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ロツモの弱点


 アソパの部下、ロツモはかなり強い。ティノちゃんが来てくれたのはいいけれど、二対一で戦ってもかなり苦戦するだろう。


 だけど、私はあることを察した。奴の腕に攻撃を仕掛けてもダメージはなかったが、奴の体に攻撃を仕掛けたらダメージは通った。傷はでき、そこから血が流れる。奴は血を見て一時感情的になったからだ。


「ティノちゃん、魔力を使って奴の動きを封じることができる?」


「できても、数秒だけ」


「その数秒で十分。私が前に出て奴と戦うから、隙を見て何でもいいから奴の動きを封じて」


「分かりました。気を付けてください」


 ティノちゃんはそう答えると、杖を構えた。私が何を考えているか多分把握しているのだろう。私はヴァーギンさんを持ち、奴に向かって走り出した。


「まだ来ますか、エクス・シルバハート! これ以上私と戦っても、勝機はありませんよ!」


「やっぱりあんたの脳みそは筋肉でできているわね! こっちは攻略の糸口を見つけたわ!」


「私の体は無敵です! 誰がどんなことをしたって絶対に敵わない!」


 奴は自分の筋肉に相当な自信を持っているようだ。その自信を失わせてやる!


 私は魔力を解放し、ヴァーギンさんに込めた。


(おおっ! エクスの魔力が俺の体内に! 強い魔力だ!)


(奴の攻撃を受け止めます。ヴァーギンさん、踏ん張ってください)


(任された! どんどん俺に頼れ!)


 ヴァーギンさんの言葉に甘えて、どんどん甘えることにしよう。私は何度も奴の攻撃を受け止め、隙を見ては攻撃を仕掛けた。


「フッフー。いきなり攻撃を仕掛けてきましたね。何か考えているんですか?」


「敵に何を考えているか話すわけがないじゃん」


「それもそうですね」


 奴は剣を振り、私に攻撃を仕掛けた。私はヴァーギンさんを使って奴の攻撃を流し、隙だらけの奴の腹にヴァーギンさんを突き刺した。


「グウッ!」


 やはり予想通り、奴の胴体にはダメージが通る。痛そうな顔をしているぞ。


「腕ばっかり鍛えたから、お腹が緩いわね」


「それなりに鍛えたはずなのだが……体の構造上、あまり防御力はなかったようですね……」


「そりゃー残念だったわね!」


 私は力を込めてヴァーギンさんを奴の胴体に向けて振り下ろした。奴は私の攻撃を受け止め、反撃をしようとした。だがその時、ティノちゃんが魔力を放った。


「なっ! 足が!」


 奴の足元から氷の手が伸び、奴の足を掴んだ。


「今のうち!」


 奴を倒すなら今だ。そう思った私は魔力と力を込め、ヴァーギンさんを振り下ろした。




 奴の弱点が分かった今、奴を倒すのは簡単だろう。エクスの一閃を浴びた奴は苦しそうな表情をした。だが、奴の傷口から流れる血は少量。まだ倒れるほどのダメージを奴は負っていない。


「流石ですよ……エクス・シルバハート……ですが、私もアソパさんに信頼されているので、倒れるわけにはいかないのです!」


 奴はそう言って、魔力を解放した。エクスが放った一閃による傷も、少しずつ治って行く。クソッ! 滅茶苦茶な奴だ!


「私もそうよ。あんたみたいな奴を放置していたら、大変なことになるからね!」


 エクスもそう言い返し、魔力を解放した。それから、二人は再び激しい斬撃を放ち始めた。ティノはこの様子を見ているが、微動だにしない。きっと、隙を見て奴の動きを封じるのだろう。同じ手が二度も通じればいいが。


