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迫る時間


 物を引き寄せる魔力を使う男、エルゾーと私は戦っている。奴の技のせいで私は剣を奪われたが、魔力で作った剣で代用できた。だが、魔力の剣は力を失うと形を崩し、消えてしまった。奴はその隙を狙って私に攻撃を仕掛けた。だが、魔力の鎖も魔力の剣と同じ、魔力でできている。作る際に使った魔力は時間とともに減って行き、いずれ消滅する。だけど、時間切れを狙う余裕はない。それなら、もう一つの魔力で作った武器を消滅させる方法を使えばいいだけのこと。


「こっちへ向かって来るだと? おいおい、やけくそになって俺に攻撃を仕掛けるつもりかよ」


 奴は笑いながら私にそう言った。そのつもりだ。魔力を作った武器を消滅させるもう一つの方法。それは、作った本人を攻撃し、気を失わせること。私は奴に接近し、飛び上がって強烈なドロップキックを浴びせた。


「が……はぁ……」


 剣技ではなく、まさか蹴り技が飛んで来ると奴は考えていなかっただろう。剣が使えない状況があると考えていた私は、剣とは別に体術も習得していたのだ。


「蹴りって……あり?」


「ありなのよ。私の攻撃方法は剣だけじゃないわ」


 ドロップキックを受けた奴は返事をすることもなく、後ろに倒れて気を失った。その後、奴の魔力の鎖で引っ付いていた物が床に落ちた。その中に、私が使っていた剣もあった。


「さて、デリートボンバーを止めましょう」


 私はそう言って奴の体を調べ、鍵を手にした。




 マンションエリア、一個目のデリートボンバーの解除に成功した。入ってすぐに一個目の解除はできた。だが、マンションエリアはショップエリアよりも階数が多く、広くて細かい通路も多い。探すのがかなり困難だ。時計を見ながら私たちはデリートボンバーを探していたが、エルゾーとの戦いが終わって一時間は経過している。残り時間はあと六時間。そろそろタイムリミットが近付いてきている。


「まずいわね。他の戦士からも連絡はないし……」


「あわわわわわ。どこにあるんですか? どこにあるんですか~?」


 時間がないことを知り、私とティノちゃんは焦っていた。まずい。焦ると危険だ。落ち着こう。こういう時は、敵の視点から物事を考えよう。もし、私が奴らだったらデリートボンバーを仕掛ける時、人目が付かない場所に置くか、爆発の連鎖が起きやすい場所。連鎖を狙うとしたら……デリートボンバーは爆風が大きいと予想されるから、そんなに高い所に置くわけがない。もし、置くとしたらエルゾーがいた階より三階ほど上の場所だ。今、私たちはエルゾーと戦った階より二つ上の階にいる。ここにデリートボンバーがある可能性は高い。


「もう少しこの辺を探しましょう。細かい所まで探したら、次は上の階」


「わ……分かりました!」


「では、別々で探そう。私は他の戦士と共に上の階を探す」


「お願いします。私の予想ですが、デリートボンバーは私がエルゾーと言った奴と戦った場所の上三階までにあると思われます。もし、見つけたらすぐに連絡をお願いします」


「ああ。エクスさんたちも敵と遭遇したら、無茶をしないでくれ」


「分かりました。でもまだ余裕があるので戦いますね」


 私はウインクをしてソセジさんにこう言った。その後、ソセジさんはギルドの戦士を呼び、その人たちと共に上の階へ向かった。


 さて、私はティノちゃんと一緒にこの階を調べよう。まだ、全部の場所を調べたわけではない。とことん探さないと。




 探し始めて数分が経過した。まだ、ソセジさんから連絡がないため、上の階でデリートボンバーは見つかっていないと思われる。


「ソセジさんたち、無事ですかね?」


「大丈夫よ。魔力の衝突を感じないし、音も聞こえない。デリートボンバーを守る騎士と戦っていない証拠よ」


 心配するティノちゃんに私はこう言った。戦いが始まっていないなら、ソセジさんたちは敵と遭遇していないこと、まだデリートボンバーを見つけていないことが分かる。そして、私たちがいる階に敵がいる可能性がまだあることが分かった。そう思いながら周囲を見回すと、ティノちゃんが私を押し倒した。その前に、微かだが魔力を感じた。


