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ジャッジメントライトを探しに


 とりあえずティノちゃんに英雄、ヴァーギン・カリドが剣となってこの世界に帰ってきたってことを知らせた。だけど、このことは私とティノちゃんだけの話にしておく。他に人が剣となったヴァーギンさんに触れて、ネットなどにこのことを伝えたら大変なことになる。ジャッジメントライトがこのことを知ったらどんな動きをするのだろうか。考えたくない。


 今、私たちは旅立ちの支度をしている。バッハでの戦いは終わったが、まだジャッジメントライトは壊滅していない。それに、今回のテロで奴らはデリートボンバーの威力を確認した。それを利用して新たなテロを起こすかもしれないし、また新たにデリートボンバーの改良を行う可能性もある。早くあいつらを倒さないと、世界が混乱する。


「エクスさん。いつ旅立ちますか?」


 私が支度をしていると、私より早く旅立ちの支度を終えたティノちゃんがこう聞いた。浦東はすぐに旅立ちたいけど、目を覚ますのが遅かったのと、話で多少時間を使ったためもう日が暮れ始めている。


「明日には行くわ。当てのない旅がまた始まるけど」


「奴らを倒すまでこの度は続くって覚悟を決めています」


「うん。その意気込みよ。根性見せないと」


 私は根性を見せるティノちゃんに笑顔を見せた。そう話をしていると、外から声が聞こえた。


「今、話が聞こえたのだが、入ってもいいか?」


 ソセジさんの声だ。どうやら、私とティノちゃんが明日旅立つことを聞いていたようだ。


「はい。どうぞ」


 私が返事をすると、ソセジさんが部屋に入ってきた。


「まず、今回の騒動の解決に一役買ってくれてありがとう。君たちがいなければ、被害が広がっていた」


「いえいえ。でも、ピアノタワーが崩壊してしまったので、私は完全にこの戦いに勝利したとは思ってもいません」


「そうか……だが、死人がいなかったのは奇跡だ。本当にありがとう」


 と言って。ソセジさんはもう一度頭を下げた。ソセジさんは頭を上げた後、私とティノちゃんの方を見た。


「明日、旅立つと話を聞いたんだが……本当か?」


「はい。奴らはどこかで騒動を起こすと考えています。今回のテロで、デリートボンバーの威力が分かったから、次は大きな町で騒動を起こすだろうと私は思っています」


「次のテロのことも考えているのか」


「奴らのことです。きっと近いうちに同じようなバカ騒ぎを起こします。そこでもう一度奴らを倒し、ボスの居場所を吐かせようと思います」


「ボスの居場所……エクスさん。もしかして君は……」


「ええ。ジャッジメントライトはかなり危険な組織です。手っ取り早く潰すには、頭をぶっ飛ばせばいいんです」


 どうやら、ソセジさんは私が考えていることを当てているようだ。私はジャッジメントライトを速攻で倒すため、奴らの本拠地とボスの居場所を突き止めようとしているのだ。


「ツデクは上の人間にとか言っていたので、奴よりも上の立場の人間がいます。次のテロでそいつらが出てきたら、何が何でも話を聞きだそうと思います」


「君のことだから、物騒なことをやりそうだな」


「ええ。話を聞きだすためなら腕の一本平気で斬り落とすつもりですよ」


 この話を聞いていたティノちゃんは、恐ろしさのあまり体を震わせていた。


「ああ、驚かないでティノちゃん。敵の腕を斬り落とすのは、あくまで最終手段だから」


「何も言わなかったら斬るつもりですか?」


「まぁね……」


「物騒なことを考えていたら、敵は何も言いませんよ!」


 確かにティノちゃんの言う通りだ。逆に痛めつけたら敵は何も言わなくなるなー。ちょっと過激なことを考えるのは止めるか。そう思う中、ソセジさんは咳ばらいをしてこう言った。


「とりあえず、礼がしたい。私のおごりで食事でもどうだ?」


「おお! 食事ですか! いいですねぇ」


 何と、ソセジさんのおごりで食事をすることになりそうだ。お金は持っているけど、新しい服とか武器を買うためにちょっと使うだろう。やった、少しお金が浮きそうだ。私はそう思いながら、すぐにお願いしますと返事をした。




