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騒動が終わった後で


 テロがあった翌日、私はあくびをしながら起き上がった。ツデクを倒し、崩壊するピアノタワーから脱出した後、お風呂に入ったりして休んでいた。


「ふぁぁ……」


 またあくびが出た。私は目をこすりながら周囲を見て、隣にいるティノちゃんが寝息を立てて寝ていることを把握した。起こさないように動かないと。そう思ったが、突如激しいノックオンが響いた。


「エクスさん! お休みのところすみませんが、これからテロについての話があるので、ご出席の方をお願いします!」


 扉の向こうから聞こえたのは、ギルドの戦士。朝早くからすぐに働くとは立派だねと思っていたが、時計を見てもうお昼を過ぎていることを察した。


「ありゃま……」


 私はぽつりと呟いた後、扉に近付いてこう言った。


「今起きたばっかりなの。ティノちゃんはまだ眠っているから静かにして」


「は……はい。すみません」


「今から支度するから、ちょっと遅れるってここのギルドの偉い人に伝えておいて。ソセジさんでもいいわ」


「わ……分かりました」


 ギルドの戦士はそう言って、去って行った。さて、起きたばっかりだけど話に出ろと言われたら出るしかない。会議とかあまり好きじゃないんだけどなー。




 数分後、着替えを終えた私はティノちゃんと共に会議室へ向かった。


「一体何を話すんですかね?」


「昨日のテロ対策の反省会だと思うわ。そういった話はこのギルドだけでやればいいのに」


 私はため息を吐きながらこう言った。その後、会議室の前に到着した私は、失礼しますと言って扉を開けた。中にはソセジさんやバッハのギルドの重役が座っていた。重役らしきおじさんが、私をじっと見ていた。


「君が今回のテロを食い止めるべく活躍してくれた流浪の剣士、エクス・シルバハートだね」


「はい。食い止めた……とは私は思っていませんが」


「とにかく座ってくれ。立っていると疲れるだろう」


「では、お言葉に甘えます」


 私とティノちゃんは空いていた椅子に座り、さっきのおじさんの方を見た。


「では改めて君にお礼が言いたい。君がいなければ、被害は広がっていた」


「いえ、私がいても何もできませんでした」


 私が言葉を返すと、重役のおじさんはうつむいた。怪我人はいるだろうが、味方敵双方に死者はいない。だが、奴らのデリートボンバーによってピアノタワーは完全に消滅してしまったのだ。そのことを思ったのか、皆口を閉じてしまった。多少気まずい雰囲気になってしまったか。とりあえずこの状況を打破するため、私は口を開いた。


「奴らの目的はギルドの戦士を倒すこと。そして、デリートボンバーの威力の確認です。ギルドの戦士で命を落とした人はいませんが、奴らはデリートボンバーの破壊力を確認しました。これから、奴らはデリートボンバーを使ってテロ活動を頻繁に行うと思います」


「私も同じ考えだ。昨日、ギルドの本部へこのことを伝えた」


 私とティノちゃんが休んでいる間に、ギルド本部に今回のテロのことを伝えたようだ。それなら本部の人たちがこれからどうするか会議をしているはずだ。


「本部はすぐに話し合いを始めていると聞いた。ジャッジメントライトが今後どう動くか分からないが、注意して動向を見ることにした」


「見るだけですね。何かあっても手を出せないということで」


「そうだ。ジャッジメントライトは一部政治家と繋がりがある。ウラガネの話は私たちも知っている。もし、何かあっても政治家やその上の人間に止められれば、そこでもう動けないからな」


「そうですね。でも、私なら手を出しますが」


 私の言葉を聞き、皆驚いた表情をした。私、そこまでぶっ飛んだことを言ったかな?


