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狭き場所での戦い


 生前、俺は大剣を使った悪党と何度も戦った。大剣を使う奴のほとんどは、大剣の重さや範囲を生かした力任せの攻撃しかしてこなかった。だから、俺的には大剣を使う奴は脳みそが筋肉でできている脳筋野郎だけだと思っていた。しかし、エクスと戦っているイアラーゴと言う男はなかなかやる。大剣を使うが、どの技にも隙がない。そして、魔力の扱いも上級者と言ってもいいくらいの腕前だ。エクスが最初から俺を使うのも納得する。


(エクス、本気を出した方がいいんじゃないか?)


(そうですね……あとで戦うボスのために体力と魔力を取っておきたかったんですが、ここまで苦戦する以上仕方ありません)


 エクスは俺にそう答えると、魔力を解放した。


「おおっ。やっと本気を出したようだね」


 エクスが発する魔力を感じたのか、嬉しそうにイアラーゴはこう言った。


「これだけ魔力を解放するということは、今まで舐めプされてきたってわけか」


「その通りよ。でも、あんたが強いからこうやって魔力を解放したんじゃない」


「そりゃーそうだね。さて、お話はこれくらいにして早く続きをしよう」


 と言って、イアラーゴは大剣を下に構えてエクスに接近した。下から大剣を振り上げるつもりか。だが、エクスは攻撃が来る前に奴のあごに向かって蹴りを放った。エクスの蹴りは奴のあごに命中し、奴は変な顔になった。


「うぐ……あ……」


「言ったじゃない。本気を出すって」


「剣じゃなくて蹴りで攻撃するのか……剣士なのかい、君?」


「勝つためにはなんだってするのよ」


 エクスはそう言って、左手に魔力で作った風を発した。それを奴が使う大剣に向かって放った。


「うおっ? グッ! 剣が動かない!」


「動かないように、強風であんたの剣を封じたのよ。さぁ、覚悟しなさい」


 これで奴の攻撃を封じた。エクスは両手の骨を鳴らしながら奴に近付いた。奴は剣から手を放し、エクスの拳を右手で受け止めた。


「いいパンチだ。骨に響く」


「だったらそのままあんたのその手を粉々にしてあげるわよ!」


 エクスは拳を放った右手に魔力を発し、衝撃波を放った。防御されたと思ったが、受け止めて奴の手が一番近い瞬間を狙い、その時に風の衝撃波を放って攻撃すると考えたんだな。流石エクス。


「グッ……グォォォォォ!」


 右手を傷つけられた奴は、大きな叫び声を上げていた。それほどエクスが放った衝撃波の威力が高かったのだろう。これで奴は右手が使えなくなった。あの大剣も使えないだろう。俺はそう思っているが、安易に考えすぎか。この部屋はジャッジメントライトにとって重要な場所。デリートボンバーを作っているのだから、片手が使えなくなっただけで戦意を失う奴に任せるはずがない。きっと何かしてくるはずだ。エクスもそれに気付いているだろう。




 奴の右手を使えなくしたけど、まだ魔力を放っている。奥の手を使うつもりか? どちらにせよ、斬り落とすまで油断しない。私は奴に近付き、左腕を斬り落とそうとした。だがその時、私は奴の魔力が変化したことを察し、後ろに下がった。


(あいつ、何かするつもりだぞ)


(そのようですね)


 ヴァーギンさんと共に、私は奴がどんな動きをするのか見届けた。傷つけた右手の周りに火が発し、それらは奴の右腕を纏った。


「片手を使えなくしただけで、勝利したと思わない方がいいですよ。魔力にはこんな使い方もあるんだから」


「へー。魔力を操って腕代わりにしたのね。それなりに頭が回るね、あんた」


 奴は火の魔力を使い、腕のように使うつもりだ。奴が発する火は右手のような形となり、私が押さえつけている大剣を手にした。魔力を使うなら、風に傷つけられても無意味ってことね。


