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アマデウス公園でのイベント


 思わぬ人からいい情報を手にすることができた。子供ってあまり嘘をつかないから信用できる。私はスカートをめくった子供を追いかけまわしているティノちゃんを呼び、公園で政治家の演説があることを伝えた。


「政治家の演説? どうしてここでやるんですかね?」


「近々政治面で何かあるんじゃない? それで、メディアを通じて全国の皆さんにアピールするんでしょ」


「政治面ですか……」


 政治家と聞き、ティノちゃんの表情は暗くなった。そうか、ウラガネのことを考えているのか。


「ティノちゃん。ウラガネは悪いことをしたから、それで罰が当たったのよ。悪いことをしたら、その反動が返って来るもんよ」


「そうですね……過ぎたことだし、もう気にしないようにします。あの人のことも、エルラさんのことも忘れます」


「それが一番。悪人のことなんて覚えていても損しかないから」


 私はティノちゃんにこう言った後、アマデウス公園を一通り見ることにした。コンビニで遭遇したジャッジメントライトの立てこもり犯は、コンビニを拠点としてテロを起こすと言っていた。かなり大掛かりな作戦を奴らは考えているのだろう。そう思いながら、私はアマデウス公園を歩いた。しかし、アマデウス公園は思ったよりも広い。演説を行うであろうステージの周りは遊具がかなり多く、木々もかなり生えているため、身を隠しながら狙撃ができる。そして、デリートボンバーを隠すことができる。


 厄介なことになりそうだなと考えていると、携帯電話が鳴り響いた。相手はモツアルトのギルドの重役だった。そうだ、何かあった時のために連絡先を交換したんだっけ。そう思いつつ、私は携帯電話を手にした。


「はい、エクス・シルバハートです」


「エクス君か。今、君が退治した立てこもり犯からいろいろと情報を得ることができた」


「アマデウス公園のテロのことですね」


「そうだ。奴らは詳しいことを我々に教えてくれたぞ」


「私には知らないって言ったくせに。あいつら、嘘をついていたのね」


「そんなに怒らなくてもいいだろう。情報が聞けたんだからこれで良しにしてくれ。とにかく、戻れるならギルドへ戻って共に話を聞いてくれ」


「分かりました。すぐに戻ります」


 私は携帯電話の通話を切り、ティノちゃんの方を向いた。


「あのバカ共、私たちに何も知らないって嘘を言っていたわ」


「そうですね。まぁ、とりあえず話を聞くために戻りましょう。ここで何を企んでいるかはっきりと知るチャンスです」


「ええ。あとであいつらの手足を斬り落としてやるわ」


「それは止めましょう」


 ティノちゃんにこう言われた後、私とティノちゃんは急いでギルドへ戻って行った。




「おお。待っていたぞ」


 ギルドに入ってすぐに重役の人が私にこう言った。その後、すぐに取調室へ案内してくれた。部屋の中で座っている立てこもり犯は全員動きが止まっており、上を向いたままよだれを垂らしていた。


「自白剤を使ったんですね」


「仕方ないと思ったんだ。非道なことだと思うが……」


「うーん。まぁそうですね、仕方ないですね。あいつらの方がよっぽど非道なことをやっていますから、喧嘩両成敗って感じでいいと思います」


「そんな感じでいいんですか?」


 ティノちゃんがおどおどとしながら私にこう言ったが、私としての考えは悪人が取り調べで何をされようがどうでもいい。むしろ、早く本当のことを喋って楽になれと思っている。口が堅かったら、どんな手でも使えばいいとも思っている。


「いいのよ。奴らは極悪非道のクソ野郎。自白剤を大量に飲まされようが何されようがかわいそうって気持ちがわかないわ。それよりも、あいつらから得た情報は?」


「ジャッジメントライトは明後日に行われる政治家、アチーナの命を狙っている」


 アチーナ? そんな名前の政治家っていたっけ? あまり分からないが、ヴァーギンさんは驚きの声を上げていた。


(知っているんですか、ヴァーギンさん?)


