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多勢に無勢というが


 アソパの部下、ロツモは私が予想したよりも強い。とんでもない強さだ! ヴァーギンさんを振り下ろして攻撃しても、途中で攻撃が止まってしまった。奴の筋肉が発達しているという証拠か。それと、奴は剣と火の魔力を使って戦う。それも、かなりの腕前だ。


「さぁ、あなたをここで殺してあげますよ!」


 私を見ながら奴は突進してきた。奴の体には、まだヴァーギンさんがめり込んだままの状態だ。私は奴が接近したのを見計らい、奴の体にめり込んでいるヴァーギンさんに触れ、無理矢理引き抜いた。


「うわぁお! 酷いことをしますねー」


 ヴァーギンさんを引き抜いた際、奴はそれなりにダメージを負ったようだ。だが、わざとふざけたようなことを口走っているため、本当にダメージを負ったのかどうか分からない。それに、血も出ていない。


「さて、これ以上私を怒らせない方がいいですよ。さっさと私に殺されなさい」


「あんたみたいな筋肉ダルマに殺されてたまるか!」


 私は奴を見て叫んだ。奴は剣を振り上げ、私に接近してきた。奴が放った一撃は、かなり強力だろう。これを受け止めるのはまずいと判断した私はバリアを発して奴の攻撃を防御した。


「んぐっ! ふぅ。とんでもなく硬いバリアを張りますねぇ」


 奴は私が張ったバリアを見て、嬉しそうにこう言った。そして、何度も剣を振り下ろし、私のバリアを壊そうとした。


「硬いバリアを見ると、壊したくなるのです。さぁ、ガンガン叩いて壊してあげましょうねぇ!」


「やれるものならやってみなさい!」


 私はバリアに攻撃を加える奴を見ながら、バリアを放った。突如飛んで来たバリアを見た奴は、剣を使ってバリアを粉砕した。奴がよそ見をしているうちに、私は奴の背後に回ってヴァーギンさんを突き刺した。


「ん? 後ろに回ったのですか。剣で突かれても痛くはないですよ~」


「だったらこれなら!」


 私は魔力を解放し、素早く何度もヴァーギンさんを振るった。その結果、奴の衣服がはだけた。奴の上半身は予想通りかなりの筋肉量だった。まるで鎧みたいだ。これなら、いくら私が攻撃を仕掛けても効かないはずだ。


「ん~。天空の風が気持ちいいですね~。あなたもセクシーな格好になって、全身で風を浴びませんか?」


「風邪ひくから嫌。そして、あんたみたいなゴリラに私の綺麗な体を見せるわけにはいかないわ。この変態野郎、さっさと斬ってやるからそこでじっとしてなさい」


「それはお断りします。長年鍛えてこの素晴らしい筋肉を手に入れたのです。そう簡単に手放すわけにはいきませんねぇ」


 奴はそう言うと、クラウチングスタートの構えを取った。一気に私に接近するつもりか! 私はいつ、奴の攻撃が来てもいいように身構えた。


「では参りますよ!」


 この言葉と同時に、奴は猛スピードで私に接近した。物凄い速さだ。私は奴が走り出した瞬間を見逃してしまった。気が付いた時には、目の前にいた。


「隙あり」


 と言って、奴は私の首に向かって剣を振り下ろそうとした。だが、この攻撃前に我に戻った私は攻撃を予測して素早くしゃがみ、奴の攻撃をかわした。


「あらら? 私の攻撃がかわされるなんて」


「体も筋肉まみれ。あんたの脳みそも筋肉まみれじゃないの?」


 私は飛び上がると同時に、奴に向かってヴァーギンさんを振り上げた。勢いを付けたため、それなりに威力が上がっているはずだ。


「うあっ!」


 よし。攻撃を受けた奴は後ろに下がった。攻撃が入った場所は奴の右胸から右の頬にかけて。さっきとは違って血が流れている。


「グッ……私の体に傷が……傷が……」


 自分の体から流れる血を見た奴は、酷く動揺している素振りを見せた。傷を受けたことを知って相当ショックを受けているようだが、そんなこと知ったことではない。奴を倒すためなら、腕だろうが足だろうが何だろうが斬ってやる! そう思い、私は追撃をするため移動した。その時だった。


(気を付けろ! 奴の体から異様な魔力を感じる!)


