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世界の中央からの呼び出し


 ベトベム。この世界の中央と言われる大きな町。よくテレビや雑誌などで町の映像が流れている。ファストの村と比べてかなり近代的な見た目となっている。魔力を動力として空を飛ぶ車なんてたくさんあるし、町中の至る所には電子モニターが存在する。私でさえも、町の中をテレビで見るだけでベトベムに入ったことがない。


 そして、ベトベムのギルドも町と同じくかなり大規模だ。私より強いかもしれない戦士なんてゴロゴロいる。エリート中のエリートの戦士がいるようなギルドだ。だが、そんなエリートがどうして私なんか探しているんだろう?


「噂は聞いています。二度にわたってジャッジメントライトとの激闘を繰り広げた英雄に近い存在だと」


「私は英雄ではありません。戦ったとはいえ、完璧な勝利とは言えないので」


 はぁ、ピアノタワーの件と言い、この前のアチーナさん暗殺未遂事件で私の株は知らぬ間に上がっているようだ。ジャッジメントライトと戦う以上、株が上がるのはしょうがないと思うが、あまり私を英雄とか言うのは止めてほしいなー。


「で、何か私とティノちゃんに用ですか? 私たちはアソパについて探っているのですが」


「我々もこの前の事件で、幹部の一人、アソパの情報を得て動いています。後日、ベトベムにてアソパの探索会議を行う予定ですので、あなたも参加してください」


「ギルドの重役が言ったのね?」


「その通りです」


「私に拒否権はある?」


 私は質問を返したが、戦士の一人が私に近付いた。


「英雄と言われているが、あまり図に乗ったことを言うなよ」


「そんなつもりで言葉を発しているわけじゃないんだけど」


「俺の目から見ると、お前が図に乗っているかのように見える」


 はぁ。エンカみたいな奴がベトベムのギルドにいるのね。エリートと言われ、それなりにプライドがあるんだろう。こういう性格の相手は面倒だな。


「とにかく今はあなたと話をしていません。で、会議についてですが……」


 私が話をする中、プライドの高いエリート戦士は私に向けて剣を向けた。殺気を感じ、私は素早く剣を最小限に動かして攻撃を防御した。


「ふっ、噂は本当のようだな」


「あんた、暴れる場所を考えなさい。エリートの戦士がここで暴れたらどうなるか、その先のことが分かるでしょ?」


「そうだな。外に出ろ。一度、お前と戦ってみたいのだ」


 はぁ。思わずため息を漏らした。本来の目的は戦うためじゃなくて私たちをベトベムに連れ出すんじゃないのか? 連れの戦士も呆れてため息を漏らしている。


「エッパ。俺たちの目的はエクスさんとティノさんを迎えに来ただけだ。無駄な行動は控えろ」


「バカにされちゃあベトベムの戦士の名が汚れっちまう。こんな女が英雄だって言われているのが俺的にムカつくんだよ」


「それが本心ね。女が活躍するから、男としては弱い女が活躍するのが気に食わないってことね」


 私がこう言うと、エッパと言われたエリート戦士は両肩を動かし、驚いたようなしぐさを見せた。私はにやりと笑った後、続けて言葉を放った。


「でもあんたとは戦うつもりはないわ。最初の攻撃で分かったわ。殺気をむき出しにして攻撃するようじゃあ、あんたはベトベムの戦士の中でも実力がない方ね」


 本当のことを言うと、エッパは顔を真っ赤にして怒り出した。エリートがバカにされて怒るとは、精神的に鍛えていない証拠だ。


「ふざけたことを言うなよ! 腹が立つ! 俺と勝負しろ!」


「いいわよ。それじゃ、外に出ましょうか」


 とりあえず一度、このエリートさんのプライドを叩き折ろう。そうでもしないと、話が進まない。ティノちゃんは心配そうな顔で私を見ていたが、多分大丈夫だ。エッパは勝てる相手だ。