(ああ。俺の多数いる知り合いの一人だ。たまに俺にジャッジメントライト絡みの依頼をしてくれた)


 ジャッジメントライト絡みの依頼? あいつらのような金さえ積めば組織票も汚い仕事もやりそうな連中に絡む仕事を政治家が……それにヴァーギンさんに依頼するのだろうか? 私はアチーナって人がどうしてあいつらが絡んだ依頼をヴァーギンさんに頼んだのか聞こうと思ったが、重役の人が話を続けた。


「あいつらはピアノタワーのテロで使われた兵器、デリートボンバーを使うつもりだ。それを使い、周りのものを巻き込みつつもアチーナ氏を殺すつもりだ」


「無差別殺人を行うわけですか……酷い」


 話を聞いたティノちゃんが、怖そうにこう言った。確かに目的を果たすためなら、周りがどうなってもいいという考えは恐ろしい。


「とにかく今はテロの対策を考えよう。奴らが動く前に、こちらが動けば防げるはずだ」


「分かりました。ピアノタワー崩壊の二の舞のようにならないように頑張ります」


 私は力強く重役にこう言った。




 二の舞にならないように頑張る。そう言ったが、どうやって頑張ろうか。部屋に戻った私はベッドの上でずっと考えていた。私の顔を見たティノちゃんが、心配した表情で私に近付いてきた。


「何か考えているのですか?」


「次のテロを防ぐために、どうやって動こうかイメージしてるのよ。でも、全然イメージが浮かばない」


 私はため息を吐きながらこう言った。ティノちゃんはそうですかと呟き、何かを考えた。


「ジャッジメントライトは次のテロもデリートボンバーを使ってくる可能性もありますね」


「絶対使うわ。ピアノタワーのテロから少し経っているから、改良型の奴を使う可能性が大きいわ。威力は確実にピアノタワーの時よりも上がっているし、もしかしたら短時間で爆発するってことも考えられるわ」


「あいつらがやりそうですね」


「そうなのよねー。テロを止める方法ってないのかしらね?」


「うーん……何らかの理由で中止ってことになればいいんですが」


 何らかの理由で中止? ティノちゃんの言葉を聞いた私は閃いた。


「閃いた! テロが起きそうなイベントがあるんだったら、そのイベントを中止にしちゃえばいいのよ!」


「イベントを中止に? ま……まさか、アチーナって人の所へ行って病気になりそうな薬を……」


「そんな物騒なことはしないわよ。アチーナに命を狙われているから演説止めろって言えばいいのよ。難しく考えていたけど、簡単な答えがあったじゃない」


 私は喜びながらこう言った。だが、ティノちゃんは神妙な顔でこう言った。


「でも、私たち一般のギルドの戦士の言うことを聞いてくれますかね? エクスさんはピアノタワーの事件で活躍して有名になりましたけど、立場としては流浪のギルドの戦士。一般のギルドの戦士と比べて立場は低いですよ」


「多分どうにかできるわ。それか、ここのギルドの重役に相談してアチーナって人に話をできるようにしてみるわ」


「この作戦が計画通りに進めばいいんですけど……」


「可能性は多分低いけど、やってみるだけ価値はあるわ。どんなことも一度やってみないと分からないもんよ」


「そうですね。これでイベントが中止になって、テロの計画が台無しになればいいんですが」


 ティノちゃんはため息を吐きながらこう言った。確かにそうだ。演説が中止になってテロ計画がパーになれば誰も血を流さなくて済む。死傷者ゼロで建物も無事で終わる完璧でパーフェクトなテロ防止計画予定だけど、果たして私たちの言うことを政治家が聞いてくれるか、そもそも話を聞く気があるのか分からない。んー、自分の命が係わることだからちゃんと話は聞いてくれるかもしれないけど、まぁやってみないと分からないわね。今日はもう遅いし、明日話をしよう。


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