アチーナを守れ
ジャッジメントライトの大男の戦士、ランドロムを倒した私たちだったが、危機は終わったわけではない。敵はまだたくさんいる。奴らの目的はアチーナさんの命。何が何でも守らないと。
「こっちです!」
ギルドの戦士は誰もいない場所を指差し、移動しようとした。だが怪しい。私は近くに落ちていた空の弾薬を手にし、その場所へ向かって投げた。からの弾薬は地面に激突すると、激しい爆発が起きた。
「威力は抑えてあるけど、あれはデリートボンバーね。地雷型があるって聞いていたけど、隙を見て埋めていたのね」
私は煙を見ながらこう言った。ギルドの戦士は爆発に驚き、一瞬だけ解放していた魔力を抑えてしまった。その時、私はアチーナさんの前に立った。敵に狙撃手がいる! 奴はバリアの威力が弱まった今の一瞬を狙い、狙撃したのだ! 私は飛んで来た弾丸を斬り落とし、ティノちゃんを見た。ティノちゃんは自分が何をするか理解していて、すぐにバリアを張った。
「ありがとうティノちゃん。あの人が落ち着くまで、バリアを張って」
「了解です。エクスさん、なるべく離れないでくださいね。私一人では、多分どうしようもできません」
「大丈夫。近くにいるわ」
私は剣を構えてバリアの前に立った。そんな中、ヴァーギンさんの声が響いた。
(敵が来るぞ。しかも大量だ)
(ええ。直接叩くようですね)
私は前を見ながら返事をした。前から様々な武器を持ったジャッジメントライトの戦士共が迫ってきた。私は剣を持ち、襲い来るジャッジメントライトの戦士の足や腕を斬り落とした。
「がァァァァァ!」
「や……やられた……」
「ウオッ! そんなバカな!」
私に斬られた戦士たちは、情けない声を上げながら倒れて行った。最初は勇ましかったジャッジメントライトの戦士共だったが、私が暴れる姿を見て動揺し、後ろに下がっていた。
「あれ? 襲って来ないの? あんたらが狙うアチーナさんがここにいるのに?」
私は挑発のつもりでこう言った。だが、奴らはアチーナさんに攻撃すれば返り討ちにされると学んだのだろう。
「で、やるの? やらないの?」
私は剣先を奴らに見せてこう言った。私に敵わないことを察したのか、奴らは悲鳴を上げて逃げて行った。情けない。
「と……とりあえず何とかなりましたね」
戦士の一人が安どの息を吐きながらこう言った。私はその戦士の方を振り返り、首を横に振るった。
「まだよ。戦意を失ったのはほんの一部。それに、また戦意を取り戻して襲ってくる可能性もあるわ。油断しないで」
「そ……そうですよね」
戦士の一人はまだ戦いが続くと判断し、深いため息を吐いた。そんな中、私は周囲を見回して本当に安全な場所はないか目で確認した。さっきのように安全に見えると思っても、地雷型デリートボンバーが仕掛けられている可能性もある。下手に動くこともできないな。そう思う中、私はあることを思いついた。安全な場所がないのなら、作ればいいのだと。
「皆、敵がいる場所へ向かうわよ」
この言葉を聞いたティノちゃんたちは、目を丸くして驚いた。
「ど……どうしてですかエクスさん! この状態で危険な場所に突っ込むだなんてバカが考えることですよー!」
「確かにね。でも、さっきのデリートボンバーを思い出して。人が寄らない場所に地雷があった。どうして奴らはそこに行かないのか? それはそこに地雷があるってことを知っているから」
私の言葉を聞き、ギルドの戦士たちはなるほどと言いながら頷いた。だが、ティノちゃんはおどおどしながら話を続けた。
「で……ですが、どうして敵の群れに突っ込むのですか?」
「そこに地雷がないからよ。敵を倒せば安全な場所ができる。なければ作ればいい」
「そういう考えですか。ですが、そんなことできるのエクスさんしかいませんよ」
「私だからできるの。ちょっと待っててね。敵がいそうな場所を見るから」
私は魔力を解放し、高く飛び上がった。えーっと……右手の方向に敵らしき姿がたくさんある。広いし、いざとなったらそこにヘリコプターやら避難できる乗り物を呼べばいい。私はそう思い、地面に降りた。
