現れたのはあいつの部下
大きなヘリが現れた。その中から、他のジャッジメントライトの戦士とは比べ物にならないほど強い魔力を感じる。最初から全力で戦わないと勝てないと思わせるほど、中にいる奴は強い。
しばらく様子を見ていると、大きなヘリは私たちに近付いた。そして扉が開き、中にいる奴が姿を現した。
「どうもこんにちは。あなたがエクス・シルバハートのようですね」
中にいる奴は私に向かって礼儀正しく、頭を下げながらこう言った。私は奴を睨みながらヴァーギンさんを構えたが、奴は驚いた表情をしてこう言った。
「いきなり敵意を向けるのは止めてくださいな。驚いたではありませんか」
「ジャッジメントライトは私の敵よ。敵に敵意を向けて何が悪いの?」
「いやはや、噂通りの狂戦士ですね、あなたは」
奴は咳ばらいをし、私の方を見て再び口を開いた。
「私はロツモ。アソパさんの部下でございます」
「アソパの……」
いきなり大物の部下が現れるなんて思いもしなかった。こいつを倒せば、アソパの情報を得ることができる! そう思った私は大きく飛び上がり、奴に飛び蹴りを喰らわせた。だが、奴は私の飛び蹴りを防御しつつ、後ろに下がった。
「剣士のくせに飛び蹴りを使うこともあるという話も聞いています。いろいろとぶっ飛んだ人ですねぇ」
「あんたより頭のネジはぶっ飛んでないわよ!」
私は奴に攻撃しつつ、大きなヘリの中に入ることに成功した。中は戦えるほど広い。これなら派手に暴れても大丈夫だ。私はヴァーギンさんを持って奴に斬りかかったが、奴は持っていた剣を構えずため息を吐いていた。
「血気盛んな方だ。私はまだ準備運動をしていないというのに」
「早くやっておけばよかったじゃないの」
私はそう言いながら、奴に斬りかかった。奴は攻撃をかわしているが、反撃する様子を見せなかった。
「はぁ……無礼な方ですねぇ。私はあなたと戦いに来たわけではないのに」
「ベトベムに攻撃を仕掛けに来たの?」
「その通りです。ベトベムは他の地域と比べ、いろいろと発達している都市です。この町を中心とし、広がるように各町が発達していきます。だけど、我々ジャッジメントライトはそれ以上世界が活性化することを拒んでいます」
「知らないわよそんなこと。あんたらがどう望もうが、世界がその通りに動くわけないじゃない」
「その通りです。だから、我々は自分たちの手で世界を思い通りに動かそうとしています。話がそれました。活性化すると、新しい武器も出てきます。それに伴い、ギルドや軍の力も上がります。我々の邪魔をしに来るのは目に見えています。だから、早いうちに芽を摘みに来たのです」
「よーするに、今後自分たちが動きにくくなるから、早いうちにベトベムを潰して活性化を阻止したいってわけね!」
「その通りです。世界の中央と言われるこの町が攻撃され、破壊されたらジャッジメントライトにとっても嬉しいことですし」
奴は笑顔でこう言った。とにかく、ギルドや軍の力が上がる前に奴らはベトベムを潰すつもりなのか。そうはさせるか! 私は叫びながら奴に向かってヴァーギンさんを振り下ろした。だが、奴は剣を取り、攻撃を防いだ。
「なっ!」
(俺の一撃が届かないだと!)
私とヴァーギンさんは、攻撃を防御されたことに驚いた。剣となったヴァーギンさんの切れ味は、他の剣と比べてかなりいい方だ。普通の剣の刃も切れてしまうほどだ。だが、奴の剣を斬ることはできなかった。
「すごくいい剣ですね。ですが、私の剣に比べたら威力が劣りますが」
奴はヴァーギンさんの刃を見て、うっとりしながらこう言った。まずい、何かされると思った私は後ろに下がり、奴の様子を見た。
「あなたの方から売って来た喧嘩ではありませんか。逃げないでくださいよ」
奴はそう言って、私に斬りかかった。攻撃をかわしたのだが、奴が放った剣の風圧がとてつもなく強く、私はギルドのヘリの上に吹き飛ばされてしまった。
(エクス、大丈夫か!)
