乗ったバスの中での出来事
私とティノちゃんは次の目的地である町、モツアルトへ向かうためにバスに乗った。だが、そこにジャッジメントライトらしき奴らがバスジャックを起こした。目的は私の命。私は小さな剣で奴らの武器である銃の銃口を斬り落とし、笑みを見せながら近付いた。
「ヘッ、銃を斬り落としただけでいい気になるなよ!」
「俺たちは銃より、こいつの方を愛用しているんだからな!」
と言って、奴らは全長五十センチぐらいのナイフを取り出した。ほう。ナイフ使いらしいが、この狭い空間で自由自在にそのナイフが使えるかどうか、ちょっと見てみたいな。
「覚悟しろ、エクス!」
男の一人が私に向かってナイフを振り下ろした。振り下ろされるナイフの刃は、性格に私を狙っている。どうやら、ナイフを使っての戦闘経験をそれなりに積んでいるようだ。
「死ね!」
私を追い込んだと思ったのだろう、奴はナイフを構えて私に突進してきた。私は上の荷物置き場に手を伸ばして掴み、突進してきた奴に向かって蹴りを放った。私の蹴りは奴のあごに命中したため、かなり痛いダメージを与えたと思う。だが、奴はナイフを手から離さなかった。
「グッ! クソッ!」
あごに蹴りを受けても、奴はまだ戦うつもりだ。私は荷物置き場から手を放し、床に降りてしゃがみつつ奴の近くに接近した。
「なっ!」
「そこそこ戦い慣れているようだけど、まだまだ甘いわね」
私はそう言って、小さな剣を逆手に持って奴の左わき腹に向かって振り上げた。小さな剣の刃は奴の腹に命中。深く傷つけることに成功した。
「ガッ! ハァッ!」
傷ついた奴は腹を抑えながら近くの座席へ転倒した。まずは一人と思ったが、そこでティノちゃんの悲鳴が聞こえた。
「おい! こいつがどうなってもいいのか?」
いつの間にか、もう一人の敵がティノちゃんを人質にしていたようだ。ティノちゃんの首元にはナイフが近付いており、私が変な動きをしたらティノちゃんの命はないだろう。だが、私が何かしなくても、いずれ奴は倒れるだろう。
「あなた……どこを触っているんですか?」
ティノちゃんは怒りで震えながらこう言った。敵は右手でナイフを持ち、左手でティノちゃんが動かないように拘束していた。だが、奴の左手はティノちゃんの胸元を触っていた。
「どこって? ああ。俺、胸を触ってたのか。不意に触ったとしても、でかくないから触っても嬉しくないな」
奴の言葉を聞いたティノちゃんは、強い魔力を解放した。解放した時の衝撃波で、ティノちゃんを拘束していた敵は窓から外へ飛び出した。
「ギャアアアアアァァァァァ……」
敵は悲鳴を上げながら後ろへぶっ飛んで行った。あ、暴走族が乗る車が奴をはね飛ばした。まぁ、悪いことをしたから自業自得ね。
「な……何だと! 俺の仲間が!」
運転手を銃で脅していた奴が、仲間二人があっという間に倒されたことを知って驚いた。奴は私を睨みながら銃を構えたが、その前にティノちゃんが火の玉を発し、奴が持つ銃を破壊した。
「おわっ! 俺の銃が!」
「残念。あんたらが何を考えていたか分からないしどうでもいいけど、いろいろとお話してもらうわよ」
私はそう言いながら奴に近付いた。だが、奴は私に向かってナイフを振り上げた。
「悪いがお前に何も話すことはない。お前はここで死ね!」
「人に死ねって言ってはいけませんって子供の頃に習わなかったの? それか、ジャッジメントライトは敵対する人間なら暴言を吐いてもいいって教えたのかしら?」
私の言葉を聞き、奴の肩が少しだけ動いた。やっぱり、こいつらはジャッジメントライトの人間かもしれない。そう思った私は、更に言葉を続けた。
「あーあ、やっぱりそうなのね。あんたら、あの物騒なイカレ宗教もどきに入っているのね」
「うるさい……」
反応した。ジャッジメントライトのことを悪く言ったから、怒り出したぞ。
「あのイカレ宗教もどきに入っている人間ってどうしてこんな騒動を起こすのかしら? 正義のためとか言っているけど、あんたら正義って言葉の意味知ってるの? こんな裏ギルドのような野蛮人のことをやって正義って言えるのかしら?」
