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頑張れティノちゃん


 敵は姿を見せず、魔力を使って戦う卑劣で根暗で救いようのないクズ野郎。ティノちゃんにはある考えがあり、私に敵を挑発するように頼んだ。私は敵に向かってティノちゃんも引くくらいの罵倒をしてやった。何も反応はないけれど、徐々に敵の魔力が強くなっていくのを感じた。


「来るわよティノちゃん。身構えて」


「はい」


 ティノちゃんは返事をし、周囲に強固なバリアを張った。その瞬間、周囲から鋭い氷柱が現れ、私たちに向かって伸びた。だが、ティノちゃんが発したバリアによって氷柱は折れた。


「すごいわティノちゃん。この強度のバリアは修行しないと会得できないわよ」


「昔から魔力は強いって言われていたんです。だから頑張りました」


 ティノちゃんは自身の魔力が強いことを把握しているのか。偉い偉い。このことを知っているなら、自分の才能に気付くのも時間の問題だ。


「チクショウ! 僕の攻撃が当たっていないのか!」


 おっ、敵の声が聞こえた。ティノちゃんはバリアの中で魔力を解放し、地面を触った。すると、遠くから風の音が聞こえ、続いて敵の悲鳴も聞こえた。敵はバカだ。声を出した結果、自分の位置を私たちに知らせてしまったのだから。


「攻撃は当たったみたいだけど、まだやられてはいないようね」


「魔力を使って防御をしていたんだと思われます。かなり強い風で斬ったはずなんですが」


「なら次はもっと強い攻撃で敵をねじ伏せればいいわ。さぁ、まだ戦いは始まったばかりよ。構えて」


 私がそう言うと、天井から氷柱が現れた。勢いよく伸びる氷柱はティノちゃんが張るバリアに命中し、折れた。だが、この一撃でバリアの一部分にひびが入った。


「バリアを解除して一度逃げるわよ」


「はい」


 私たちは一旦その場から離れ、近くの壁に隠れた。挑発を受けた敵は攻撃的になっているせいで、私たちがいた場所に氷柱を出し続けていた。さっきの挑発が効いたのか、敵はかなり攻撃的になっている。


「敵は冷静さを失っているわね。もう少し挑発する?」


「いえ、それ以上やったら敵が哀れになります。でも、敵はあれから動いていないので、次に攻撃する時が楽です」


「攻撃することに頭が行っているから、敵からの攻撃のことなんて考えていないのよ。さて、それじゃあ敵の攻撃が終わるまで少し休みましょう」


「そうですね。緊張のせいでかなり疲れました」


 そう言って息を吐くティノちゃんに対し、私はティノちゃんの肩を揉んでマッサージをした。かなり緊張していたティノちゃんだったが、マッサージをして表情が和らいだ。


 しばらくして、敵の攻撃が止まった。魔力が弱くなっているため、攻撃のし過ぎで使いすぎたんだと私は考えた。


「さて、攻撃を仕掛けますか」


「任せてください」


 ティノちゃんは目をつぶり、魔力を解放した。それから間を置き、敵の悲鳴が聞こえた。そのすぐに何かが天井に命中する音が聞こえた。


「何したの?」


「敵の下から氷の拳を作って打ち上げました」


「強烈なアッパーを決めたってわけね」


 私とティノちゃんは音がした方向へ向かって見ると、見るからに卑劣で根暗でクソ野郎って言葉が似合う男が天井にめり込んでいた。


「やったわねティノちゃん。あの野郎を倒したわよ」


「つ……疲れました……」


「お疲れ様。鍵を見つけるのは私がやっておくから、ティノちゃんはもう少し休んでて」


 私は天井にめり込んだ敵を床へ着き落とし、敵のポケットから鍵を手に入れた。だが、周囲を見回してもデリートボンバーが入っているケースが見つからない。私は敵の顔面を殴り、目を開けさせた。


