危機的な状況を覆すために
エクスはディガクの攻撃を受け、大ダメージを受けてしまった。だが、もう少し時間があれば動けるまで回復できると言う。俺は周囲を見回し、恐怖で震えているティノを見た。そうだ。まだティノには魔力が残っている。俺はティノに希望を託すことにした。
(ティノ、聞こえるか?)
(ヴァ……ヴァーギンさん! はわわわわわ! どうしましょうどうしましょう! このままだと、エクスさんがやられます!)
(あの女は余裕があるせいか、ゆっくりと歩いてエクスに近付いている。それと、あの女はお前のことを敵として認識していない)
(も……もしかして、私があのおっかない人に攻撃するんですか?)
(そうだ。お前しか頼れるのはいない!)
俺はティノにこう言った。そう、この状況で頼れるのはティノしかいない。俺の言葉を聞いたティノは、立ち上がって魔力を解放した。それに気付いたあの女は、ティノの方を見た。
「へぇ。私とやる気? 色気がないおチビちゃん」
「黙ってくださいおばさん!」
エクスの毒舌がティノに汚染したのか? さらっと酷いことをティノは発言した。多分、気付いていないようだが。その言葉を聞いたディガクは怒りの形相を見せた。
「誰がおばさんよ! クソガキがァァァァァ!」
「ヒェェェェェ!」
ディガクの声を聞いたティノは悲鳴を上げながら、火の玉を放った。だが、バランスを崩してしまったから狙いを外してしまった。
「フン。私はここよ。狙いが外れたわね」
「あわ……あわわわわわ……」
「どうやらあんたが先に死にたいようね。お望み通り、あんたから殺してあげるわ」
ティノは悲鳴を上げながら後ろに下がろうとした。だが、回復したエクスがディガクに飛びかかった。
「なっ! ガッ!」
「ありがとねティノちゃん。おかげで回復したわ!」
「グッ、クソッ!」
ふぅ、エクスが回復するまで時間を稼ぐことができた。とりあえず安心だ。
何とか動けるようになった私は奴に飛びかかり、押し倒した。
「私から離れろ!」
「絶対に嫌よ! お断りしまーす!」
私はそう言って、奴の左腕を折った。攻撃を受けた際、持っていた剣を落としてしまったため、今は剣を持っていない。だが、それでも戦うことができる。コツさえつかめば、相手の骨を折ることができる。
「グッ……ガァァァァァ!」
左腕を折られた際、奴は悲鳴を上げた。かなり痛かったのだろう。だが、敵の痛みなど私は知らない気にもしない! その後、私は奴の右腕を握った。
「なっ……何をするつもりだ!」
「分からないの? 右腕も折ってやるのよ!」
「ふざけるなァァァァァ!」
奴は魔力を解放して私を吹き飛ばそうとしたのだが、私も魔力を解放した。私の魔力が強いせいか、奴は地面に沈んだ。
「なっ……魔力の量が……」
「私の方が強かったわね! 残念でしたァァァァァ!」
私はそのまま勢いを付けて、奴の右腕を折った。これで奴は両腕を失った。戦えることはできないだろう。私は立ち上がり、奴の様子を見た。
「ガァッ……グアッ……クソォ……」
「もう戦えないわね。ご愁傷様でーす」
私はにやりと笑いながらこう言った。奴は私を睨んだが、あまり怖くない。両腕が使えない敵の睨んだ顔なんて怖くもなんともない。
「クソ女が! 絶対に殺してやる!」
奴は立ち上がり、私に向かって突進した。私は周囲を見回し、落ちている剣を見つけた。
「行かせるか!」
どうやら、奴は私が落ちている剣を探していると察したのだろう。だけど、ダメージを負っている奴の動きは鈍っている。その結果、私が先に剣を手にすることができた。
「しまった!」
「さぁ、おしまいの時間です」
私はそう言って、奴の両足を斬り落とした。斬られた瞬間、奴は悔しそうな表情をした。だが、奴が何を考えてもこの状況を覆すことはできない。勝負は終わった。
何とか動けるまでには回復したが、まだダメージが残っている。そのせいで、疲れを感じた。私がその場に座ると、ティノちゃんが慌てて私の元へ駆け寄った。
