありません。それか、エクスの活躍話でも聞きますか?)
「そうじゃの。メディアの胡散臭い連中から語られるのは一部。本当の活躍を知りたいのう。早く話せ」
とりあえず、話をするだけでそれなりに時間を潰すことはできそうだ。俺もしばらくは、師匠と共に過ごすことにしよう。
この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!




