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ピッカロの町にて


 モツアルトの町からピッカロの町に着くまではかなりの時間がかかった。バスや電車を使って一週間かかるとは思っていなかった。本来なら二日くらいだけど、途中で私とティノちゃんの命を狙うジャッジメントライトの暗殺者に何度も襲われ、倒した後で最寄りのギルドに身柄を渡したりしていたせいだ。本当にジャッジメントライトの連中は迷惑だ。


「やっと到着しましたね」


「バカ共のせいで時間を使っちゃったわ。とにかくこの動画を頼りに情報を集めましょう」


 私はアソパの動画を見ながらティノちゃんにこう言った。それからいろんな店へ行ってアソパの動画を見せ、情報を集めた。だが、一年と言う時間が経っているため、なかなかアソパの情報を手にすることはできなかった。


 町に到着して数時間後、私とティノちゃんは町のカフェで一休みしていた。


「なかなかアソパの情報が手に入らないわねー」


「本当にそうですねー」


 私とティノちゃんはパフェを食べながら話をしていた。そんな中、チャラそうな二人組の男が私に近付いた。


「かーのじょ! 暇なら俺たちと遊ばない?」


「暇人と遊ぶ暇はないわ。さっさと帰りなさい」


 私は二人組のチャラ男を睨みながらこう言った。私の迫力に押されたせいで、チャラ男は引いていた。だが、そのうちの一人がアソパの動画を見て声を出した。


「あれ? あの時の動画が流れているぜ」


「ん? 本当だ。うわー、今更こんな動画見ている人がいるなんてなー」


 予想外の出来事だ。こんな奴らが重要そうな話を知っているとは思ってもいなかった。


「ねぇ、この動画のことを知っているの?」


「ああ。とりあえず座ってもいい? 話が長くなるかも」


「構わないわ」


 私はチャラ男のために椅子を引いた。チャラ男はありがとうございますと言って、アソパの動画に関して詳しく話しを始めた。




 アソパの動画は一年前に取られていた。それは私とティノちゃんも知っている。だが、このチャラ男から詳しいことを教えられた。アソパはジャッジメントライトの勧誘活動を行っていた。そんな中、変な奴に絡まれたそうだ。それで、返り討ちにしたと。その後、アソパは周りの人にジャッジメントライトに入れば、力が付くとか言って勧誘を勧めたそうだ。それを聞いた人の一部は、アソパのような力を求めてジャッジメントライトの勧誘に乗ったそうだ。その後、アソパはこの町で勧誘活動をしていない。


「俺たちもその時現場にいたけど、なーんか怪しいから入らなかったんだよなー」


「ジャッジメントライトって裏ではテロまがいのことをしているって噂で聞いたから。ニュースじゃあ言わないけど、あいつらに肩入れしている政治家がテレビ局に圧をかけて、情報を捻じ曲げているって聞いたぜ」


「そうなのね。欲しい情報が入ったわ。本当にありがとう」


 私はチャラ男に礼を言ったが、チャラ男は咳ばらいをしてこう言った。


「姉ちゃん、なんかやばそうなことに足を突っ込んでいるようだけど……気を付けてくれよ」


「何かテロとか政治家の暗殺事件があったらしいから、俺たち不安なんだよ」


「そうなのね。でも、ギルドの戦士たちがいるから大丈夫よ」


 私はチャラ男に笑顔を見せて安心させようとした。私の笑顔を見たチャラ男の顔は和らいだが、まだどこか不安があるような色を見せていた。


 チャラ男の話を聞いた後、パフェを食べた私とティノちゃんはカフェから離れた。


「幹部が勧誘活動するとは思ってもいませんでしたね」


「ええ。彼らはその後のことを知らないから、アソパの行方は分からないわね」


「またどこかで勧誘活動でもしているんですかね?」


「そうかもね。とりあえず、もう一度この町を調べましょう」


 私はそう言って、ティノちゃんの手を取って町の中を歩いた。




 エクスは誰かに尾行されていることを察しているようだ。わざと人混みの中を歩いている。誰がエクスたちを尾行しているんだ? そう思っていると、エクスは町の裏に向かって歩いていた。


(エクス、ここまでおびき寄せるつもりか?)