 しばらく二人の斬り合いは続いた。いつまで斬り合いが続くのだろうと俺が思っていると、突如ヘリコプターが大きく動いた。


「おわっ!」


「ええっ!」


「きゃあっ!」


 突如動いたため、俺たちは驚きの声を上げ、体勢を崩した。そんな中、ヘリのパイロットの声が聞こえた。


「すみません! 急に強風が発生したので、ヘリを動かしました!」


 そうか、イレギュラーなことが起きたからパイロットはその対応をしていたのか。上に俺たちがいるから、相当焦っているのだろう。だが、エクスはにやりと笑っていた。


「ティノちゃん、危険だから戻ってて」


「え? は……はい」


 何かを察したのか、ティノは急いでヘリの中に戻って行った。奴は戻るティノを見て、追いかけようとしたのだが、エクスが奴を引き留めた。


「あんたの喧嘩相手は私。ティノちゃんを追いたかったら、私を倒してからにしなさい」


「ならその言葉通り、お前を倒してからティノ・オーダラビトを追いかけよう!」


 エクスの言葉を受け、奴はエクスを倒そうと考えている。再び二人は斬り合いを始めたが、エクスは何を企んでいるんだ? 何か策でも浮かんだのか?


「パイロットさん! 機体を大きく動かしてください!」


「え? えええええ!」


 エクスの声を聞いたパイロットの声が聞こえた。この状況でヘリコプターを大きく動かすだと? 下手したら落ちてしまうぞ!


「い……いいんですか?」


「大丈夫! 早く!」


 エクスは奴との斬り合いをしながらこう言った。その後、ヘリのパイロットはエクスに言われた通りにヘリを大きく動かした。機体の中にいるティノたちの悲鳴が聞こえる。そして、ロツモも体勢を崩した。


「うおっ! あなたは一体……何をしでかすつもりなんですか? 死ぬつもりですか?」


 体勢を崩したロツモはエクスにこう言った。だが、俺を構えるエクスを見て、奴は驚いた顔をした。


「隙あり」


 エクスはそう言って、力を込めて俺を振り下ろした。




 イレギュラーなことが起きたけど、それがきっかけで奴に大ダメージを与えることができた。どんな強い奴でも、急に足場が動いたら焦って体勢を崩す。私も最初、ヘリが動いた時は驚いたけど、二度目はそうでもない。足元に魔力を発してヘリにくっつくようにすれば体勢を崩すことはない。脳筋野郎はそこまで考えが浮かばなかったようだ。


「がはっ……」


 奴は口から血を吐いた。当然だ。奴の体に深い一閃を与えたからだ。攻撃を受けた奴の体は、急にしぼみ始めた。


(ガスが抜けた風船のようにしぼみますね)


(もしかしたら、魔力を使って筋肉を強化、肥大化していたようだな。強烈な一閃を浴び、それがきっかけで操作していた魔力が消えたのだろう)


(魔力を使って、自分を大きく見せていたのね。変なことをする人ですね)


(ああ。だが、奴は強かった)


(はい。今後、似たような奴が出てくるかもしれませんね)


 私とヴァーギンさんは、倒れる奴を見てこう会話をしていた。だが、突如奴が動き出し、血を流しながら立ち上がった。


「あら。根性あるわね。でも、あんたがどうして筋肉モリモリマッチョマンの変態になったのか、そのトリックを見破ったわ」


「確かにそのようだな。だが、勝負は終わっていませんよ」


 奴はそう言うと、再び魔力を解放して体を肥大化させた。奴からはまだ強い魔力を感じる。体を肥大化させるのに大量の魔力を使ったはずなのに、まだ魔力が残っているのか。


「私はまだ戦えます。魔力も十分に残っています。今のあなたには私と戦う気力、体力、魔力はありますか?」


「それなりにね。でも、いい加減倒れたら? さっきの傷、治ってないわよ」


 私は奴の腹から流れる血を見てこう言った。それを見た奴は、また感情的になった。


「また私の体から血が流れてる! この美しい体にまた血が流れてる! うわぁぁぁぁぁぁぁん!」


(あいつ、自分の体に傷が付いて血が流れたら暴走するようだな)


(やっぱりヴァーギンさんもそう思いますか。たちが悪い奴ですね、本当に)


 私とヴァーギンさんは感情的になり、暴走する奴を見てこう言った。だが、このおかげで奴は魔力を使って怪我を治癒することはしないだろう。倒すとしたら、今しかない。


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