モツアルトでの会議
あーあ。嫌なのに無理矢理会議に参加されることになったよ。会議って基本的には安心な所でギャーギャー騒ぐ重役の連中しか出ないし、私はそんな奴らにいろいろと指示されたくない。そう思っているのに、どうして会議に出なきゃならないんだろう? それだったら、エンカを相手に剣の稽古をした方がよっぽどいい。
「着きましたよ。エクスさん」
そう言って、重役の護衛の人が扉を開けてくれた。ティノちゃんは頬を膨らませる私の方を見て、小声でこう言った。
「こうなった以上、出るしかありませんよ」
「へぇ……」
私は思わず情けない声が出た。隙を見て寝ようかなー。
無理矢理と言う形で、私は会議室に入れられた。すでに何人かの重役が席に座っていて、一部空席があった。もしかして、私とティノちゃんのための席なのだろう。用意しなくてもいいのに。
「エクス・シルバハート、ティノ・オーダラビト。開いている席に座ってくれたまえ」
と、中央にいるおっさんがこう言った。私とティノちゃんは空いている席に座り、周りを見た。うわー、周囲にいる重役のおっさんたちが私たちをガン見してるよ。まぁ、変な目で見ていないことは確かだ。
「では会議を始める。その前に、お二人はバッハの町のテロで活躍した戦士だ。まず、テロの首謀者と戦ってくれたことを感謝する」
と言って、重役のおっさんたちは一斉に頭を下げた。うーん……あの騒動は食い止めたって感じはしないんだけど。そう思っていると、中央にいたおっさんが私にこう言った。
「バッハのギルドには私の知り合いがいる。君が今回のテロは引き分けのような形と言っていたことも知っている」
「そうですか。実際そうでしたし、私は褒められることは何もしていません」
「犠牲者がいなかったんだ。それだけでいいんだ」
慰めるようにこう言われた。まぁ、誰も死ななかったってことは本当によかったと思う。
「では、本題に入ろう」
おっさんの一人がそう言うと、大きなモニターを皆の前に出した。モニターにはすでに次のジャッジメントライトの動きが書かれていた。だが、これはあくまで予想だろう。
「これって奴らが次に起こすであろうテロの話ですか?」
「そうだ。だが、奴らは確実に次のテロを起こそうと考えている。この前、ジャッジメントライトの一部がこの町で変な動きをしていた。そいつらを捕まえ、尋問を行ったんだ」
「奴らは口が堅いと言いますが、どんな方法で奴らの口を割ることができたんですか?」
「それだけは答えることができない。だが、テロを起こすことを前もって知ることができた」
おっさんはそう言って咳ばらいをした。まぁ、口が堅い人の口を開かせるには、拷問。あるいは自白剤を使うしかない。メディアの連中がそんなことを知れば、バカ騒ぎを起こすからあまり言えないのね。
「奴らはアマデウス公園でテロを起こすつもりだ」
「アマデウス公園? 一体どんな所ですか?」
ティノちゃんがこう聞くと、後ろにいた人が私とティノちゃんにアマデウスと言う名の公園の地図や資料を渡してくれた。ほうほう。公園と言っているが、かなり大きいようだ。遊具はもちろん、ライブイベント用のステージもある。
「奴らの狙いまでは聞けなかったのだが、場所を特定することができた。では、これからのことについて話をする」
おっさんはそう言って話を続けた。それから、おっさんたちは各々の予想していることを話し、茶化し、叫びあった。予想しても意味がない。場所は分かっても、日付やテロを起こす理由を把握できていないのなら、もう少し情報を得た方がいい。最後まで話を聞けなかったと言っているが、拷問や薬に頼りすぎて捕まえた奴を死なせてしまったのだろう。話を聞きだすのが下手なのかなー?
