表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/149

ヴァーギンの師匠


 修行のために剣聖の森にきたのはいいけれど、この森に生息する狼たちに襲われた。しかも、こいつらは勘がいいのか、私の攻撃をよくかわす。これだけ頭のいい狼がいるなんて思いもしなかった。


「エクスさん、誰かが来ます!」


 と、ティノちゃんがバリアを張りながらこう言った。一体誰? こんな状況で誰が来るってのよ!


 そう思っている中、ティノちゃんが張っているバリアが音を立てて破裂した。それを見たティノちゃんは驚く顔をしており、私も嘘でしょと思いながらその場で立ち尽くしていた。そんな中、狼が私に向かって襲い掛かって来た。その寸前に私は我に戻り、力を込めて剣を横に振るった。だが、奴らは攻撃に勘づいて後ろに飛び上がって攻撃をかわした。


「クッ……強すぎる」


「何なんですか……こいつらの異常な強さは? 勘は鋭い、攻撃力は高い。ただの狼じゃありませんよ」


 私とティノちゃんが苦戦していると、謎の魔力が近付いて来た。目の前に着地したのは七十ぐらいのおじいちゃん。そのおじいちゃんはあくびをしながら狼の前に歩いた。


「おい、可愛げのないわんこ共よ。レディーには優しくしろい。激しくするのはベッドの上だけで十分じゃ」


 このおじいちゃん、最後の一言にとんでもないことを言い放った。だが、この時のおじいちゃんから感じる魔力に似たオーラを私は感じた。そのオーラを狼たちも感じ取ったのか、一目散に逃げて行った。


「ふぃー、ジャッジメントライトを斬りまくる女剣士で有名なエクス・シルバハートも、この森に住む狼相手には少し荷が重かったようじゃの」


 このおじいちゃんは私のことを知っているようだ。見た感じ仙人みたいなおじいちゃんだけど、かなり強い魔力を感じる。このおじいちゃん、ただの人じゃない。


「助けてくれてありがとうございます。私がエクス・シルバハートです。あなたは一体何者ですか?」


「この森の主じゃよ。わしの名はラゴン。ま、こんな所で立ち話はしたくないから、わしの住処へご案内しよう」


 そう言って、ラゴンさんは歩き出した。とりあえず、剣聖の森の主と言ったから、何かこの森に関して知っているのだろう。そう思いながら、私はラゴンさんの後を付いて行った。




 ラゴンさんの家は小さな小屋だった。だが、煙突やトイレもあるようだし、それなりに生活基準は満たしているようだ。


「一人でこの森に住んでいるんですか?」


「まーの。森にはいろいろある。腹が減ったら狩りで肉を取り、寒くなったら獲物の皮で服を作り、のどの渇きには川から流れる水をろ過すれば大丈夫じゃ。さ、家におあがり」


 と言って、ラゴンさんは私とティノちゃんを小屋に入れた。中を見て、私は驚いた。新築のようにピカピカだったからだ。森の中とはいえ、テレビや冷蔵庫、洗濯機も置いてあった。


「電機は通っているんですか?」


「わしは魔力を極めた。だから自家発電。金もかからないし、結構便利じゃよ」


 ラゴンさんは笑いながらこう言った。その時、ティノちゃんが驚く声を上げた。私はティノちゃんに近付いた。ティノちゃんは、ある写真を見て驚いたようだ。


「これって、ヴァーギンさんですよね? 生前の姿、雑誌の写真で見たことがあります!」


 写真立てを見て、私も驚きの声を上げた。そこには、ヴァーギンさんとラゴンさんの姿が映っていたからだ。驚く私とティノちゃんに近付き、ラゴンさんがこう言った。


「驚いたか? こー見えて、わしはあの英雄ヴァーギンを鍛えたジジイなのじゃ」


 この言葉を聞き、私はラゴンさんがどれだけ強いか把握した。そんな中、ティノちゃんがあることを思い出したかのようにこう言った。


「今思い出したんですけど。昨日、どこにいましたか?」


 何でこんなことを聞くんだろうと思ったけど、私も昨日のことを思い出した。あれは、お風呂に入っていた時のことだ。かすかに声が聞こえたが、忘れないように脳裏に焼き付けている。


「昨日? はて? 一体何のことか分からんのー」


「エクスさんの体はどうでしたか?」


「ええ乳じゃったのー」


 ここでようやく理解した。昨日の覗きの犯人はこの人だってことを!


