戦いの行方
エクスはツデクと言う男と戦っているが、奴は火の魔力とは別に、魔力を使った治癒法もできる。斬っても斬っても傷を治してしまう。エクスはそのことを知っているはずなのに、奴を斬りつける。隙を見て奴の背中に大きな傷を与えたが、それも治してしまった。
「ふぅ……そろそろこの無駄な戦いを終わらせましょう」
奴は大きなため息を吐いてこう言った。エクスはにやりと笑い、奴を挑発するように手招きした。
「そうね。さっさとあんたを斬って終わらせるわ」
「ほう。まだ私に勝つつもりでいるんですか?」
「勝つために戦っているのよ。それに、私が負けたらこの一辺、デリートボンバーでぶっ飛んじゃうから」
「あなたが勝っても、ぶっ飛ぶ運命は変わりませんよ?」
この言葉を聞いた俺は、嫌な予感がした。あとから判明したことだが、このピアノタワーには停止ボタンがないデリートボンバーがいくつか存在した。俺は奴を倒せばデリートボンバーを止めることができると考えていたが……外道の考えはそんなに甘くない。奴を倒してもデリートボンバーは止まらない!
「あんたを倒してもデリートボンバーは止まらないってわけね」
「その通りだ。お前がいくら頑張ってデリートボンバーを止めようとしても、結局このピアノタワーがぶっ飛ぶ運命は変わらない!」
「まぁ、あんたらが嘘を言っていることは大体予想していたわ。私は外道が言うことはあまり信じていないのよ」
エクスはそう言うと、ため息を吐いて出入口で戦いを見守っているソセジさんの方を向いた。
「ソセジさん、私たちがあれこれやってもピアノタワーはぶっ飛びます。今すぐ皆にここから離れと言ってください!」
「エクスさんはどうするつもりだ!」
「こいつを倒したらどうにかします。まぁ安心してください」
エクスはソセジさんにそう言った。ソセジさんは不安そうな顔をしていたが、エクスを信じて戻ることにした。奴は会話が終わった直後、笑いながらこう言った。
「私を倒す? このピアノタワーがぶっ飛ぶ前に、お前は私に槍で突かれて殺されるか、焼き殺されるかの運命だ」
「私の運命は私が決めるわ」
と言って、エクスは奴に接近して俺を振るった。強く振るったため、奴に深手を負わせることができた。
「グフッ! ゲッファッ!」
奴は吐血しながら後ろに下がり、にやりと笑った。
「酷い傷だ……だが、すぐに治してやる」
「やってみなさいよ」
と、エクスは笑いながらこう言った。奴はその笑みを見て苛立ちながら、魔力を解放した。だが、奴が発した魔力は弱かった。
ようやく奴の魔力が弱くなった。私はこれを狙っていた。奴の魔力切れを! 強い魔力があるのなら、それを相手に使わせればいい。だから私は奴を斬って傷を付け、それを回復させたのだ。奴は持っていた魔力のほとんどを治癒で使ってしまったようだ!
「そんな……そんなことって!」
「ねぇ、早くその傷治しなさいよ。無理なら私が手伝ってあげようか?」
魔力切れを察した奴は、慌て始めた。私の挑発するような笑みを見ても、気付かない。かなり慌てている。私は奴に接近して素早く攻撃を仕掛けた。
「クソ……私が……こんな奴に……」
私が放った斬撃は二回。一回目で奴の右腕を斬り、二回目で奴の右足を斬った。奴は悔しそうな言葉を発しながらその場に倒れた。ふぅ、テロの中心的人物はこれで戦えないだろう。私は時計を見て、今の時刻を確認した。爆発まであと二時間ちょい。これなら余裕を持ってピアノタワーから出ることができる。そう思ったが、突如スピーカーから声が聞こえた。
「おやおや、まさかこのゲームに勝利してしまうとは思ってもいなかったよ」
この声は奴らのボスだ。こんな時に何の用だ?
