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ヘリの中で


 アチーナさんを避難させるため、私たちはアチーナさんが乗って来たヘリへ向かうことにした。まぁ、敵もそのことを把握していて、先回りしている可能性があるが、敵がいれば斬ればいいだけのこと。多少の問題はあるが、どうにでもなる。


 何とかヘリコプターの近くに移動できたが、周りには敵がいなかった。


「アチーナさん、パイロットは無事ですか?」


「ああ。コクピットから顔を出している」


 アチーナさんはコクピットを見てこう言った。怯えた顔のパイロットが見える。物騒な武器を持った連中がいるから、怯えているのか。それとも、別の理由で怯えているのか。後者の可能性があるが、ヘリに行かなければ分からない。私は先頭に立ち、ヘリコプターの出入り口に向かって歩いた。


「開けてくださーい」


 私はこう言ったが、ヘリコプターの扉は動かなかった。


「うーん……開けゴマ!」


「エクスさん、これって手動で開けるタイプですよ。中から操作して開けるタイプじゃありません」


「あらそう。恥ずかしい所を見せちゃったわね」


 私は笑いながらヘリコプターの扉を開けた。中にいたのは、大量のジャッジメントライトの戦士だった。やっぱり敵がいたか。


「ねぇあんたら。ここはアチーナさんのヘリコプターよ。早く出て行かないと、不法侵入で全員叩き斬るわよ」


「できるものならやってみなさいよ。エクス・シルバハート」


 おっと、女の声が聞こえた。ジャッジメントライトの戦士の人混みから、ドレスを着た女が現れた。美人のようだが、女の勘が叫んでいる。あの女はおばさんだ。全身整形して美しさを保っているのだと。


「何よおばさん。偉そうな態度をするわね」


「その言葉、そっくりそのままお返しするわ。あんたみたいな小娘、私が始末してあげるわ」


 おばさんの言葉を聞いたジャッジメントライトの戦士たちは、動揺した様子を見せた。


「おいおい、ラペローラさんが戦うぞ」


「あの人、戦えるのか? 俺、あの人が戦っている様子を見たことないぞ」


「俺もだ。どんな武器を使うのか分からない」


 戦士たちはラペローラと言うおばさんがどうやって戦うか分からないようだ。まぁいい。戦えば分かることだ。


「ティノちゃん、すぐにバリアを張って」


「もう張ってます。エクスさん、ヘリコプターを壊さない程度に暴れてくださいね」


 と、アチーナさんたちの周りにバリアを張っているティノちゃんがこう言った。少し休んだのか、バリアの質が元に戻っている。これなら心置きなく戦える。


「さぁ、かかって来なさいエクス・シルバハート。このヘリコプターをあなたの棺桶にしてあげるわ」


「私を殺す? おばさんのあんたが私を殺すことなんてできないわ。あと十年若かったらできたかもしれないけどね」


 私の言葉を聞き、ラペローラは怒りの形相を見せた。それに対し、私は舌を口から出して挑発した。




 ヘリコプター内での戦いか。アチーナさんが使っているヘリコプターはかなり広く、普通ならホテルの一室と同じくらいの大きさだ。だが、今はジャッジメントライトの戦士たちが乗っていて、部屋の面積の半分が奴らで占めている。こんな狭い中でエクスは戦えるか?


(大丈夫ですヴァーギンさん。心配しないでください)


 俺の気持ちを察したのか、エクスは俺を使っていない。どうやら、本気を出していないようだ。だとすれば、あのラペローラとか言う女性はあまり強くないのか。ならいいか。


「こっちから行くわよ!」


 ラペローラは胸元から二本のナイフを取り出し、エクスに向かって投げた。エクスは飛んでくるナイフを剣ではたき落とし、ラペローラに向かって接近した。


「ふふっ。罠にかかったわね。ナイフは二本だけじゃないわよ!」


 その後、ラペローラは胸の谷間を大きく広げ、そこから無数のナイフを放った。まさか、あんな所からナイフを出すなんて! おえ、年増の乳を見ても嬉しくないな。だが、エクスは飛んでくるナイフを見ても驚きを見せず、剣を振るって対処していた。