 エクスは俺をティノに託し、エッパと言うエリート戦士の前に立った。二人とも、右手には木刀を持っている。すでに戦う準備はできているようだ。


「とりあえず誰かが参ったと言うまで、戦いを続ける。二人とも、それでいいか?」


「もちろんだ」


「分かりやすくて実にいいルールね。早く始めましょう」


「それでは……開始!」


 審判の合図と共に、エッパはエクスに向かって突っ込んだ。エッパの攻撃的な性格が行動にも表れている。あいつはとにかく前に出て、攻撃を仕掛ける性格だ。


「俺の攻撃受けてみやがれェェェェェ!」


 エッパは素早い動きでエクスに攻撃を仕掛けた。


(この人の斬撃、全然見えません! エクスさん、大丈夫なんでしょうか?)


 ティノは心配そうにエクスを見ている。だが心配はいらない。エクスはエッパの攻撃を寸の所でかわしている。


「フン! ギリギリで俺の攻撃をかわしているようだな。まぐれだな!」


「まぐれじゃないわよ。わざとあんたの攻撃をギリギリでかわしているのよ」


 余裕の色があるエクスを見て、エッパはどよめいた。自慢の攻撃が簡単にかわされていることを察して驚いているのだろう。


「ヘッ。それじゃあこいつはどうだ!」


 そう言うと、エッパは後ろに下がって木刀を構えた。


「必殺! ソニックスラァァァァァァッシュ!」


 ソニックスラッシュ? 変な技の名前だ。とりあえず、勢いを付けて斬るだけの技だろう。


「喰らえェェェェェ!」


 エッパは猛スピードでエクスに接近してきた。予想通りの展開だ。エクスの表情には変わりがない。あの技の対処法を察したのだろう。


「おいおい、俺の早さに目が追い付いていないのか?」


 奴は得意げにこんなことをエクスに言っている。バカな奴だ。エクスはすでにこの攻撃に対して対処できる行動を始めているのに気付いていない。


「あんたの動きは察したわよ」


 そう言って、エクスは木刀を振るった。その直後、エクスの木刀がエッパの額に命中する音が周囲に響いた。


「な……あ……」


「手は抜いたけど、結構痛いダメージでしょ?」


 エクスはそう言って倒れ行くエッパを見た。この攻撃を受け、エッパは失神したようだ。エクスは審判役の戦士を見て、こう言った。


「で、戦いは終わったけど?」


「ああ。これでエッパの奴も文句は言わないだろう。勝負あり! 勝者、エクス!」


 審判役の戦士は大声でこう言って、エクスの勝利を伝えた。




 エッパとの決闘後、私たちは再び宿に戻った。目が覚めたエッパは氷水を額に当てて、傷を冷やしていた。そこまで力を込めて木刀を振るっていないのに、大げさだなー。


「それだけ痛かったの? ちょっと触らせて」


「オイ止まれ! まだ痛いんだから触らないでくれよ!」


 エッパは私を止めようとしたのだが、その前にエッパが転倒し、床を額にぶつけた。


「イッダァァァァァ!」


 エッパは額を抑えながら、その場でうずくまった。この反応を見せるとは、それだけあの時の傷が痛いということか。ちょっとやりすぎたかな?


「エッパのことは無視して話を勧めましょう。確か、あなたの会議参加についてですよね」


「はい。私、会議は嫌いなので出たくありません。アソパを探すための会議だと言っていますが、会議を行う暇があれば奴を探すためにどんな小さな情報でもかき集めることが大事だと思います」


「情報は集まっています。もちろん、あなたたちが知らない情報も少しあると思います」


 この言葉を聞き、私は驚きの声を上げた。まさか、ギルド側がアソパの情報をそれなりに手にしていることは私にとって、予想外のことだったからだ。


「私はジャッジメントライトと絡んでいる政治家が邪魔をして、ギルドが動けないと思っていましたけど」


「裏で動く戦士がいるんですよ。ベトベムには。表立ったことも……少しは」


「とりあえず、今はギルドの裏とかそんなことはどうでもいいわ。今欲しいのは、アソパの情報だからね」


 私はベトベムの戦士に向かって、こう言った。アソパの情報。ジャッジメントライトに繋がる唯一の手掛かり。これは何としても欲しい。


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