ジャッジメントライトの更なる計画
あいつらは一体何を企んでいるのだろう? 私はそう思いながら、ジャッジメントライトの戦士がいる取調室へ向かった。私が取調室へ入ると、部屋の中央には上を向き、よだれを垂らしているジャッジメントライトの戦士が座っていた。
「エクスさん、お疲れ様です」
と、取調官が私に挨拶をした。私はジャッジメントライトの戦士を見て、小さくため息を吐いてこう言った。
「きつい自白剤を使ったのね」
「そうです。今回は大きな事件となったので、上の方から確実にあらゆる情報を手に入れろと言われましたので。使わざるを得なかったのです」
「ベトベムもやられて、ギルドも大変な目にあったから、上の連中は腹が立っているのね。気持ちは分かるけど……あれじゃあ話を聞けないわ」
私がこう言うと、もう一人の取調官が私を呼んだ。私はその取調官の近くにより、話をした。
「何かあるの?」
「取り調べを撮った映像があります。どうぞ」
そう言って、私に取り調べの映像を流した。映像には、無理矢理自白剤を飲まされるジャッジメントライトの戦士が映っていた。しばらくすると、自白剤の効果が効いたのか、ジャッジメントライトの戦士はボーっとした。それから、ありとあらゆる質問を聞かれ、それに答えて行った。そして、その中にこんなのがあった。
「ジャッジメントライトは、薬やいろんなものを利用して……改造戦士を作るつもりです……エクス・シルバハートによって、我々の仲間は斬られ、捕らえられました。その穴埋めをするためです……」
アソパが言ったことと同じだ。私が奴らを斬りまくった結果、大きな穴が開いたのだろう。それを埋めるため、ジャッジメントライトの戦士を改造して強くするのだろう。にしても、とんでもないやり方だ。どうしてこんな考え方に至ったのかも気になるが、人のやることじゃない。
「アソパが去り際に言っていた言葉とほぼ同じです。ですが、一体どうやって戦士を改造するんでしょう?」
「薬物と言っていましたね。もしかしたら……」
取調官はそう言うと、部屋から出て行った。数分後、戻って来た取調官は分厚い植物図鑑を手にしていた。うわー、あんな分厚い本を読めって言われたら嫌だな。数ページ読んだら眠ってしまいそうだ。
「この図鑑に載っていました。実は、筋肉や骨などを無理矢理強化させる……ドーピングのような成分を持った危険な薬草があるんです」
危険な薬草か。まるで麻薬みたいな違法薬物だ。違法薬物……薬物……その瞬間、私はあることを思い出し、タブレットを取り出した。
「どうかしたんですか、エクスさん?」
ティノちゃんが私にこう聞いた。私はティノちゃんの方を向いて、タブレットの画面を見せた。
「ウラガネのことを思い出して。あいつはジャッジメントライトの話に乗って、ゴクラクキブンを取りに私の故郷の近くの森に行ったわ。ただ儲けるためにゴクラクキブンを取りに行かせたと思ったけど、まだあの森には分からないことがあるの。もしかしたらと思ったら……やはり私の勘は当たったわ」
私のタブレットには、ファストの村の近くの禁足地の森が映っている。私は画面を操作し、森の中を見回した。その時、図鑑を開いていた取調官が声を出した。
「あ! これです。私が言いたかったのはこの薬草です! ストッパーブレイク。使えば全身の筋肉が倍以上に膨れ上がると言われる薬草です。以前、これを使って捕まったスポーツマンもいます。ドーピングとしても使われましたが、中毒性も強いため、麻薬として指定されました。今では、持っていても犯罪となります」
「説明ありがとうございます。あいつらはゴクラクキブンを取りに行ったのと同時に、ストッパーブレイクも採取しに来たようね。それか、ストッパーブレイクの有無を調べてたかもしれないわ」
ウラガネの行動に納得した。ゴクラクキブンを取りに向かうついでに、ストッパーブレイクのことを調べようとしていた。あるいは、指示された。あの時はゴクラクキブンのことしか言わなかったけど、これに関しての情報は漏らすなと言われ、話さなかったのだろう。まぁ、エルラの奴によってウラガネは殺されたけど。