 突如、ヴァーギンさんがこう叫んだのだ。私は足を止め、奴の様子を見た。ヴァーギンさんの言う通り、奴の体からさっきよりも以上に強い魔力を感じた。


「傷が付いちゃった……この美しい体に傷が……ああ……あああああ!」


 その後、奴は大声で泣き始めた。まるで、大きな子供が泣いているかのようだ。ヘリのプロペラの音が周囲に響いているのだが、奴の声はそれよりも大きかった。


「ああああああああああん! 傷が付いちゃったよォォォォォ! これじゃあ美しくないよォォォォォ! うあああああん! うわあああああん!」


 何なのこいつ? 自分の体から血が流れただけでこんなにショックを受ける? 戦う以上、何かしら傷を受けて血が流れるのが当然だと思うんだけど! それよりも、あのうるさいのをどうにかしないと! 私は魔力を解放し、奴に接近してヴァーギンさんを横に振るった。


「お前……お前! よくも私の美しい体に傷を付け! 血を流させたな! 絶対に……絶対に絶対にぜェェェェェったいに許さないぞ!」


「子供みたいないことを言うわね。あんた、年齢いくつよ?」


「私は三十九歳だ!」


 私の質問に答えながら、奴は私に向かって剣を振るった。私も剣を振るっていたのだが、奴は力任せで剣を振り、その際に発した衝撃波で私を吹き飛ばした。


「な……」


(嘘だろ)


 私とヴァーギンさんは驚いた表情をした。高く飛び上がった私の体は、外に飛び出そうとしていた。


「これでお別れだ! 空の上で死ぬがいい、エクス・シルバハート!」


 奴がとてつもなくいい笑顔で私に向かってこう言った。この野郎と思ったが、このままでは飛ばされてしまう。そう思った時、突如巨大なスライムで作られた手が現れ、私を受け止めた。


「何!」


 驚く奴が上から見える。その後、無数の風と雷が奴を襲った。


「エクスさん! お待たせしました、援護に入ります!」


 どうやら、自分の仕事を終えたティノちゃんが援護に来てくれたようだ。よかった……ナイスタイミングだ。


「ありがとうティノちゃん。本当に助かったわ」


「エクスさんがここまでやられるのは初めて見ました。奴は相当強いんですね」


「あいつはアソパの部下、ロツモよ。かなり強いから腹をくくって」


「はい」


 私とティノちゃんは立ち上がるロツモを見て、魔力を解放した。




 ティノが援護に来てくれた。だが、この状況を覆すことができるかどうか分からない。ロツモはかなり強い。脳筋野郎だが、奴にはどんな状況でもごり押しで何ともなる力を持っている。剣で攻撃しても、魔力で攻撃しても大したダメージを与えられないだろう。


「はぁっ!」


 エクスが前に立ち、奴に向かって何度も剣を振るっている。ティノはエクスの隙をカバーするかのように、火の刃を放って攻撃をしている。だが、二人の息の合った攻撃を受けても奴はぴんぴんしている。


「二対一ですか。いいですよ。憎いあなた方を同時に始末するチャンスですからねぇ!」


 奴はそう言って、大きな左腕でエクスを捕らえようとした。その時、エクスは下から俺を振るい、奴の右腕に攻撃を仕掛けた。だが、この一撃は奴の右腕の筋肉によって塞がれた。


「フッフッフ。攻撃は効かないですよ」


「グッ!」


「エクスさん、魔力を発して防御してください!」


 ティノはそう言うと、小さな火の玉を奴に向けて放った。それを見た奴はバカにしていると思わせるような顔をしているが、その小さな火の玉は大きな音を立てて破裂した。


「うぉっ!」


「くっ!」


 この破裂の衝撃で、エクスは俺を握ったまま後ろに下がることができた。ティノはこれを狙ったのだろう。


「大丈夫ですかエクスさん?」


「何とかね。ティノちゃんも荒業のやり方を学んできたね」


「えへへ……まぁ」


「おっと、喜んでいる場合じゃないわよ。あいつが迫って来る」


 エクスは前を見て、まだ俺たちに挑もうとしているロツモを睨んだ。こいつに弱点はあるのか?


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