「黙れ」
「敵対する人間を見つけたらどれだけ周りに迷惑かけてもいいから殺せって言われているのかしら? そんなことをするのって、マフィアの鉄砲玉ぐらいよ。まぁ、ジャッジメントライトもマフィアみたいなもんね。何かあったら敵対する人間を殺す。あーあ、おっかないおっかない。どうしてこんなイカレ集団が存在するのやら。本当にこの世から消えてほしいわー」
「うるさい! 黙れ! 俺たちはジャッジメントライトに救われた! だから、俺たちのような人間にとっては、ジャッジメントライトが絶対だ!」
やーっとプッツンしたか。どうやら、奴らは過去に何かあって弱い立場にいたけど、ジャッジメントライトに救われたみたいね。話を聞く分にはいい話に聞こえるけど、ジャッジメントライトは弱い立場の人間を利用するために救うとも思うわ。あーあ、この人、自分がいいように使われているってことを知らないみたいね。
「ジャッジメントライトに敵対する人間は、この世から抹消する!」
と言って、奴は私に向かってナイフを振り回し始めた。私は奴の攻撃の隙を見て、小さな剣で奴の腹を斬った。だが、奴は痛みよりも私に対する怒りが強いせいで、ダメージを負っても私に向かってナイフを振り回した。
「あなた、そのまま動くと傷が開くわよー」
「うるさい! 死ね!」
少し怒らせすぎたかな? 奴の怒りは爆発し、止まることを知らない。さて、仕方ないし奴の腕を斬り落とそう。そう思った時、運転手が悲鳴を上げた。前を見ると、外には道路を渡ろうとするよぼよぼのおばあちゃんがいたのだ。運転手は急にブレーキを踏み、その衝撃でバスの中を襲った。
「おわっ!」
「キャアッ!」
「あだっ! 頭をぶつけた……」
などと、周囲から乗客の悲鳴が聞こえた。私はこうなることを予想して身構えていたから大丈夫だったが、私と戦っていたジャッジメントライトの一員は無事ではなかった。急ブレーキの衝撃で持っていたナイフを手放してしまい、運悪く落下したナイフが左胸に突き刺さってしまったのだ。
「あっ! 大丈夫?」
私は奴に近付いてこう聞いたが、奴はにやりと笑いながらこう言った。
「エクス……シルバ……ハート……貴様は……ジャッジメントライトの……敵だ……俺の仲間が……いずれ……お前を殺すだろう」
と言って、奴は倒れた。奴の脈を調べたが、もう助からないと私は察した。
「ど……どうしましょう……か……」
バスの運転手は、恐る恐る私にこう聞いた。私は少し考えた後、こう答えた。
「この近くのギルドに連絡を。それからギルドの指示に従って」
バスジャックの騒動は終わった。その後、運転手は動揺しながらも、予定通りバスを走らせた。騒動が終わって数分後、バスはモツアルトのバス停で止まった。そこにはすでに、連絡を受けたギルドの戦士たちがいた。
「大変でしたね。バスジャック班の処分は我々の方で行います」
「お願いします」
運転手はバスの中に入って来たギルドの戦士を見て、何度もお願いしますと言いながら頭を下げた。そんな中、ギルドの戦士は私の姿を見て驚いた。
「あなたはエクス・シルバハート! まさか、このバスに乗っていたとは」
「バスジャック班の狙いは私の命。いろいろと話すことはあるけど、まずは乗客を降ろしてあげて」
私の言葉を聞いたギルドの戦士は、一班の乗客の相手を優先に行った。私がいたおかげで、助かると思っていた人が多数いたのだが、中には驚いて気絶している人もいた。乗客が降りた後、ギルドの戦士は私に近付いた。
「今回の話、ギルド内で話してもらってもよろしいでしょうか?」
「いいわ。モツアルトのギルドってここから近い?」
「歩いて五分程度です」
「分かったわ」
その後、私はティノちゃんと共にバスを降り、ギルドの戦士と共にモツアルトのギルドへ向かった。
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