「今後の奴らの動きが分かりましたね」
ティノちゃんが私の方を向いてこう言った。確かに奴らの次の行動は分かった。だけど、ファストに戻って奴らを捕まえようとしても無駄だ。私たちは気付くのが遅すぎた。今更ファストに戻っても、もう奴らがストッパーブレイクを必要分手に入れているだろう。
「いろいろと考えることが必要ね……ティノちゃん、一度部屋に戻りましょう」
「はい」
会話を終えた後、私はティノちゃんと共に自室へ戻って行った。
奴らの次の目的は分かった。多分、もうストッパーブレイクを使った改造戦士の計画は動いているだろう。このまま奴らを倒したいけれど……今、アソパに戦いを挑んでも負ける。あの時は連戦だったから、疲れなどで本気を出せなかったけど、あの時の奴も本気を出していなかった。私が本気を出しても、奴には敵わない。
(かなり考えている様子だな)
と、ヴァーギンさんが話しかけてきた。
(ええ。大きな壁にぶち当たりましたよ。今頃、奴らはストッパーブレイクを使った計画を動かしていると思います。今、ファストに戻っても無駄でしょう。アソパが去り際に言った言葉を聞く限り、もう必要分のストッパーブレイクを採取した可能性が高いです。それと、アソパにリベンジをけしかけても、確実に私は負けます。あいつは私より強いです)
(俺もそう思う。奴らの計画が進んでしまうが、俺にある考えがある)
(何ですか?)
(もう一度修行し直すか?)
この言葉を聞き、私は少し考えた。半年間の修行で、私はかなり強くなった。もう半年修行すれば、アソパより強くなれるのだろうか?
(その必要があるかもしれません。また半年間、修行します)
(いや、あの時の修行はどっちかと言うと、肉体面と精神面の修行だ。そのおかげでお前の才能が花咲いたが、今必要なのは強くなることだ)
(どこかいい場所があるんですか?)
(ああ。とっておきの場所がある)
ヴァーギンさんはそう言うと、少し間を開けて何か言おうとした。その時、私の腹の音が鳴り響いた。
(変なタイミングで腹を鳴らすな……)
(エヘヘ……お腹空いていたんで、すみません)
(そう言えば、戦いが終わったら何も食べていないな。少し休んだ後でもう一度話をしよう。それと、ティノにも今後のことを伝えたい)
(分かりました。ティノちゃんにも伝えておきます)
私はそう言った後、立ち上がってキッチンへ向かった。
私がキッチンへ向かうと、私の姿を見たギルドの戦士たちが一斉に駆け寄った。
「お疲れ様ですエクスさん!」
「あなたのおかげで、ベトベムを襲ったジャッジメントライトを追い払うことができました!」
「あなたがいなかったら、ベトベムは滅んでいました!」
などと、私を褒め称える言葉を放ってきた。皆は騒動が終わったことでほっとしているようだが、私はため息を吐いた。
「あまり嬉しそうに言わないで。私は上空でジャッジメントライトの幹部と戦った。それで、勝てないと思って逃げて来たのよ。勝った気はしないわ」
ジャッジメントライトの幹部、アソパと戦ったことを知ったギルドの戦士たちは、目を開けて驚いていた。
「ジャッジメントライトの幹部? 来ていたのか?」
「まさか、エクスさんでも敵わなかったのか?」
「どんだけ強い奴なのだろう? 出会いたくないな」
などと、ギルドの戦士たちはこう言っていた。そんな中、一人のギルドの戦士がこう言った。
「でもエクスさん。逃げることは恥ではありませんよ。命が一番大事なんですから」
その言葉を聞き、私は安堵の息を吐き、その戦士にこう言った。
「ありがとう。その言葉を聞いただけで、救われたわ」
私はそう言うと、皆にいろいろと話をして先に席に座っているティノちゃんの元へ向かった。
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