「この階に敵がいるわね」


「はい。敵は魔力を使います。それも……凄腕です」


 私より先にティノちゃんはあの魔力を感じたようだ。やっぱりこの子、すごい才能を秘めている。おっと、そんなことを考えている場合じゃない。会話の直後、私たちがいた場所から鋭い氷柱が発した。


「魔力使いか。面倒な相手ね」


「はい。どうやって接近しましょうか……」


 遠距離の敵か。武器で敵を叩く私にとってはかなり苦手な相手だ。相手は氷柱を出して攻撃することを考えると、水属性の魔力を使う。厄介だな。本当に厄介だ。通路は狭いし、攻撃が来たら避けることができない。確実に氷柱に刺さってあの世逝きだ。うーむ……ティノちゃんの出番だな、これは。


「ティノちゃん。敵の場所は分かる?」


「この通路の奥から魔力を感じます。弱い魔力ですが、敵は自由自在に魔力の操作ができると思います」


「攻撃をするときに魔力を強くするような敵ね。ティノちゃん、そいつの相手できる?」


 私はティノちゃんにこう聞いた。この言葉を聞いたティノちゃんは驚いたが、しばらくして覚悟を決めた表情になった。


「分かりました。エクスさんやソセジさんたちに頼っていては、いけません!」


「その意気込み。私もサポートするから安心して」


 その後、私とティノちゃんは敵に姿を見せた。その一方で、敵は姿を見せていない。とんだチキン野郎だな。


「おーい! このチキン根暗卑劣根性なしのダメダメクソ野郎! 私たちは堂々と姿を見せているわよ! だったらあんたも姿を見せないといけなくなーい?」


 私は挑発しながらこう言った。その言葉に合わせるかのように、奥の通路から氷柱が物凄い勢いで現れ、私たちに襲い掛かった。


「お願いティノちゃん」


「はい!」


 ティノちゃんは魔力を解放し、氷柱を溶かすために周囲に火の魔力を放った。そのせいで、敵が放つ氷柱は溶けだした。


「これで敵の攻撃は止められた……わけじゃないわね」


「はい。まだ敵は姿を見せていません。それと、本当にあの奥にいるのか分からないです」


 うん。ティノちゃんの言う通りだ。敵があの通路の奥に隠れているとは思えない。だが、さっきの私の挑発を聞いて、敵は攻撃を仕掛けた。私の声が聞こえる範囲に敵はいる。


「私の挑発を思い出して。奴はその言葉を聞いて攻撃を仕掛けた。近くにいるはずよ」


「近くに……あっそうだ! エクスさん、奴を怒らせるようなことをもっと言ってください!」


「いいわ。任せて」


 ティノちゃんに頼まれたなら仕方ない。とびっきりの罵倒をしてやろうじゃないの。


「さっきの攻撃当たってないわよ、へぼへぼ魔力使い! それにさー、あんたは姿を隠さないと攻撃できないの? 遠距離でちまちまと攻撃するしかできないんじゃあ、本当に卑劣で根暗な底辺レベルのクソ野郎ね! あ、でもさっきの攻撃私たちに当たってないわよ。それじゃあ魔力使いとしても底辺レベルのクソ野郎ね! そーらそらそら! 私たちはここにいるわよ! 攻撃できるもんなら姿現して出てきなさいよ、卑劣根暗性根が腐ってボッチでブサイクで体臭きつくて異性からモテなくて救いようがないダメダメで生きている存在価値がないクソ野郎! あんたは(ピーーー!)で(ピーーー!)の上、(ピーーー!)なのよ! 文句があるなら姿現してかかって来なさい!」


「あの……それは言いすぎですよ」


 と、ティノちゃんはドン引きしていた。だが、これだけ罵倒すれば敵も腹が立って冷静さを忘れるだろう。


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