「下手な手品ね。整形ででかくしたおっぱいからナイフを出すなんて、品がないわよ」


「ムキィィィィィ! この胸だけはいじってないわよ!」


「じゃあそれ以外はいじったんだね」


 エクスはそう言うと、ラペローラの顔を右手で掴み、そのまま押し倒した。


「が……ががが……」


「うーん。皮膚を触っている感触じゃない。かなりの厚化粧をしてるね」


「うるさい小娘だ!」


 倒れているラペローラはエクスを後ろに蹴り倒した。さっきのアイアンクローの効果があったのかどうか分からないが、奴は手で顔を抑えていた。


「やんなっちゃうわもう。アイアンクローされたせいで化粧が台無しよ」


「化粧と整形をしたおばさんがそんなこと言う? 金を使って体をいじって美しさを保っているんでしょ? それが美しさと言える?」


 と、倒れているエクスは呆れながらこう言った。その言葉を聞いたラペローラはさらに怒り出し、再びナイフを手にした。


「偉そうなことを言うな小娘がァァァァァ! 腹が立つ、お前だけは必ず殺す! 苦痛を与えて殺してやる!」


 と言って、ラペローラは手に持つナイフに魔力を込め、水を発した。これで一体何をするつもりだ?


「死ねェェェェェ!」


 ラペローラは水を纏ったナイフを手にし、エクスに斬りかかった。エクスは起き上がってこの様子を見て、剣を構えた。しばらくしてラペローラがエクスに接近し、ナイフを振り下ろした。エクスは攻撃をかわしたが、反撃をしなかった。


(どうしたエクス? 今なら攻撃できるチャンスだ……そうか)


 俺は理解した。奴は攻撃を終えても魔力を解放し続けている。今、反撃すれば何をするか分からない。


「チィッ、手を出さないのかい?」


「おばさんが何をするか分からないでしょ? 水を纏ったナイフが何かすると思ってね」


 その言葉を聞き、ラペローラの表情が一瞬だけ変わった。俺の予想だが、奴が水を発したのは、水の一部を凍らせ、エクスの体に突き刺そうと考えたのだろう。


「クッ……そこまで考えているの?」


「まーね。水を使う魔力使いは水を凍らせて剣を振るうかのように使えるって聞いたことがあるの。それに、水を針のようにして相手を刺すこともできるってね」


「ふ……フフフフフ。それなりにできる奴ね。だが、私には勝てないよ!」


 ラペローラは持っているナイフをエクスに向けて投げた。エクスは魔力を解放し、目の前に強風を発した。これでナイフの速度を落とそうと考えたのだろう。


「風を放っても無駄よ! 水が凍って伸びる速度までは落とせない!」


 ラペローラはそう言うと、魔力を操ってナイフの一部の水を鋭利に尖らせた。エクスはその攻撃をかわしたのだが、完全にかわすことはできなかった。


「グッ!」


 エクスは左肩に奴の攻撃を受けてしまった。だが、そんなに大きな傷ではない。かすり傷だ。


「かすったか」


「いや……命中しています。我々の仲間に」


 と、ジャッジメントライトの戦士の一人が恐る恐るこう言った。奴が放った鋭利な氷は、エクスの後ろにいた戦士の額に命中していた。ラペローラは苛立ちを見せながら、大きな声で叫んだ。


「あんたら! 何ボーっとしているのよ! 私の援護ぐらいしなさいよ!」


「え……私たちが邪魔にならないんですか?」


「なるわけないでしょ。突っ立っているだけの方が邪魔よ!」


 ラペローラはジャッジメントライトの戦士たちに向かってこう言った。この言葉を聞き、戦士共はエクスを捕まえようとした。


「はぁ、一対多数で戦うつもり? あんたら、私と戦うってなら覚悟を決めてよね。本気を出したら、あんたらじゃあ私を倒すことなんてできないから」


 と、エクスは奴らに向かってこう言った。奴らはエクスから威圧を感じたのか、すぐに後ろに下がった。ラペローラはこの光景を見て、怒りで体を震わせていた。


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