会議が始まって一時間は経過したが、おっさんたちは私とティノちゃんのことを気にせず口論を続けていた。こんな無駄なことをやっていても無駄だし、さっさと会議から抜け出そう。私はティノちゃんの服の裾を引っ張った。
「ふぇ? エクスさん? どうかしたんですか?」
「暇だし、時間の無駄だしここから抜け出すわよ」
「え」
おっと、ティノちゃんが大声を出そうとしたため、私はティノちゃんの口を塞いだ。
「大声出しちゃダメよ。あのおっさんたちの予想なんて当てにできないわ。とりあえず、アマデウス公園をこの目で見たいからそっちに向かうわよ」
「い……いいんですかね? 会議から勝手に抜け出しても?」
「後でお花を摘んでいましたって言えば納得するわよ。今ならおっさんたちは騒ぐのに夢中だから、私たちが抜けても気付かないわよ」
「後で叱られますよ」
「戦わない奴の怒声なんて聞き流して適当にはいはいって言えばいいのよ。それじゃ、行くわよ」
その後、私はティノちゃんと共に会議を抜け出した。やはり私の予想通り、おっさんたちは言い合いに集中して私たちが抜けだしたことに気付いていない。追いかけてこないんだから。
「さて、それじゃあ公園に行きましょうか」
「ばれないことを祈っています……」
不安な顔をするティノちゃんだが、私はその不安を払しょくするかのように笑顔を振りまいた。
外に出た私たちはアマデウス公園に向かおうとしたが、その前に小腹が空いたのでコンビニに行くことにした。時刻は十四時。お昼は食べたけど、しっかり食べてないからちょっと小腹が空いたのかしら。
コンビニへ到着し、やる気のないバイトの挨拶を耳にしながら私はおにぎりとサンドウィッチのコーナーを調べた。それなりに物はあるけど、ランチタイムが終わった直後だからおいしそうな物はないな。そう思い、何を買おうか悩んでいた。その時、新しいお客が入って来たのか、バイトのやる気のない挨拶が再び聞こえた。だが、それはすぐに絶叫に変わった。
「全員大人しくしろ! 私たちの言うことを聞け!」
入口の方を見ると、銃を持った三人組がレジの前で騒いでいた。黒いマスクをしていて、黒い服と黒いズボンを身に着けている。まぁ、見ただけでコンビニ強盗だとは分かった。しかし、ただの強盗じゃない。もし、お金を盗むとしたら大きな袋を用意するが、奴らはそれを用意していない。盗みが目的ではないとしたら、わけあってこのコンビニを襲ったのだろう。
「ヒッ……ヒェェェェェ!」
悲鳴を上げたやる気のないバイトは、強盗対策用で用意されている警察かギルドの戦士を呼ぶボタンを押そうとしたが、三人組の一人がバイトに向かって発砲した。弾丸はバイトの腕を撃ち抜き、後ろの壁に命中した。
「変な動きをしたら次は殺す」
撃った奴は偉そうな口調でこう言った。腹立つな。私は周囲を見回し、客は私とティノちゃん以外いないことを察し、ティノちゃんにこう言った。
「とりあえず奴らの言うことを聞きましょう」
「え? どうしてですか?」
「あいつらは強盗じゃないわ。何らかの目的で武装してこのコンビニに襲い掛かった」
「目的? お金が欲しくてこんなことをするのでは?」
「お金が欲しかったら、袋が欲しいよね? あいつらはそれを持っていない。それに、あいつらの動きをよく見て」
その言葉を聞いたティノちゃんは、あることに気付いて声を出した。
「あいつら、レジに注目していない。どちらかと言えば、周囲を見ています」
「その通り。本当に金が欲しいのなら、一直線にレジに向かうはず。なのに、奴らはレジに手を出さず周りをキョロキョロ見てるだけ。なーんか怪しいと思わない?」
「そうですね。あの人たち、一体何のためにこんなバカな騒ぎを起こしたんでしょうか?」
「ま、それは後から調べるわ」
私とティノちゃんがこう話をしていると、三人組の一人が私とティノちゃんが話をしていることに気付き、銃を向けながら近付いた。
「おい! お前ら何を話している?」
「あんたらに内容を話しても、意味がないわ。それより、何でコンビニを襲ったの? 暇? それとも頭のネジがどっかいっちゃったの?」
私は相手をバカにするような口調でこう言った。だが、奴は怒りもせず、小さく笑い始めた。何で笑っているの? 気持ち悪い。
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