公園内で大激突
ギルド内に裏切り者がいた。エルラのことを思い出せば、ギルド内にジャッジメントライトに寝返った奴……あるいは、元々ジャッジメントライトに所属していた奴がいるってことも私は考えていた。だが、それは少人数だと思っていた。現実は違った! 大人数の戦士がジャッジメントライト側の人間だった!
「死ね! エクス・シルバハート!」
ギルドの戦士だった男が、私に向かって剣を振り下ろしてきた。この人、モツアルトのギルドでよく見かけた人で、よく通りすがった私に挨拶をしてくれた人だ。礼儀正しい人だなーって思っていたけど、それはもう過去の話。今のこいつはただの敵だ!
「その程度で私を倒せると思わないで!」
私は剣を振り上げ、奴の右腕を斬り落とした。痛みで動きを止めている隙に、私は奴を蹴り倒した。
(エクス! まだまだ敵が来るぞ!)
(そのようですね。ジャッジメントライトの連中、どこまでギルドの人間に手を出したのやら)
私はため息を吐きつつ、前から剣を持って迫って来る敵を睨んだ。ギルドの裏切り者は私の実力を知っているから、殺意をこもった目で見られたらたじろいで動きを止めるだろう。だが、私の実力を知らないバカは私を見て笑った。
「そんな可愛い目で見るなよ。俺に惚れたか?」
「救いようのないくらい品とセンスのない冗談ね。くだらなすぎて笑いも起きないわ」
「そんなこと言うなよ。お前は強いって話だが……その実力、俺に見せてくれよ」
そう言って、その男は大量のナイフを取り出し、ジャグリングのような動作を始めた。
「お前にこれができるか? 俺の技、ナイフジャグリング。どこから、どのタイミングでナイフが飛んで来るか分からないだろう?」
「大道芸を見に来たわけじゃないの。邪魔だからどいて」
と言って、私は猛スピードで奴に接近して両腕を斬り落とした。奴は目の前にいたはずの私が後ろにいたことに驚いていたのだろう。目を開いていた。
「え……そ……そんな……」
声を漏らす中、奴は両腕を斬られた激痛を感じ、悲鳴を上げた。こんな奴は無視しよう。そう思った私は急いでアチーナさんの元へ向かった。
私は迫りくる雑魚を切り倒しながら何とかアチーナさんの元へ戻った。ティノちゃんが懸命にバリアを張ってくれたおかげで、傷はないようだ。二人は私を見て安どの表情をしていた。
「エクスさァァァァァん! やっと戻って来てくれたァァァァァ!」
「ごめんねティノちゃん。予想以上に現場が混沌してたからちょっと戸惑った」
「そりゃーそうですよ! ギルドの戦士が私たちを攻撃するんですよ? これ、一体どうなっているんですか!」
「ジャッジメントライト側の人間がいたのよ。このテロの時までに素性を隠していたのよ。ちょっと待ってね、斬って来るから」
私はアチーナさんの命を狙う輩に接近し、斬り始めた。私がこの場に来たことで、周りにいたジャッジメントライトの連中は動揺し始めた。
「クソ、噂通り強い奴だ」
「こんな化け物だったとは……見た目はただの少女なのに」
「人を斬る時、何も考えていないのかこいつは? 恐ろしい奴だ……」
奴らは私を見て恐ろしいとか化け物とか言っている。どうやら私を恐怖の対象としか見ていないようだ。
「ねぇ、かかって来なさいよ」
私は奴らに向かってこう言ったが、奴らは怖がるだけで動こうとはしなかった。
「あんたらが売ってきた喧嘩でしょ? あんたらが起こした騒動でしょ? 当事者が動かないでどうすんのよ? さぁ、かかって来なさいよ。その手に持っている銃は何? おもちゃ? 模造品? それで敵を撃つんじゃないの? やってみなさいよ。そのおもちゃで攻撃してみなさいよ」
私は挑発のつもりで奴らにこう言った。見下すような目で、相手をイラつかせるような口調で。その言葉を聞き、私の態度を見た一部のジャッジメントライトの戦士が歯ぎしりをし、私に銃口を向けた。
「このクソ女! 我々はジャッジメントライトだ! 悪を滅ぼす絶対正義の存在だ! 悪が我々を愚弄するなど、絶対に許さなァァァァァい!」
