黒幕の目的
ようやく私とティノちゃんは今回のテロを企てた男の元へ到達した。私たちが部屋に入った直後、攻撃を仕掛けるような奴だから、相手を倒すためにはプライドも何もないのだろう。私と同じだ。
「では君たちを始末する前に私の名前を教えておこう」
「あの世へ逝ってもその名を覚えていろとでも言いたいの? 嫌よ。これからぶっ倒す奴の名前なんて覚えても意味がないわ」
「そんなことを言うなよ。私の名はイーハツ。アチーナ暗殺を任された男だ」
おっさん、イーハツは紳士のように丁寧にお辞儀をして名前を教えた。そんなことしなくてもいいのに。私は呆れながらイーハツを見ていた。
「挨拶はもう済んだ? あんたが何かをする前にこっちはちゃちゃっと終わらせて帰りたいんだけど」
「君はせっかちだな。せっかちな性格は今後の人生で苦労するぞ」
「あんたみたいな奴に私の人生をあーだこーだ言われたくないわね」
私はそう言って奴に斬りかかった。だが、奴は私の攻撃を盾で防いだ。ヴァーギンさんを使って攻撃したのに、奴の盾はこの攻撃を防いでしまった。このまま盾を破壊しようとしたけれど、奴の盾はかなり頑丈で壊すことができなかった。
(グッ、こいつの盾はかなり頑丈だ。普通の剣で攻撃したら、確実に刃が折れただろう)
(ええ。攻撃した際の衝撃が、私の手にも伝わりました)
私が脳内でこう言った後、ティノちゃんが雷の矢をイーハツに向けて放った。
「二対一か。結構。それでも私は構わないよ」
奴はそう言いながら、ティノちゃんが放った雷の矢に向かって剣を振るった。奴の剣に魔力が込められているのか、雷の矢は簡単に消滅した。
「あの人、魔力もかなりあります。私が放った雷の矢を、簡単に対処しました」
「結構な強敵ね。苦戦しそう」
私の言葉を聞き、ティノちゃんの顔つきが変わった。私が苦戦すると言ったため、イーハツと言う男がどれだけ強いか把握したのだろう。そんな中、イーハツは驚いた表情で口を開いた。
「そんな顔で睨まないでくれよ。怖くて動けないではないか」
奴は笑いながらこう言っているが、これは嘘だ。動けないのなら、アホみたいに両手をぶらぶら動かしている奴がいるか。奴は挑発でわざとこんなことを言って、こんな動きをしている。ここで奴の挑発に乗ったら奴のペースに巻き込まれる。
「ティノちゃん、私が奴に斬りかかるから、奴の隙を見て広範囲の攻撃を仕掛けて。魔力を感じたら、私はすぐに下がるから」
「分かりました。かなりの魔力を込めるので、危険だと思ったらすぐに下がってください」
「了解。それじゃ、行くよ!」
私はヴァーギンさんを構え、イーハツに向かって走って行った。
「何かこそこそとやっていたようだが、変な作戦は私には通用しないよ」
奴は笑いながらこう言った。その言葉の通り、今の作戦が奴に通用するか分からない。だが、やってみないと結果がどうなるかも分からない。とにかく思いついた作戦はとことんやるしかない。私は奴に向かって攻撃を仕掛けたが、奴は盾を使って攻撃を防御している。
「ほらほら。そんな攻撃では盾で防御されてしまうよ」
「あっ、そうですかっと!」
私は下にしゃがみ、回し蹴りを放って奴を転倒させた。この時、ティノちゃんの魔力を感じた。私が後ろに下がった直後、炎の竜巻が奴を襲った。
「これでやりましたかね?」
「いえ、まだよ。あの中から奴の魔力を感じる」
普通の戦士なら、この炎の竜巻を受けたら相当なダメージを受けるであろう。だが、奴は魔力を解放してダメージを抑えている。いや、これでダメージを与えられているのか分からない。しばらくすると、炎の竜巻が消え、奴の姿が現れた。
「ふぅ。酷いことをするねぇ。おかげで大切に来ていたジャケットが灰になってしまったよ」
奴が羽織っていたジャケットは、炎の竜巻によって灰になったが、奴の体は灰にはならなかった。奴の体は鎧のような筋肉で、それには無数の傷跡があった。
