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空に現れるのは


 ティノはグレンサーの氷の弾丸の技の弱点を見切った。俺よりも先に。ティノもこの旅で成長したわけか。だが、奴は替えの銃を持っているだろう。自分の技の弱点を知らないはずがない。


「さっきは運がよかっただけだ! 今度こそ、俺の弾丸を受けて死んじまいな!」


 あいつはそう言って、二度目の攻撃の準備を行っていた。バカな人間だ。多分、自分の技の弱点を察していない。奴は再び氷の弾丸を放った。ティノはその攻撃をかわし、回転する風の刃を宙に発した。


「あなたの技の弱点は見切りました。これ以上戦ってもあなたに勝ち目はありません」


「偉そうな態度をとるんじゃねーぞクソガキ! 俺がお前みたいなガキに倒されるわけねーだろうがよー!」


「はぁ……愚かな人ですね」


 ティノはそう言ってため息を吐いた。俺も同じ気持ちだ。自分の愚かさを知らないバカな人間は、一度痛い目に合わないと分からないだろう。もしかしたら、死ぬまで分からないと思う。


「誰が愚かだ! クソガキが、ぶっ殺してやるよ!」


 奴はティノに向けて再び氷の弾丸を放った。三度鋭い氷の弾丸が放たれたが、同じ攻撃を三度も見たら誰だって技を見切ることができる。


「クソが! 避けるんじゃねーよ!」


「痛い目にあいたくないので。では、そろそろくだらない戦いを終わらせましょう!」


 ティノはそう言って風の刃を奴に向けて放った。飛んでくる風の刃を見て、奴は銃口を向けた。


「はん! そんなもん俺の銃で撃ち落としてやるよ!」


 と言って、引き金を引いた。だが、弾は出なかった。何度も奴は引き金を引いたのだが、弾が出る気配はなかった。


「え? 何で? クソ! 弾が出ない、魔力を込めたばかりなのに!」


「銃が中で凍り付いたんですよ。そんな状態で銃を使えると思いますか?」


 ティノは冷めた目で奴にこう言った。その言葉を聞いた奴は目を開けて驚いたが、この直後にティノが放った風の刃に直撃した。奴は血を流しながらその場に倒れた。


「が……あ……そん……な……」


 奴は苦しそうにこう言うと、気を失った。とりあえず、ヘリの上に飛び乗った奴らとの戦いは終わったようだ。ティノはその場に座り込み、安堵の息を吐いた。


「な……何とかなりました~」


(強敵相手によく頑張った。強くなったな、ティノ)


(まだまだ、エクスさんみたいには戦えません)


(強敵一人を倒したんだ。もう少し自信を持て)


 俺はまだ自信を持てないティノにこう言った。ティノも強くなる素質がある。育てばいいが。そう思っていると、エクスが近付いて来た。




 ティノちゃんの方も戦いが終わったようだ。どうやら、吹き飛ばされたヴァーギンさんはティノちゃんの元に飛んで来たらしい。無事でよかった。


(ヴァーギンさん、無事でよかったです)


(ああ。ティノがいなければ、俺は落っこちていた)


(その時は驚きましたが、ヴァーギンさんの言葉がなかったら、あの変な人との戦いには勝てませんでした)


 ティノちゃんはヴァーギンさんにこう言葉を返していた。そうだ、ティノちゃんが倒した奴はどうしたんだろう?


「ねぇ、ティノちゃんが倒した拳銃野郎はどうしたの?」


「あそこで倒れています。風で押さえつけて、飛ばないようにしています」


「それでオッケー。私が戦った敵よりまともな終わり方ね。私が戦った敵は、プロペラに巻き込まれて自爆したし」


「うわ……その光景見なくてよかったです」


「かなり過激だったから、ティノちゃんが見なくてよかったわ」


 私たちが話をしていると、遠くから別のヘリの音が聞こえた。周りを見ると、別のジャッジメントライトのヘリの姿が見えた。


「エクス・シルバハートとティノ・オーダラビトの姿を発見! 攻撃を仕掛ける!」


「了解! 奴らが乗っているヘリごと撃ち落とせ!」


 どうやら敵の援軍が来たようだ! 私が動こうとしたけど、突如痛みを感じた。


「エクスさん! どうしたんですか?」


「ちょっと体が痛いわね……どうしてかしら?」


(まさか、あの鎖野郎に縛られた時に骨が……)


 そうか、戦っている時は集中して分からなかったけど、鎖で体を縛られた時に骨が何本か折れたのだろう。これであそこまで戦えるのが奇跡と言いたい。だが、今はそんなことを思っている場合じゃない!


