ジャッジメントライトの襲撃
裏切り者の存在により、多少無駄な時間を使ってしまった。だが、住人の避難には邪魔が入らなかっただろう。私はジャッジメントライトの戦士であろう双子を倒して縛った後、そいつらを椅子にして座っていた。すると、携帯電話が鳴り響いた。ベトベムのギルドの人だ。
「どうかしましたか?」
「住人の避難が完了しました。この場にいるのは、我々ギルドの戦士のみとなります」
「了解。敵も近いうち……もしくはこの瞬間に来る可能性もあるから、いつ敵が来てもいいように構えていて」
「分かりました」
どうやら住人の避難が終わったようだ。よかった、無事に終わった。安堵の息を吐いて周囲を見回すと、謎の魔力を感じた。
「ティノちゃん。敵が来たかもしれないわ」
「はい。頑張って戦います」
私は剣を持って立ち上がり、いつでも戦えるように構えた。しばらくして、ジャッジメントライトの戦士の大群が威勢のいい声を上げながらベトベムに乗り込んで来た。
「ベトベムを攻め落とせ!」
「この汚い町を消し去り、新たに我らの拠点とするぞ!」
「我らに歯向かう奴は大罪人だ! 問答無用で殺せ!」
私は叫ぶ奴らに接近し、前にいた奴らの両腕を斬り落とした。一瞬のことだから奴らは私の存在に気付かなかっただろう。私が前に出た瞬間、奴らの動きは固まっていた。
「な……貴様は……エクス・シルバハート!」
敵の一人が私を見て叫んだ。その瞬間、私が斬った奴らは痛みを感じて情けない声を上げた。
「貴様がここにいるのは把握していたが……まさか、こんなに早い段階で遭遇するとは!」
「スパイの情報で私がいるってことを知っていたのね。流石卑劣軍団。だけどね、卑劣な頭だけじゃ私を倒すことは不可能よ。それを教えてあげる」
私はそう言うと、襲い掛かって来たジャッジメントライトの戦士の両腕を斬り落とし、そいつの近くにいた戦士の左足を斬り落とした。あっという間に二人の戦士が戦闘不能の状態になったのを見た奴らの仲間は、悲鳴を上げて後ろに下がった。
「逃がさないわよ。あんたらから仕掛けた喧嘩じゃないの。逃げるなんてずるいわよ」
挑発しながら私はそう言ったが、今の奴らには私の挑発が聞こえなかったようだ。怖さのあまり聞こえなかったのだろう。あーあ、こうなるんだったら、喧嘩なんて売らなければいいのに。私はそう思ったが、まだ戦う意思がある奴がいた。
「ふざけたことを言うなよエクス・シルバハート! お前の首はこの俺が斬り落としてやろう!」
ほう。敵にも威勢のいい奴がいるのか。そいつは両手で剣を持ち、力を込めて私に向かって振り下ろした。太刀筋も確実に私を狙っていて、乱れもない。威勢もあるが、剣の腕もあるのだろう。
「あんたとはいい戦いができそうだけど。あいにく今はそんなことを言っている場合じゃないの」
私はそう言うと、高く飛び上がった。私の後ろにいたティノちゃんが魔力で巨大な火の玉を発したのだ。
「うげぇ! まさかこれを狙って……」
奴がそう言うと、ティノちゃんが発した火の玉が奴に命中した。火の玉が破裂した瞬間、周りにいた戦士もかなり吹き飛んだ。
「ぐ……退却だ……一度引いて態勢を整えろ!」
隊長らしき奴が叫んだ。逃がさないわよ。私は周りの戦士を斬り倒しながら、隊長らしき奴に近付いた。
「逃がさないわよ。こんなことを起こした奴らを簡単に逃がすわけないでしょ?」
「グッ……お前は……俺が殺す!」
おっと。隊長らしき奴は素早く剣を手にして私に振るった。私は上半身を後ろに反らし、隊長らしき奴の様子を見た。私と同じ片手で剣を使う戦い方か。だが、一つだけ違う所がある。奴の左手は左腰にある拳銃の握り手にある。剣で攻撃しつつ、敵の様子を見て拳銃で撃つ戦い方のようね。だとすれば、本命の攻撃は剣ではなく拳銃の一発。ふふっ、ある意味二刀流の戦い方ね。
「行くぞ!」