「いろいろと話をする前に、ボコボコにしてもいいでしょうか?」


「私も手を貸すわ。ティノちゃん」


 私とティノちゃんは怒りのオーラを発しながら、エロジジイに近付いた。エロジジイは慌てもせず、後ろに下がっていた。


「露天風呂に入るからそうなると思うよ。わしは。ええ体の子を見たら、誰だって覗きたくなる」


「しょーもない言い訳をしないでください」


「大丈夫じゃよ。わし、ボインには興味あるけど、子供のようなペッタンコの胸を見て興奮しないから」


「一度あの世へ送ってあげますよ!」


 ティノちゃんは怒りを爆発させながら叫んだ。




 はぁ……相変わらず師匠は変わっていない。エクスとティノが覗かれたって言って叫んだ時、俺は師匠が原因だと把握した。あの人、若い美人が村に来たら必ず覗きに行っていたからな。スケベなのは変わりないか。バカは死んでも治らないと聞いたが、スケベも死んでも治らないのだろう。


「おいおい、ちょっと待ちたまえ! 君たちがここに来たのは修行のためじゃろ?」


 師匠は慌てながら怒りで暴走する二人にこう言った。修行の言葉を聞き、二人は少しだけ我に戻った。


「確かにそうですが、その前に一発殴らせてください」


「勘弁してください! 謝ったから許してちょーだい!」


「許しません」


 ティノは指を鳴らしながら師匠に近付いた。師匠はため息を吐きながら、二人にこう言った。


「とりあえず落ち着いて。出来ないならわしがやって差し上げよう。さて、ここかな?」


 と言って、師匠は二人の胸を触った。この人、一度死なないとスケベ癖は治らないな。


 数分後、二人の手によって半殺しにされた師匠は、正座をしながら二人に修行のことについて話をしていた。


「この森での修業は、生き抜くことじゃ」


「生き抜く?」


 エクスがこう聞くと、師匠は頷いて言葉を続けた。


「そうじゃ。この世界を生き抜くには力が必要じゃ。力がなければ手に入れればいい。ならどうする? 鍛えるしかない」


「鍛えるってどうやって?」


「まぁ慌てるなエクスちゃん。またモミモミしちゃうよ~」


「今度やったらその両手を斬り落とします」


 エクスが剣を抜いたため、師匠は慌てて土下座した。


「冗談言ってすんません。ま、修行の内容はわしが用意した小屋で生活することじゃ」


「え? それだけですか?」


 ティノは目を開けて驚いた。確かに、修行と言えばかなり厳しい物を想像する。だが、師匠の修行は聞いただけでは簡単に思える。だが、実際にやればどれだけきついかよく分る。


「それだけじゃ。生き抜くことが修行になり、力を得ることができる」


 師匠はそう言って、近くに置いてあったエロ本を読み始めた。まーたこの人はエロ本を通信販売で買って……しかも女子二人の前で堂々と読むとは。


「で、どうするの? やるの? やらないの?」


 師匠の問いに対し、エクスはすぐに口を開いた。


「やります。あなたの修行を受けます」


「よろしい」


 師匠はにやりと笑うと、読んでいたエロ本を閉じて床の上に置き、エクスに地図を渡した。


「この小屋から北に向かうと、小さい掘っ立て小屋がある。じゃが、わしが修行者のために掃除はしてある。風呂もトイレもあるからその辺は安心しろ」


「食事は?」


「自分で調達しろ。もちろん、わしは手を貸さんぞ」


「結構。あなたの言う修行がどんなのか分かりました」


「理解が早くて助かる。それと、武器は自分でどうにかしろ」


「武器は貸してくれないのですね。了解です」


 エクスはいろいろと理解したようだ。師匠の言う生き抜く修行は、恐ろしく強いモンスターがいる中でのサバイバル生活。生きるためにモンスターと戦い、皮を剥ぎ、肉を食べる。俺もこの修行を長年経験し、強さを得た。エクスがこの修行を受け、どれだけ強くなるか少し楽しくなってきた。


 この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします! 感想と質問も待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