「私が剣であいつらの弾丸を……」


「無理しないでください! 私がバリアを張ります!」


 ティノちゃんが私の前に出て、バリアを張った。ティノちゃんが発したバリアはヘリごと包み、奴らが放つ弾丸を防いでくれた。


「ぐっ……ちょっと魔力を使ったから、体力的にキツイ……」


 と、ティノちゃんが苦しそうにこう言った。このままだとまずい。私がそう思った直後、下から別のヘリの音が聞こえた。また援軍が来たのかと思ったが、今回はギルドから援軍だった!


「エクスさん! ティノさん! フォローしに来ましたァァァァァ!」


 ヘリからギルドの戦士の声が聞こえた。そして、ギルドの紋章が描かれたヘリが近付き、攻撃を仕掛けるヘリに体当たりを仕掛けた。


「おわァァァァァ!」


「クソッ! ギルドの援軍か!」


「イヤー! 揺れる、揺れるよー!」


 敵の慌てる声が聞こえる。いい気味だ。とりあえずここは援軍に任し、私たちはヘリの中に戻るとするか。




 ヘリの中に戻った後、ティノちゃんはすぐに私を横に寝かせ、服を脱がした。


「簡易だけど治療を始めます。どこの部位の骨が折れたか分かりませんので、体の隅々まで調べます」


「お手柔らかに」


 私がこう言うと、ティノちゃんは私の体を触り始めた。すると、左右の横腹から痛みを感じた。そして、左右の太ももの両端からも、痛みを感じた。


「左右の横腹と太ももですか……鎖で縛られた痕があります。骨が折れたのはここら辺ですね」


「魔力で骨折の治癒もできるの?」


「とりあえずやってみます」


 ティノちゃんはそう言って治療を始めた。私は窓から外を見て、状況を見た。どうやら、援軍の中にはソセジさんとエンカもいるようだ。二人が前に出てジャッジメントライトの戦士と戦っていた。あの二人も頑張って戦っている。私も早くこの骨折を治して早く戦場に戻らないと!


 しばらく私の治癒は続いた。魔力による骨折の治癒はかなり難しく、ティノちゃんも苦しそうな顔をしていた。


「大丈夫ティノちゃん? さっきの戦い、かなり激しかったから魔力の消耗もすごいでしょ?」


「私のことは気にしないでください。とにかく、エクスさんを治さないと!」


 ティノちゃんは私を治すために集中している。今は休んでいる状況ではないと察しているようだ。そんな中、悲鳴が聞こえた。どうやら、ギルドの戦士の誰かが倒されたようだ。私は急いで様子を見ようとしたいが、痛みを感じた。


「エクスさん! 急に動いたら危険ですよ!」


「だけど……誰かが……」


「エクスさん、ティノさん、ちょっと動きますので踏ん張ってください!」


 突如、ヘリを操っているギルドの戦士がこう言った。その後、ヘリは上昇し、私たちの横の扉が開いた。どうやら、やられたギルドの戦士を中に入れるべく扉を開けたようだ。


「大丈夫?」


「何とか。吹き飛ばされただけです」


 やられたギルドの戦士はそう言ったが、体中傷だらけだ。この直後、他のギルドの戦士もやられては私たちがいるヘリの中に吹き飛ばされた。その中には、ソセジさんやエンカの姿もあった。


「ソセジさん! エンカ!」


「グッ……情けない所を見せてしまったようだね……」


「まだまだ……俺は……グウッ」


「エンカ君、無理はしない方がいい。動いたら傷が広がる……」


 あの二人も倒されるなんて。今回来たジャッジメントライトの援軍はかなり強いと見た。早く傷が治ってほしい。


「エクスさん。骨折、治りましたよ! 何とかなりました!」


 と、ティノちゃんが明るい口調でこう言った。よし! これで再び戦える! 私は服を着て、すぐに外に飛び出した。


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