そんなことを言って、その戦士は私に向かって発砲した。私飛んで来た弾丸を剣で弾き、そいつの左足に命中させた。
「グッアアアアア!」
怪我をした戦士を見た他の連中は、どよめきの声を漏らしていた。
「なんて奴だ、弾丸を弾いて命中させるなんて」
「こんなこと、普通の戦士じゃできねーよ」
「か……勝てっこない。こんな化け物相手を相手にしたら私たちは殺される!」
「に……逃げろ!」
完全に戦意を失った戦士共は、怪我をした戦士を見捨てて逃げて行った。そんな中、ギルドの戦士たちが現れ、逃げた戦士を斬り始めた。生きて逃がそうと思ったのに……まぁいいか。仲間を見捨てて逃げるような連中の命なんて、価値はない。
私はティノちゃんとアチーナさんに近付き、とりあえず周囲が安全になったことを伝えた。今、することはアチーナさんを安全な所に避難させること。私は敵が来たらとにかく斬る。それだけだ。
「ティノちゃん、何かあった時のために常に魔力を解放しておいて」
「エクスさん、まだ戦うのですか?」
ティノちゃんは私の右手を見てこう言った。まだ剣を持っていることを気にしているのだろう。
「敵はどこから来るか分からないわ。それに、戦いは終わっていない。奴らのことだから、デリートボンバーを使うかもしれないから」
「デリートボンバーですか……さっき、爆発しましたよね」
「ええ。それで戦士が一人死んだわ。多分、ジャッジメントライトの一部も爆発に巻き込まれて死んだわ」
「そんな……」
この話を聞いたティノちゃんはショックを受けていた。あまりこんなことを伝えたくなかったんだけど……事実だからしょうがない。危機感を持たないと。いつ、自分がデリートボンバーに巻き込まれて死んでもおかしくない状況だから。
そんな中、何かが飛んでくる音が聞こえた。私はすぐに剣を持ち、飛んで来た物を斬り落とした。
「大丈夫ですか!」
「ああ。何とか大丈夫だ。怪我はしていない」
アチーナさんの返事を聞き、私は安堵の息を吐いた。前を見ると、かなり大きな大男がジャッジメントライトの戦士を連れてこっちへ向かっていた。飛んで来た物を見ると、それは大きな斧だった。どうやら、あの大男がこの斧を投げて攻撃したのだろう。
「みーつけた! あいつだ、アチーナだ! 皆、攻撃して奴を殺すぞー!」
大男はそう言うと、周りにいた戦士たちが一斉に私たちに襲い掛かった。だが、横からギルドの戦士を引き連れたエンカが現れた。
「こいつらは俺たちがやる。お前はあのデカブツを倒してくれ!」
エンカはこう言ったが、ジャッジメントライトの戦士を見ては嫌そうな顔をした。どうやら、ジャッジメントライトの戦士の中に見知った戦士がいるのだろう。
「大丈夫? 元仲間を斬ることになるわよ。デカブツの前にあいつらを片付けることもできるけど」
「俺たちに任せろ! とにかく俺たちはアチーナさんを守らないといけないんだ!」
「分かったわ。だけど、これだけは言わせて。情に流されると斬られるわよ。裏切った奴は敵。情けは捨てろ。いいわね?」
「ああ。分かった」
エンカは敵の方を向いて、戦いを始めた。大男は戦いを始めたエンカたちの方を見て、にやりと笑っていた。あいつ、何かをするつもりだ。私は奴が何かをする前に攻撃をして邪魔しようと考えたが、その前にティノちゃんが雷の矢を放って大男に攻撃を仕掛けた。
「うーん。ビリビリして痛いぞー。そこのチビ、お前がやったんだなー」
「そうです……そうです! 私がやりました! 文句があるんですか!」
と、ティノちゃんは私の陰に隠れながらも大声で言葉を返した。うんうん。それなりに度胸が付いたようだ。
「文句? あるに決まっているだろ? チビが私に攻撃をするなんて生意気だぞ! ムカつくから、ぶっ殺してやる!」
と言って、大男は斧を持って私とティノちゃんに向かって走り出した。
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