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崩壊するピアノタワーからの脱出


 私は斜めになったピアノタワーを利用し、滑るように走りながら下へ下って行った。だが、近くの窓から爆発がし、私はその爆風の勢いで吹き飛ばされてしまった。


「おわああああああああ!」


(エクス!)


 耳元でツデクの叫び声が、脳内でヴァーギンさんの叫び声が同時に響いた。ツデクは自分自身の心配を、ヴァーギンさんは私の心配をしていた。だけど、こんな爆発でくたばる私じゃない! さっきの爆発でピアノタワーは傾いていない。なら大丈夫。私は何とか傾いた壁に着地したが、バランスを崩しそうになった。そこからまた走り出したが、このままだと足がつりそうだ。どうしようかと思った時、上からガラスが降ってきた。


(ガラスか。上から降って来るから、勢いがある。避けるか魔力のバリアを張るんだ!)


 私はバリアを張り、上から降って来るガラスの雨を防いだ。上から降ってくるせいで、勢いを付けて私に襲ってくる。あの勢いだと、弾丸のような勢いだ。刺さって貫いて死ぬ可能性がある。


「うーん。このままだと危ないな」


 私はそう思いながら足を動かしていた。すると、丁度スノーボードのような形の壁の欠片が落ちてきた。爆風で上に舞い、私の近くに落ちたのだろう。私はちょうどいいと思い、その上に乗った。


「おいまさか、このまま下に戻るつもりか? お前、スノーボードをやったことがあるのか?」


「ないわよ。でも、鍛えているから何とかなるわよ」


 ツデクは私の返事を聞いて青ざめた。スノーボードはど素人だけど、まぁ、バランスを保って下に下れるのならどんな手でも使わないと。そう思いながら、私は下へ下って行った。


 それにしても、スノーボード……実際私がやっているのはその真似っ子だけど、面白い。猛スピードで滑る感覚がとても気持ちいい。時折壁についていた飾りや灯などが前から来たけど、それらはギリギリで避けて行った。


「うわあああああ! 当たるゥゥゥゥ!」


 ツデクはこの素晴らしいスリルを楽しんでいないのか、何かが飛んで来るたび当たるとか避けるとか叫んでいた。私は奴の叫びを無視し、そのまま滑って行った。しばらく走っていると、地面が見えてきた。


「あと数十メートルってところね」


 私の言葉を聞き、ツデクはあと少しでこのスリルが終わると思ったのだろう、安堵の息を吐いていた。だが、その時だった。下の方にあったデリートボンバーが爆発し、目の前の壁を跡形もなく吹き飛ばしてしまった。


「そんな……ここまで来て爆発するなんて……」


 奴は死を覚悟したのか、泣くような声でこう言った。私はため息を吐き、足腰に力を入れて高く飛び上がった。


「おい、これからどうするつもりだ!」


「決まってるでしょ? このまま地面に着地するのよ!」


「は……はァァァァァ!」


 私の返事を聞いた奴は、驚きのあまりうるさい声を出した。私はボードにしていた柱の欠片を人がいない場所へ蹴り飛ばし、そのまま地面に向かって落ちて行った。しばらくして私は足元にバリアを張り、着地態勢をとった。そして、私は見事に地面に着地した。


「ふぃー。何とかなった」


 私がそう言うと、後ろにあったピアノタワーから花火よりも激しい爆発音が発した。後ろを見ると、崩れかかったピアノタワーから白い爆発が発し、綺麗だったピアノタワーを跡形もなく破壊していた。私はこの光景を見て、奴らが作ったデリートボンバーの威力を確認した。


(ピアノタワーは頑丈な建物だ。その建物が爆発で……しかも跡形もなく吹き飛ぶとは……)


(デリートボンバー。危ない奴らが、とんでもない兵器を作ってしまいましたね……)


 私とヴァーギンさんは、ただその場で立って、消滅していくピアノタワーを見ていた。数分後、半日ほど前まで存在したピアノタワーは、跡形もなく消滅していた。


「はぁ……」


 消滅したピアノタワーを見て、私は思わず大きなため息を漏らした。地面に戻って来たばかりだから被害が分からない。もしかしたら、被害者が出たかもしれないこと。そして、奴らの目的の一つが達成してしまったのだ。