前もって攻撃すると言ってくれるなんてなんて紳士な人なのだろう。普通だったらそんなこと言わないのに。ジャッジメントライトの戦士はそれなりに真面目なのだろう。いや、そうでもないな。卑劣なことをするし。そんなことを考えている場合じゃないわね。奴は私に向かって何度も剣を振るっている。そして、時折隙を見つければ拳銃を手にしようとしている。
「いい剣筋ね。それなりに鍛えていると思うけど……」
「何が言いたい?」
「本命の攻撃が分かりやすいわよ」
私はそう言うと、隙を突いて隊長らしき奴の左手に向かって剣を振り、斬り落とした。
「なっ……あっ……」
これで奴は左手で拳銃を使うことはできまい。それに、片手を失った時の痛みは多分痛いだろう。これで奴はもう戦えないと私は思ったが、その予想は大きく外れた。
「まだ右手が残っているぞ!」
何と、痛みを感じる中、奴はまだ戦う意思を見せた。珍しい。普通の奴は片手を失ったら激痛で苦しみ、戦意を失うんだけど。まぁいい。それだったらとことんやるだけだ。奴は右手に持っている剣を投げ捨て、拳銃を手にして私に銃口を向けた。
「死ね」
と言って、引き金を引いた。だが、それより先にティノちゃんが私の前にバリアを張った。突如現れたバリアを見て、奴は目を開けて驚いた。
「何! 他の奴らはまさか……」
奴は周囲を確認し、言葉を失った。奴が私の相手に集中している間、ティノちゃんが奴の部下を魔力の竜巻で全員吹き飛ばし、倒してしまったのだ。
「あんた、仲間が攻撃されているのに気付いていなかったの? 案外大間抜けね」
「グッ……クソッたれがァァァァァ!」
奴は叫びながら何発も私に向かって引き金を引いた。まだバリアがあるから、いくら攻撃しても無駄なのに。そうしている間に、奴の拳銃は弾切れを起こした。
「あっ! グッ……グッ! クソッ!」
奴は弾切れを起こした拳銃を投げ捨て、私に飛びかかった。だが、右手だけじゃあ分が悪い。私は奴の右手を掴み、そのまま一本背負いで後ろに倒した。奴は背中から地面に落ち、痛そうな表情を上げた。
「が……あ……ああ……」
「これで終わりね。観念しなさい。これ以上抵抗すると、足か腕を斬り落とすわよ」
私は奴が投げ捨てた剣を拾い、奴に刃を向けてこう言った。それを見た奴は冷や汗を流し、動きを止めた。観念したのだろう。
とりあえず私に歯向かうような奴はいなくなった。戦意を失った奴は後ろに下がってしまったようだが……まぁ別の戦士が倒すであろう。
「他の人たちは大丈夫ですかね?」
「ソセジさんやエンカ、知り合いの魔力は感じるわ。それに、他のギルドの戦士の魔力もまだ感じる。皆無事みたいね、今のところは」
私は息を吐いてティノちゃんにこう言った。多分、他の所からもジャッジメントライトの戦士が現れているだろう。私の方はあっという間に片が付いたからいいんだけど、他の戦士がちょっと心配だ。様子を見に行こうとしたのだが、強い魔力を感じた。その瞬間、私の足元に何かが落ちてきた。
「うげっ! 何これ……なっ!」
足元に落ちて来た物体を見て、私は言葉を失った。それは、ぐしゃぐしゃになり、血まみれになったジャッジメントライトの戦士の死体だった。
「ひ……酷い……どうしてこんなことを……」
ティノちゃんもジャッジメントライトの戦士の死体を見て、驚きの表情を上げていた。いくらなんでもギルドの戦士がここまで敵を無残に殺すはずがない。私はそう思うと、前を見て、さっきの魔力の主を見つけた。それは、剣と盾を持った女性だった。明らかに私に向けて敵意と殺意を放っている。それに、魔力も解放していて、雷を発していた。
「見つけたわよ。エクス・シルバハート……」
女性はそう言うと、私を睨んだ。どうやら、この戦士はこの女性が殺したようだ。こんなことをするような奴は、女性であっても許さない。
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