「あんた、敗北宣言したわね! 負けたんだったら大人しく私たちの言うことを聞きなさい!」
「それは無理だ。そう簡単に君たちの言うことを聞くわけにはいかないのだ」
「屁理屈言うんじゃないわよ! さっさとデリートボンバーの解除する方法を教えなさい!」
「できればそうしたいのだが、デリートボンバーを解除する方法は存在しないのだよ。動いたら最後、止めることはできない」
「このクソ野郎! 最初から止めるつもりはなかったのね!」
「その通り。私たちは目的のためなら、どんなことでもするさ」
「悪いことをしたり、人を苦しめるようなことをしたら、その分しっぺ返しを受けるわよ」
「私たちが行っているのは悪事ではない。正義だ」
あー、もう腹が立つ! 何が正義だ、こんなテロ活動が正義なわけがない!
「ふざけるのもいい加減にしなさい! あんたらがどう動いても、私が必ずあんたらの尻尾見つけて引っ張って、ズタズタに斬りまくってやるわ!」
「無理なことを言わない方がいい。君はピアノタワーと共に消え去る運命なのだから」
ボスはそう言って話を終わらせた。クソ! もうちょっとあの野郎を罵倒すればよかった。そう思った直後、下の方から爆発音が聞こえた。どうやら、デリートボンバーの爆発が始まったようだ。
「爆発までまだ時間があるのに……爆発する時間も嘘だったのね」
私が小さく呟くと、倒れていたツデクがその言葉に反応した。
「その通りだ。悪を倒すためには、嘘も必要だ」
「悪はあんたらよ」
私は奴に言葉を返すと、奴の左腕を担いだ。
「おい、私をどうするつもりだ?」
「一緒にここから逃げるわよ。あんたらジャッジメントライトは憎いけど、敵を殺したらあんたら裏ギルドと同じことをやったってことになるじゃない。私は人として、剣士として、そこまで堕ちたくない」
「人の腕や足を斬り落とした人間の言うことではないな」
「確かに私は敵の手足を斬り落とした。だけど、人の命を奪ったことはない」
奴は私の言葉を聞き、反論する気がなくなったのだろう。驚いた表情をした後、参ったと思うような表情をした。
「で、下の方から爆発したけど、隠されたデリートボンバーは下から爆発するってことでいいわね?」
「その通りだ。確実に逃げ道を潰すためにな。これで、もうここから出ることはできないぞ」
奴は小さく笑いながらこう言った。確かにここから出ることはできない。最上階は地上から何百メートルほどの高さがあり、飛び降りて脱出するのは完全に不可能だ。下の方も爆発して、そこから煙やら炎やら発して逃げることはできないだろう。そう思っていると、また爆発音がした。
「フフフ……そろそろ爆発が上に迫って来るぞ。どうする?」
「まぁ見てなさい。こんな状況でも冷静になることが必要だからね」
私は欠伸をして奴に言葉を返した。しばらくして、最上階が傾いた。私は急いで斜面になった床を駆け上った。
「おいおい、どうするつもりだ?」
奴は少し動揺してこう言った。私は奴の言葉を無視し、目の前を見た。ピアノタワーが下から折れたせいで、斜面になっている。よし、これならいける! 私は柵を飛び越えて斜面に飛び移り、斜面を走り出した。
(折れてできた斜面を走って脱出するのか。考えたな、エクス)
(そうですが、確実に脱出できるって保証はありません。少し集中します!)
私は目の間を見ながら走り出した。まだ爆発は終わったってわけではない。走っている近くで爆発が起きてもおかしくない状況だ。とにかく、今私がするのはここから出るため、急いで走って脱出すること。そう思いながら、私は猛スピードで走った。しばらくして、近くの窓から爆発音がした。
「なっ!」
音に気付くのが遅かった。私は爆発に巻き込まれ、吹き飛んでしまった。
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