「完全に勝利した……わけじゃないわね」


 私は小さくぽつりとこう言った。その直後、ティノちゃんが泣きながら私に抱き着いてきた。


「エクスさァァァァァん! 無事でよかったですゥゥゥゥゥ!」


「ティノちゃん。そんなに泣かなくても。戻って来るって言ってたじゃない」


「あんな爆発があったんですよ! あれを見たら、誰だって確実に死んだって思いますよォォォォォ!」


 と、ティノちゃんは大声で泣き始めた。そんなに私のことを心配してくれたのね。嬉しい。そう思いながらティノちゃんの頭をなでていると、ソセジさんやギルドの戦士たちがやって来て、私の姿を見て驚いた。


「エクスさん! まさか……あの爆発の中で生き残るとは……」


「ピアノタワーが斜めになったから、滑って走ったの。おかげで無事に戻ってきました」


 私はブイサインを作って無事をアピールした。ソセジさんは緊張の糸が切れたのか、その場で座った。


「よかった……私が避難した後、爆発が始まったから……」


「ソセジさんも無事でよかったです。あの後、何とか避難できたんですね」


「そうだ。そして……君が担いでいるのは……」


 ソセジさんは私が担いでいるツデクを見て、言葉を失った。私は奴を地面に下ろし、話をした。


「こんな奴でも、命を奪いたくはないので。片腕片足は斬り落としたので、反抗せずに牢屋に入れられますよ」


「あ……ああ。ありがとう」


 ギルドの戦士たちはおどおどとしながら、気を失っているツデクを運んで行った。あいつ、いつの間にか気を失っていたようだ。


「で……これからどうするんですか、エクスさん?」


 泣きすぎたせいで目が真っ赤になったティノちゃんがこう言った。そこそこ疲れたし、今日は休むことにしよう。


「ギルドの部屋に戻りましょう。今日はもう休むわ」


「そうですね。今日はもう……疲れました」


 その後、私はティノちゃんを連れて、ギルドの部屋へ戻って行った。




 あれから私とティノちゃんはシャワーを浴びることになった。本当は何か食べたかったんだけど、崩れる際に発した壁の破片が私の体にくっついているとティノちゃんに指摘されたのだ。


「うへぇ、壁の細かい破片がくっついてる」


 私は腕を見て、白い粉が付着しているのを確認した。この状態で食事をしたら大変なことになっていた。ティノちゃんが言っていたことが正解だった。


「エクスさん。背中にも瓦礫の小さな破片がくっついていますよ」


「え? あ、本当だ」


 私は背中を触り、ざらざらとした触感を感じた。もしかしてと思い、私は胸の谷間に手を突っ込んだ。あーあ、胸の間にも細かい破片が入ってる。


「体の中に破片が入ってる」


「本当に細かい破片だから、服の中に入っちゃったんですね」


「そうみたい。あーあ、サクッて洗ってご飯食べようとしたのに」


 私はそう言いながら胸の谷間や背中を重点に体を流した。そんな中、ティノちゃんは私の体を見て呟いた。


「相変わらず傷だらけですね。さっきの戦いで、傷は増えませんでした?」


 ティノちゃんの言う通り、私の体には修行でできた傷がたくさんある。そのおかげで、私は痛みを知ることができたし、強くなることもできた。ある意味、勲章と言える傷だ。


「傷は増えなかったわよ。あまり攻撃を受けなかったから」


「すごいですね。私だったら傷つくのを恐れて、逃げてばかりだと思いますが……」


「逃げることも重要よ。だけど、いざという時は傷付くことを恐れずに戦うことも必要よ」


「はい……」


「でも、私みたいに無茶はしないでね」


 と、私はティノちゃんにこう言った。それから私はティノちゃんの体を洗ったりした。ずーっと戦っていたから、休む時なんてなかった。今が休む時なのだろうと、私はティノちゃんを洗いながらそう思った。


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