「起きなさい。デリートボンバーはどこよ?」


「言うもんか」


 戦いに負けたって言うのに、敵は私の質問に答えようとはしない。私はもう一発敵の顔面を殴り、もう一度聞いた。


「デリートボンバーはどこ?」


「ぐ……これ以上殴っても……絶対に言わないぞ」


「それじゃあ殴らないわ」


 私がこう言うと、敵は安堵した表情を見せた。私は鞘から剣を抜き、敵に近付いた。


「おい! 話が違うじゃないか!」


「私は殴らないと言ったわ。斬るなら問題ないわよね?」


「問題大ありだ!」


「うるさいわねクソ野郎。腕か足、どっちか斬られたくなかったら私の質問に答えなさい。嘘を言ったらダルマにする。デリートボンバーはどこ?」


「分かりました! 教えるから斬らないで!」


 その後、敵は大慌てでデリートボンバーの場所を教えた。私は奪った鍵でケースを開け、デリートボンバーを止めた。


「これでいいだろう? 僕はもう帰る!」


「あんたに帰る場所はないわよ。これからあんたが向かう場所はブタ箱よ!」


 と言って、私は敵の腹を殴って気を失わせた。その後、ギルドの戦士を呼んで敵を連れて行くように指示した。




「これで、全てのデリートボンバーが停止しましたね」


 ティノちゃんが嬉しそうにこう言った。確かに五つのデリートボンバーを止めることに成功した。だが、簡単すぎる。あまりにも簡単すぎる。私たちはマンションエリアにいるが、ここはピアノタワーの中間地点。まだ上の階があるが、それに対して設置されたデリートボンバーの数が少なすぎる。そう考えていると、ソセジさんから連絡が来た。


「エクスです。ソセジさん、どうかしましたか?」


「私たちは……奴らに騙されていた。デリートボンバーは五つではない。それ以上ある!」


 予想通り。デリートボンバーは五つ以上存在した。


「それ以上あるんですね。それらに解除ボタンはありますか?」


「いや……解除ボタンは存在しない。止める手段がない!」


 その返事を聞いたティノちゃんや周りにいたギルドの戦士たちは、驚きの声を上げていた。


「敵は嘘をついたんですよ。とりあえず、一度合流しましょう。今からそっちに向かいます」


「分かった……」


 その時だった。突如携帯電話の調子が悪くなったのだ。おかしいな。これはギルドから渡された携帯電話。頻繁に手入れをしているはずだから、調子が悪くなるはずはないのに。そう思っていると、アナウンスの音が響いた。


「素晴らしいよ、エクス・シルバハート。そしてギルドの戦士たちよ」


 聞いたことのない声だ。劇場で聞いた声とは別の声だ。


「知らない声が響いて驚いているだろう。私はこのテロの実行、指示を任されたツデクと言う者だ。今、私はピアノタワー最上階にいる」


 どうやら、このテロの指示を任されたツデクと言うリーダー的ポジションがいる。そいつを倒せばこのテロは終わるのだろう。そう思ったが、奴は話を続けた。


「五つのデリートボンバーを止めて万事解決だと思ったのだろうが、実は最初に話していた言葉は嘘だ。それ以外にもデリートボンバーは存在する。それらを止めるには、私を倒すしかない」


「それは本当なの?」


 私は大声でこう言った。この声が届くかどうかは分からないが、とりあえず声を出した。


「質問は大歓迎だ。他のデリートボンバーは私が倒されると止まる仕組みになっている」


「分かったわ。今すぐあんたの元へ向かうから、覚悟してなさい! 嘘つき集団は私が斬り倒すわ!」


「君が来るのを待っているよ。私も戦士として、凄腕の剣士と戦うことを楽しみに待っているよ。それでは、会う時を楽しみにしているぞ」


 と言って、奴は話を終えた。ツデク、このテロのリーダー的存在を倒せばデリートボンバーは止まる。少し胡散臭い話だが、止めるためには奴を倒さないと。そう思ったが、携帯電話からソセジさんの声が聞こえた。


「私が先に奴の元へ向かい、デリートボンバーを食い止める! 他の者には外に出るように伝えてくれ!」


「え? ソセジさん?」


 私はソセジさんに話しかけようとしたが、その前に通話が切れてしまった。


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