「見た目に反して、かなり筋肉質ね」
「ジャッジメントライトを守るため、死ぬ気で鍛えたのだよ」
奴は私にこう言うと、ずれたメガネの位置を直し、小さく笑った。
「さて、そろそろ私も本気を出そう。早くアチーナを殺さないといけないからね」
「そんなに焦ることもないじゃない」
「早く殺したいんだよ。あいつは私たちジャッジメントライトの怨敵だ。奴はいずれ、ジャッジメントライトの本当の顔を世間にばらすだろう。それからどうなると思う?」
「メディアが大騒ぎ」
「そうだ。メディア関係がジャッジメントライトを叩くような報道をするだろう。それからどうなると思う?」
「SNSで大騒ぎ」
「そうだ。ネットに張り付く虫けら共が腐った正義感を発揮し、我々を言葉攻めするだろう。小さなことだが、それらが積み重なり、いずれジャッジメントライトに手を貸していた政治家も摘発されるだろう。企業も摘発される。ジャッジメントライトだけということで、いろいろと問題が起こる」
「あんたらが起こした問題じゃない。自業自得、因果応報って奴よ」
「我々がやっていることは正義のためだ!」
奴は大声を発し、息を荒げた。しばらくして奴は深呼吸をし、小さく笑った。
「取り乱してしまってすまない。とにかく、我々は正義のためにこの世界をリセットしようと動いている。我々の邪魔をするような奴が悪だ。必ず処分しなければならない」
「無駄だと思うけど」
「無駄ではない。世界は愚かな人間どもによって腐ってしまった。そのせいで差別、弱肉強食、貧富の差など、不平等が生まれた。不平等なものがある限り、世界は幸せにならない」
「あんたらがどうあがいても平等で幸せな世界にならないわよ。這い上がる力を身に付けなければいけないってこと」
「貴様は何も分かっていない! 弱者に力を付けろということか? それができない者もいる! その者のためにも、この腐った世界をリセットしなければならないのだ!」
「弱い人のため? あんたらがやっていることが弱い人のためだと思っているの? テロを起こしてたくさんの人を殺して! それが弱い人のためだと思うんじゃないわよ! あんたらがやっているのはただの自己満足! あんたらは正義のために戦っている俺ってかっこいいって思っているだけのバカ野郎だ! あんたらがやっているの正義のための行動じゃない! ただのテロ行為だ!」
「何を言っても分からないようだな! そんな分からず屋は私が始末してやる!」
奴は怒りに任せ、魔力を解放した。私もつい熱くなってしまった。だけど、正義と言ってバカなことをやっていて、それを正当化するようなバカ相手に負けるわけにはいかない。こいつは必ず私が倒す!
エクスが熱くなっている。改めてジャッジメントライトが行おうとしていることを聞いたのだが、実に愚かだ。奴らはくだらないことのために俺の故郷を滅ぼしたというのか!
(エクス。俺に魔力を注げ。どれだけ俺の威力が上がるか分からないが、試してみる価値はある)
(分かりました。では、私の魔力を流します)
(頼む)
エクスは俺に言われた通り、刃部分に魔力を込めた。魔力が込められたと同時に、熱さを感じた。剣になっても、温もりを感じることができるなんて思わなかった。それと、力が増したような感じにもなった。魔力が俺の体に流れ込むと、こんな感じになるのか。
(これなら奴の盾を破壊できるかもしれない。エクス、速攻で奴を倒すぞ!)
(はい! 行きますよ、ヴァーギンさん!)
エクスは俺にそう言うと、俺を構えて奴に向かって走り出した。奴は迫って来るエクスを見て、にやりと笑っていた。
「直接私を叩こうと思っているようですね。来なさい! 返り討ちにしてあげますよ!」
奴はそう言うと、水の魔力を発して周囲を濡らした。そして、できた水溜りから鋭い氷が現れた!
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