「今の私は流浪のギルドの戦士です。所属するギルドもないし、地位もそこまで高くありません。それに、あんな奴らとつるんでいる奴の言うことは聞きません」


「そ……そうか。だが、何かあってもギルドは助けてくれないぞ。私は違うが、他の重役は地位を守るためにだんまりを決めると思うぞ」


「自分の身は自分で守ります。政治家やその関係者が文句を言っても力でねじ伏せます。強い権力を持っていると思いますが、権力では武力に勝てません」


 私の言葉を聞き、皆キョトンとしていた。私は権力と言うのが嫌いだ。上の立場と言って偉そうにする奴も嫌いだ。だから、何かやってきたら返り討ちにするつもりだ。


「権力に屈しない性格か……いや、私たち重役より素晴らしい性格で、素晴らしい戦士だ。君みたいな人間が、ジャッジメントライトを倒すかもしれないな」


「倒すために動いているんです。で、お話はまだ続きますか?」


 私がそう言うと、重役のおじさんは小さく笑って言葉を返した。


「君に対してのお礼は告げた。これでもう十分だ」


「分かりました。では、失礼します」


 私は立ち上がって頭を下げた。ティノちゃんも私に続いて立ち上がり、頭を下げた。




 会議室から出た後、ヴァーギンさんが話しかけた。


(これからどうする? また当てのない旅を始めるのか?)


(そのつもりです。ですが、その前にツデクから話を聞きたいんです)


(どうしてだ?)


(デリートボンバーの威力を確かめた後、何をするか聞き出すつもりです)


(奴らのことだ。またテロ活動をすると思う)


(そうですが、次はどこでやるか聞き出そうと考えています)


(次のテロのことか。知っているかどうか分からないが、一か八かの考えだな)


(ええ。奴が知っていればいいんですが)


 ヴァーギンさんと話をしていると、不思議層にティノちゃんが私に近付いた。


「エクスさんってたまに無口になりますね。どうかしたんですか?」


「え? そう?」


 無口になる? そうか、ヴァーギンさんとの話に真剣になると、周りから私が急に黙ったって思うのか。うーん。ヴァーギンさんが剣になって蘇っただなんて他の人に話しても信じないだろうし、ティノちゃんにこのことを言っても同じだろう。そう思いながら、私はヴァーギンさんを手にしてティノちゃんに差し出した。


「この剣に触れてみて」


「これに?」


 不思議そうに、ティノちゃんはヴァーギンさんに手を触れた。




 ティノと言ったか。この少女は俺が剣となって蘇ったことは知らない。というか、人が蘇ることなんてありえないから、俺が剣になったと言えばまず驚くだろう。どうやって話そうか。だが、もう彼女は俺に降れている。とりあえずエクスのように脳内に話しかけよう。


(君がティノだな)


 話しかけた瞬間、ティノは驚く悲鳴を上げながら物凄い勢いで後ずさりした。どうやら、俺の声が脳内に響いたから驚いたのだろう。


「ふぇ……ふぇ……えええええええええ! 何ですか今の? え? ちょ……男の人の声が頭の中で……どういうことですか!」


「えーとまぁ……驚きはしたけど、もう一度この剣に触って」


 エクスは頬をかきながらもう一度俺をティノに差し出した。ティノは恐れているのか、手を震えながら俺に触った。


(驚かせてすまない。俺はヴァーギン・カリドだ。英雄と言えば分かるだろう)


「え……ヴァーギンって……」


「ティノちゃん、頭の中で喋るように文章を考えて」


 と、エクスは脳内での会話をティノに教えていた。これでうまく話せるといいが。


(あ……あの……あなたがヴァーギン・カリドって……あなたは確か死んだはずでは)


(声が聞こえたぞ。そんな感じだ。俺は確かに死んだが、いろいろあって剣となって再びこの地に戻って来た)


(そ……そうだったんですね……死んだ英雄が剣となって帰って来たなんて誰も思いませんよ)


(確かにそうだろう。だが、現に俺はこうして帰って来た)


(世の中不思議なことがあるんですね……)


(そうだな。紹介が遅れてしまったが、今後ともよろしくな)


 俺は最後にティノにこう言った。


 次回あたりで第一章が終わります。第二章もよろしくね。この作品が面白いと思ったら、高評価とブクマをお願いします。

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