「さぁ、覚悟しなさい!」


 奴は大剣を振り上げ、私に向かって振り下ろした。私は横に飛んで奴の攻撃を回避し、机を蹴った。


「なっ!」


 飛んでくる机を見て、奴は魔力のクッションを作り、机を受け止めた。上にあった薬品が入ったビーカーは落ちなかった。それを見た奴は安堵の表情をしていた。


「危険な真似をするなよ? この机の上には配合した爆薬があるんだ」


「デリートボンバーの材料ってわけね。じゃあ後でぶっ壊すか」


「そうはさせないぞ」


 奴は私に向かって走ってきた。接近して斬るつもりか。私は奴を動揺させるため、机を蹴ろうとしたが、奴の右手から発した火種が私に付着した。


「うわ、あっついな」


 私の言動を見た奴はにやりと笑った。まさか、この火種を利用して攻撃できるのか!


「運がないな君は!」


 奴は笑いながら指を鳴らした。その瞬間、火種は大きく広がった。


「残念だったなぁ! 君みたいな私たちに歯向かう奴は、いずれこうなる運命なのだよ! 天罰だよ、これは!」


 なーにが天罰よ。たまたま運がよかっただけじゃない。私は火が付いた服を脱ぎ捨て、上空へ飛んだ。奴は私が服を脱いで火から逃れたことに気付いていない、この戦いを終わらせるなら今だ。私は落下しながらヴァーギンさんを構え、奴に接近した。


「何が天罰よ。天罰が下るのはあんたらの方だっつーの」


 私の言葉を聞いた奴は、目を丸くして驚いていた。その隙に、私は奴の左腕を斬り落とし、続けて剣を振るって右手を斬り落とした。


「なっ……イギャァァァァァ!」


 奴は悲鳴を上げながら後ろに下がったが、その前に私の回し蹴りが奴を襲った。蹴りを喰らった奴は回転しながら宙を舞い、地面に倒れた。


「ふぅ、女の子の服を燃やすなんて、あんたサイテーだね」


 私は気を失った奴に向かってこう言った。




「エクスさん! え……何でそんな格好になっているんですか!」


 戦いが終わった後、私はティノちゃんの元へ戻った。上半身下着姿の私を見たティノちゃんは驚き、周囲を見回した。


「大丈夫よティノちゃん。服なんてここら中にいっぱいあるから」


 と言って、私は倒したジャッジメントライトの戦士の服を奪った。最初の一回目でサイズが合う服が見つかってよかった。そう思っていると、私が持つトランシーバーから通信が入った。


「こちらエンカ。エクス、中の様子はどうだ?」


 エンカから通信か。私はトランシーバーを手にし、中の状況を伝えた。ジャッジメントライトの戦士の半分を倒したこと、アジトの中にデリートボンバーを作る部屋があったこと、その部屋を守る戦士を倒したこと。それらを聞いたエンカは驚いた声を上げていたが、すぐに我に戻ったのか、私にこう言った。


「俺たちの方は今のところ大丈夫だ。アチーナさんの安全も確保されている。今からアチーナさんだけでも逃がそうと思っているけど、お前たちはどうするんだ?」


「アチーナさんを殺そうと考えた奴を倒すわ。それで、デリートボンバーを作る部屋があるから、それもぶっ壊す。逃げるのはそれからにするわ」


「二人だけで大丈夫か? いくら強いと言われても……」


「黒幕は確実に倒さないとダメよ。ここで無視したら、同じような騒ぎをまた起こす」


「うーん……そうだな。とりあえずお前たちは残るってことで上司に説明しておく。また何かあったら連絡する。死ぬなよ。俺があんたを越えるまで」


「それじゃあ私は死なないわね。エンカたちもアチーナさんの護衛よろしくね。それじゃ、また」


 私はそう言って通信を切った。その後、ティノちゃんの方を向いてこう言った。


「ティノちゃん、これから黒幕と戦うんだけど、覚悟はできてるよね?」


「もちろんです。ずっとあなたの傍で戦うと決めたんです。覚悟はもうできています」


「それじゃあ結構。それじゃあ、黒幕の所へ行くわよ」


「はい」


 ティノちゃんは返事をした後、私の横を歩いた。私はヴァーギンさんを鞘に納め、ティノちゃんと共に黒幕の元へ歩いて向かった。


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