(ええ……何とか)
立ち上がった私は、ギルドのヘリの上に移動するロツモを睨みながらヴァーギンさんを構えた。
「もう一度攻撃するつもりですか?」
「あんたを倒すまで攻撃するつもり」
私はそう言って、ジグザグと走りながら奴に接近した。そして、魔力を解放しながら奴に斬りかかったが、奴は私の動きに合わせて剣を振るった。刃と刃がぶつかり合う音が響いたが、私は奴の力に負けて後ろへ転倒した。
「クッ!」
転倒してすぐに後ろに立ち上がり、魔力を解放して風の刃を放った。
「風の魔力ですか。私も風を使うことができるんですよ」
と言って、奴は強風を放って私が放った風の刃をかき消した。まさか、私の風の刃をかき消すほどの風を出すことができるとは……予想外だ。
「そうだ。私は風の他にも、火を使えるんですよ」
まさかと私は思った。奴は火を放ち、私に攻撃を仕掛けた。私は火を回避したが、奴が放った火は私を追いかけていた。
(まるで火炎放射器だ! エクス、何か手はあるか?)
(風の魔力を使ったビームならできます。ですが、かなり集中する必要があるので、今の状況だと使うことができません)
(そうか……エクス、俺を使え)
火炎放射器のように迫って来る火を見ながら、私はヴァーギンさんにこう言った。
(あれを斬るつもりですか?)
(ああ。あの程度の火なら、俺の切れ味でどうにかなるだろう)
(分かりました。やってみます。力を貸してください)
(もちろんだ)
私はヴァーギンさんを両手で構え、奴が放つ火に向かって行った。
「おや? 自分から火に向かうとは……何か策があるのですね?」
奴が何かを言っている。答えるもんか。私はそう思いながら、奴が放つ火を斬りまくった。そのおかげで、奴に接近するための道ができた。
「ほう。自分で道を切り開くとは」
「覚悟しなさいよ!」
私は奴に接近し、ヴァーギンさんを振るった。
おかしい。奴は俺の切れ味を見て、威力を把握したはずだ。だが、防御も身構えることもせずにエクスの攻撃を受けた。
「いい切れ味ですね。ですが……私の体を斬るまでにはいきませんねぇ~」
なっ! 斬ったはずなのに、刃が奴の体に食い込んでいる! エクスは力を込めて俺を引き抜こうとしたが、食い込んだ刃はなかなか抜くことができなかった。
(エクス、一度俺から手を放して逃げろ!)
エクスは俺の言葉を聞き、俺から手を放して後ろに下がった。次の瞬間、奴の強烈な一閃がエクスを襲った。だが、間一髪エクスが攻撃をかわしたため、攻撃を受けることはなかった。
しかし、奴が剣を振り下ろした後の光景を見て、俺は唖然とした。力と魔力を込めて一閃を放っただろう。ヘリの上に落ちた奴の剣からは、火事でも起きたと思わんばかりの煙が発生していた。
「あらら、避けられましたね」
奴はすっとぼけた様子でこう言った。まだこの様子だと、体力も魔力もあるようだ。奴は俺を掴み、エクスに向かって投げた。エクスは俺を手にし、奴に向かってこう言った。
「やるわね、あんた」
「それほどでも。アソパさんの部下として、恥じないほどの強さを得たつもりです」
「もしあんたを倒しても、何も語ってくれなさそうね」
「当たり前です。アソパさんは私にとって天使のような人です」
「筋肉ムキムキマッチョマンみたいな天使、可愛げもないわね。想像しなかった方がマシかも」
「天使が子供のようなイメージだとは、誰も言っていませんよ。それよりも、あなたを早く倒さなければ。我々の障害になるんですよ、あなたという存在が」
奴はそう言って、エクスに剣を向けた。こんな強い奴がいるとは……考えもしなかったな。
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