「そっちに行くわよ」
と、右の方を指差してこう言った。
私たちが移動を始めた後、私たちの姿を見た他のギルドの戦士も合流した。その中にエンカはいなかった。まだ誰かと戦っているのだろう。
「おい、あれはギルドの戦士だ!」
「前にいるのはエクス・シルバハートだ! まずい、俺たちじゃ敵わない!」
私の姿を見たジャッジメントライトの戦士共は、怯えながら逃げて行った。私の姿を見て逃げるのなら、戦わずに済むだろう。そんな考えを持っていたが、すぐにこの考えを捨てた。
「我々の存在を否定するアチーナ! 今日が貴様の命日だ!」
上から剣を持ったジャッジメントライトの戦士が現れた。私は飛び上がり、奴の両腕を斬り飛ばした。
「ガッ……お前はエクス……シルバハート……」
「奇襲しようとしたけど失敗したわね。残念でしたー!」
私は奇襲した戦士を蹴り飛ばし、地面に着地した。奇襲して襲う奴もいるようだ。勇気があるな。そんな中、合流したギルドの戦士が話を始めていた。
「何だか、敵の数が増えていないか?」
「と言うか、敵がいる方に進んでいるだろ」
「おいおい、大丈夫か?」
合流した戦士が不安になりつつある。私はバリアを張る戦士に私の考えを話すように伝えた。話を聞いた合流した戦士は、驚きの声を上げていた。
「ないなら作る。その考えはありませんでしたが……」
「今、俺たちの数は……えーっと……六人ですよ。それで多数の敵とやりあうつもりですか?」
「そのつもりよ。私が戦うから安心して」
私は笑顔を作って合流した戦士の方を見た。少人数で多数を相手にする中、不安になる気持ちも分かる。私の笑顔を見ても不安な合流した戦士を見て私はこう言った。
「無理なら戻ってもいいわよ」
「いや。戻りません。ギルドの戦士として、立派に戦います」
「こうなったらやれるとこまでやりますよ!」
「うんうん。その勢いよ」
闘志を振るった二人を見て、私は笑顔で頷いた。
襲い来るジャッジメントライトの戦士を払いのけながら、私たちは安全になりそうな場所に到着した。そこにはジャッジメントライトの戦士がうじゃうじゃいた。奴らは私の気配を察し、一斉に私の方を見た。
「どもー。エクス・シルバハートです」
私の声を聞いた直後、ジャッジメントライトの戦士たちは一斉に逃げた。私と戦うのがそんなに嫌なのか。そう思いながら、私は周囲を見回した。奴らが逃げた時、デリートボンバーは発動しなかった。この辺りに地雷はなさそうね。そう思ったが、前を見てため息を吐いた。
「他の連中は逃げちゃったわよ。あんたはどうしてここにいるの?」
私の前には、木箱の上に座っている男がいた。横には鞘に収まっているレイピアがある。こいつの武器だろう。だが、こいつは逃げなかった。
「質問に答える気がないのね。それじゃ、斬るわよ」
私はそう言って剣を取り、奴に斬りかかった。奴は素早くレイピアを装備し、私の攻撃をかわした。そして、隙だらけの私に向かってレイピアを突き刺そうとした。
(エクス、左だ!)
(大丈夫です。分かっています)
奴の反射速度にヴァーギンさんは驚いていたが、それ以上に私の反射速度に驚きの声を上げた。私は奴の反撃に気付き、少しだけ後ろに下がって剣を振り上げた。振り上げた剣はレイピアの刃に命中したが、奴が持つレイピアの矢はとても柔らかく、壊れることはなかった。
「噂通りの実力者だな」
ようやく男が口を開いた。私はため息を吐き、男を睨んだ。
「どうやら私とやるようね。その度胸だけ認めてあげるわ」
「お前みたいな実力者と一戦交えたくてね。一人こうやって座っていたのさ」
男はそう言うと、魔力を解放してレイピアに火を放った。どうやら、これが奴の本来の戦い方のようだ。
「では自己紹介をしよう。私の名前はバルンシ。ジャッジメントライトの戦士で、レイピアと火の魔力を使う。今後とも、よろしく」
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