 ソセジさんが案内してくれたのは、バッハの町のギルドから少し離れた所にあるそれなりに大きな酒場だった。


「ここって……酒場ですよね?」


 ティノちゃんが嫌そうな顔をしてこう言った。酒場と言ったら、酒の匂いや煙草の臭いが充満しているイメージだ。ソセジさんは笑いながらティノちゃんに近付いた。


「大丈夫だ。あそこの酒場の店長はヤニの臭いが嫌いと言って、全席禁煙にしているんだ。一本でも煙草を吸おうとする奴を見つけたら、飛びかかってぶん殴るよ」


「まぁ。かなり武闘派な方ですね」


 ルールを破った奴は即粛清と言うわけか。どんな店長なんだろう。そう思いながら、私たちは店の中に入った。


「おっ。いらっしゃいソセジ」


 カウンターにいたバンダナを巻いた女性がソセジさんの方を見てこう言った。その女性は私たちを見て、にやりと笑った。


「あんたたち、流浪のギルドの戦士のエクスとティノだね。ピアノタワーでの騒動は私たちの耳にも入っているよ」


「まぁ。ありがとうございます」


 どうやら、あのテロのことはすでに皆の耳に入っているようだ。まぁ、あれだけ大きな騒動だから、何もしなくても自然と情報が入るか。それに、メディアがニュースでこのことを伝えていると思うし。


「騒動を終わらせた英雄が私の店に来るなんて嬉しいね! 今日はサービスするから、どんどん注文してよ!」


 と、店長の女性はそう言った。その言葉に甘えることにしよう。その後、私たちがいるテーブルの上には、肉料理やらサラダやら飲み物が置かれた。


「えーっと、ギッシュマンモスのステーキとマルブトバードの照り焼き、ジューシーポークの丸焼きの大盛と季節のサラダで、注文は以上だね?」


「はい。以上です」


 私は笑顔でそう答え、サラダを食べて肉料理を食べ始めた。ティノちゃんも自分で注文したカレーを食べ、ソセジさんはハムエッグを食べ始めた。だが、ソセジさんは時折財布を見ては、うなり声を上げていた。うーむ、言葉に甘えすぎたか。


(エクス。今後、誰かにおごってもらう時、少しは遠慮しろよ)


(はい。その通りにします)


 ヴァーギンさんの言葉を聞き、反省しながら私はこう答えた。




 翌日、私とティノちゃんはギルドの皆に見送られながらバッハの町から旅立った。


「それで、次の目的地は決めましたか?」


 ティノちゃんにこう聞かれ、私は前に指を指してこう答えた。


「とりあえずここから近くの町まで歩いて行こう。道中、危険なモンスターや変態や不審者がいるから、そいつらを倒しながらジャッジメントライトの情報を集めよう」


「分かりました。とにかく、ジャッジメントライトの情報があるかどうかは運ってことですね」


「そういうこと。でも、奴らが動いたらギルドから連絡が入ると思うし。動いた時に奴らをぶっ叩こう。何も情報がない今、ギルドが奴らの動きを察知するのを期待するしかない」


「察知するまでバッハのギルドで待機……するわけにはいきませんよね?」


「うん。奴らを倒したいけど、私たちは一応ギルドの戦士。各地で起きた騒動を終わらすために戦う。もちろん、目の前で起きた騒動も責任負って終わらす」


 私は拳を握ってこう言った。ティノちゃんはその言葉を聞いて頷き、私の横を歩いた。しばらく歩くと、前の方から何かが走ってくる音が聞こえた。


「何ですかね、この音?」


「さぁ?」


 前を見ると、そこにはボウソウジカと言う、走り出したら止まらない鹿のようなモンスターの群れがいた。あいつらは止まることを知らないバカなモンスター。目の前に障害物があってもそれを気にせず爆走する危険でアホなモンスター。こいつらを見逃したら、こいつらのせいで犠牲者が出る!


「行くよティノちゃん、あの鹿をしばきに行くよ!」


「分かりました!」


 私は剣を持ち、ティノちゃんは魔力を解放してボウソウジカの群れへ向かって行った。


 この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします。次から新しい話が始まります。

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