「大丈夫ですかエクスさん!」
「何とか。疲れがあるけど」
「あれだけダメージを負った状態で戦うからそうなるんですよ。今すぐ治療するからじっとしてください」
「お願い。今回は流石にちょっときつかったから……」
その後、私はティノちゃんに抱き着くように倒れた。ちょっと無理しすぎたかな。体がちょっと重い。だるい。きつい。
(エクス、少し無理しすぎたようだな。今、魔力を感じないから休むんだ)
(はい……そうします)
ヴァーギンさんからも休むように言われた。完全に回復するまで休もう。
治療はかなり続いた。大きなダメージを負っていたのか。
「エクスさん、今回は酷いダメージでしたよ。まだ傷が治りません」
「本当? 挟み撃ちにされただけなのに、まだ傷が治らないなんて不思議ね」
「挟まれた時、ジャッジメントライトの戦士が腰に剣の鞘とか身に着けていませんでした? それが体に食い込んだかもしれません」
「そうね。酷い傷ね……」
そんな話をしていると、何かが打ち上げられる音が聞こえた。
(何の音だ?)
(花火? いや、こんな昼間に、こんな状況で花火をする人はいません)
私はヴァーギンさんにこう言うと、望遠鏡を持って周囲を見回した。空を見ると、何かが高く打ち上げられていた。
「あれって……何?」
「あれ? さぁ、分かりません」
ティノちゃんは治療しながら空を見た。私は望遠鏡を拡大し、空に浮かぶ物を見た。そして、その物体が何なのか理解した。
「あれは、デリートボンバー!」
「えええええ! デリートボンバーが落ちて来るんですか? 撃ち落とすしか……」
(待て。あの動きを見ろ。デリートボンバーの動きが大きい。狙い撃つのが難しいぞ)
ヴァーギンさんの言う通り。パラシュートが付いているせいで、ふらふらした動きになっている。狙い撃つのが難しい。
「どうしましょう。この状況……」
「私が万全の状態だったら……いや、万全でもきついかも」
私の言葉を聞いたティノちゃんは驚きの声を上げた。斬っても爆発するだろうし。そう思っていると、ギルドの戦士たちがやって来た。
「エクスさん、激しい魔力の衝突を感じて来たのですが……大怪我をしたようですね」
「ええ。でも、ティノちゃんの治療を受けているからすぐに治るわ。それよりも、あれを見て」
「確認しています。デリートボンバーのことですね」
「理解しているなら早いわ。早く逃げないと」
「逃げる必要はありません。ギルドはすでに対策を練っています」
この言葉を聞いた私たちは驚きの声を上げた。どうやらギルドもデリートボンバーの対策を練っていたようだ。いつの間に。練っていたんだったら教えてくれてもいいのに。
「で、どうするんですか、どうやって対策するんですか?」
「こいつの出番だ。急いであれを用意しろ!」
戦士は大声でこう言った。すると、別の戦士たちが大きなスピーカーを用意した。何これ?
「何ですかこれ? スピーカーのようですが」
「これはギルドの開発スタッフが作った対デリートボンバー用の兵器、サウンドウェーブ!」
「さ……サウンドウェーブ?」
対策兵器と言っているとが、こんなスピーカーのような物が一体どんな動きをするのだろう?
「これでデリートボンバーをどうにかできるんですかね?」
「うーん……これは私でも分からないわ。何とかできたらいいんだけど」
ティノちゃんもちょっと不安なのだろう。私もこんなスピーカーのような物がデリートボンバーに対して有効な手段だとは思ってもいない。戦士は私とティノちゃんの顔を見て、にやりと笑っていた。
「不安だと思うか? 大丈夫だ。ギルドの技術を信じるんだ! さぁ、スイッチオン!」
と言って、ギルドの戦士はサウンドウェーブの電源を入れた。
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