(その通りです。ここなら気軽に暴れられますので)


 エクスは剣を抜き、尾行者が来るのを待った。ティノも魔力を解放しているため、ティノの方も尾行している奴の存在を察しているのだろう。しばらくすると、黒いパーカーの二人組が現れた。


「エクス・シルバハート。我々の尾行を察していたのか?」


「殺意は隠せないわ。あんたらから私を殺してやると言いたそうなオーラがプンプン漂っているわ」


「最初からばれていたのか……なら、仕方ない! すぐに決着をつけるぞ!」


 黒いパーカーの二人組は両手にナイフを持ち、エクスに斬りかかった。だが、ティノが足元を濡らして凍らせたため、奴らは足を滑らせて転倒した。


「いぐぐ……クソ……」


「攻撃の邪魔をするなよ……」


「喧嘩や戦いにルールは存在しないわよ」


 エクスは転倒した二人組に刃先を向けてこう言った。奴らは刃先を見て、恐怖で体を震えさせていた。こうなった以上、奴らが助かる道は一つしかない。


「さぁ、話をしなさいよ。ジャッジメントライトのストーカーさん」


 エクスは勝ち誇ったかのように笑いながらこう言うと、黒いパーカーの二人組は大人しく話し出した。


 やはり、この二人組はジャッジメントライトの者だった。エクスとティノがこの町に来たと連絡を受け、始末するために尾行していたとのことだ。


「うーん、裏でジャッジメントライトが隠したカメラがあるのかしら?」


「隠れ信者みたいな存在がいると思います。彼らが私たちを見つけ、連絡したと思います」


 エクスとティノは二人組を縛りながら話をしていた。二人の言う通り、隠れ信者の存在は厄介だ。調べものの最中に邪魔をされたら最悪だからな。


(とりあえず、この二人はギルドに渡そう。この町にもギルドがあったはずだ)


 俺がこう言うと、二人は返事をしてギルドへ向かった。エクスの姿を見たギルドの役員は、驚きの声を上げながら近付いた。


「あなたはエクス・シルバハート! いやー、こんな小さな町に新たな英雄が来るなんて思いもしませんでしたー!」


「ちょっとある情報が欲しくてね。この人、ジャッジメントライトの暗殺者」


 エクスは黒いパーカーの二人組を渡し、報酬金を貰った。その後、エクスは一年前に、アソパがこの町に来たことを話した。


「この情報はこのギルドにも伝わっています。ですが、捜査をしようとした途端に上が止めろと言ったので、動くことはできませんでした」


「ジャッジメントライトと関係がある政治家が止めたのね」


「多分、アソパの行動を見たジャッジメントライトのボスがやったんですよ」


 エクスたちの会話を聞き、俺はそうかもしれないと考えた。ジャッジメントライトに関わる政治家は多数いる。ギルドも政治家からあれこれ言われたら、言う通りにするしかない。情けないが、上には逆らえないからな。


 その後、エクスとティノはギルドから出て、宿屋へ向かった。一通り情報は手にしたし、一晩この町で休んでまたジャッジメントライト狩りでもするのだろう。だが、もう少し情報が欲しいな。奴らに関わる情報なら何でもいい。そう思っていると、エクスが宿屋の扉を開けて驚きの声を上げた。カウンターには、ギルドの紋章が入った軽鎧を着た戦士がいたからだ。


(ギルドの戦士ですね。この町の人でしょうか?)


(この町の戦士なら、ギルドの部屋に行くだろう。こいつらは他所のギルドだ)


 他所のギルドがピッカロのような小さな町に来るのか。何か大きなことがあったのだろうと俺は思ったが、予想は外れた。ギルドの戦士はエクスとティノに近付き、頭を下げて挨拶をした。


「あなたたちがエクス・シルバハートとティノ・オーダラビトですね。我々はベトベムのギルドの戦士です。あなたたちを探しにこの町まで来ました」


「私たちを探しに?」


 エクスは驚いた表情で言葉を返した。一体どんな理由で俺たちを探していたんだ?


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