マンションエリアに潜む者
ふぅ。これでショップエリアのデリートボンバーは全部解除した。残りはマンションエリアだけ。そう思いながら私は外を見て、時間の流れを把握した。
「夜が明けたわね。爆発までは半日後って言ったから……タイムリミットは正午ね」
「今の時刻は午前四時です。残り八時間ですね。このペースで行ったら、テロを食い止めることができますね」
と、ティノちゃんは安堵の息を吐きながらこう言った。
「油断しないで。残り二人がどれだけ強いか分からない。それと、本当にデリートボンバーが五つあるのか分からないわ」
「あ……奴らが嘘を言っている可能性がありますね」
「テロ行為をしようとしている奴らだからね。私たちに追い込まれることを想像して、とんでもない隠しタネを用意している可能性が大いにあるわ」
私はそう言って、上の階へ向かう階段を探して行動を始めた。行動中、私はこう考えていた。デリートボンバーを守る奴らがあまりにも弱すぎる。私が強すぎるとも思われるが、それにしても守るための戦士としては信頼できない。そう考えると、奴らが守っていたのは本当にデリートボンバーなのかどうか怪しくなってきた。
階段を見つけた私たちは上の階へ向かい、マンションエリアへ向かった。マンションエリアへ入った途端、強い魔力を感じた。
「強い魔力です……どうしてこんな魔力が……」
「上の階に行けば行くほど、強い奴がいるってことかしら?」
「その可能性もあるな。とにかく、気を引き締めて行動しよう」
私たちは話をした後、デリートボンバーを探し始めた。マンションエリアは階ごとに五つの住居部屋がある。一つ一つ大きいため、探すのは困難だ。あらかじめピアノタワーの管理人から貰ったマスターキーで片っ端から部屋を開けて調べたが、デリートボンバーらしき物は見つからなかった。
「ど……どこにデリートボンバーはあるんでしょう?」
「騎士だと思われる魔力を感じたからどこかにあるとは思うんだけど」
私はこう言うと、強い魔力が隣の部屋から感じることを察し、風の魔力を発して壁を破壊し、隣の部屋を見た。そこには、デリートボンバーが入ったケースの上に座る男がいた。
「あーらら、見つかっちゃった」
「あまり残念そうな表情じゃないわね。それと、そのケースの上に座ってずっこけたらどうするの? デリートボンバーが爆発して跡形もなく粉々になっちゃうわよ」
「ご安心を。ちょっとの衝撃じゃあデリートボンバーは爆発しないし、このケースもかなり頑丈だから大丈夫だよ」
男はそう言って立ち上がり、ケースを叩いた。奴の言う通り、ケースを叩いてもデリートボンバーは起動しなかった。
「下の階の奴が君たちを始末してくれればよかったんだけど……こうなった以上俺も本気で戦わないと危ないな」
「他人に頼るような奴が本気になっても、私には勝てないわよ」
「そんなこと言わないでよ。ま、ちーっとこのエルゾーの攻撃を受けて見なさいよっと」
エルゾーと名乗った男は魔力の鎖を作り、振り回し始めた。私は奴の鎖をかわしたが、奴の鎖は周囲の家具をくっつけながら動いていた。
「俺の魔力で作った鎖は結構粘着力があるんでね。ちょっとでも触ったらくっついちゃうよ」
「それで巨大な武器にして、叩くってわけね。単純かつ恐ろしい技ね」
「その通り。分かりやすい攻撃ってのが一番楽で、相手にとっては面倒な攻撃なんだよね!」
そう言って、奴は私に向かって家具がくっついた鎖を私に振り下ろした。家具を斬ったとしても、剣が奴の鎖にくっついてしまう。だから私は奴の攻撃をかわし、奴に接近した。
「エクス・シルバハート。君の攻撃パターンは大体知ってる。君の攻撃方法は一撃で敵の出足を奪い、戦闘不能にさせる。まぁ、一撃必殺ってわけだね」
「ご名答。私の行動パターンを学んで来るとは恐れ入ったわ。褒めてあげる」
「ありがとさん。君の素早い動き、そして神業のごとき剣技は弱点がないように見える。だが、俺は君の弱点を知っている」
私の弱点? 何なのかしら? 私は自分で自分の弱点を把握できていないところがあるから早く教えてほしいわ。
「君は剣に頼っている。いや、頼りすぎている。魔力を使ってあまり戦わないでしょ」
「そうね。魔力を使うより、剣で戦った方が得意だからね」
何だ。そんなことか。大したことがないわね。呆れてため息が出たわ。そんな私を見て、奴は小さく笑い始めた。
「図星かい?」
「どう思うかはあんた次第。で、あんたはどう動くの?」
「こうするのさ!」
と言って、奴は小さな鎖を発して私の剣を奪った。
「まずは一本。君の大事な剣を奪ってやったぞ」
「あらま、隙を突かれちゃったわ。どーしましょ」
私は笑いながらこう言った。あと一本、剣となったヴァーギンさんが残っているが、あんな雑魚相手に使う必要はない。それに、奪われた剣も安物でそこら辺の武器屋で買うことができる安物だからなくなってもショックじゃない。それに、ギルドの戦士から貰うこともできるし、倒した敵から奪うこともできる。奴はそのことに気付いていないのか、不審な顔をしていた。
「剣がないと君は戦えないだろう?」
「確かにそうね。でも、こういう状況も考えて鍛えたのよ、私は!」
私は魔力を解放し、魔力でできた剣を作った。それを見た奴は口笛をした。
「やるねぇ。魔力を使って戦わないって聞いたのに」
「必要最低限の魔力は使えるし、それなりに魔力の技もできるわ」
「情報と違うね。それじゃあ後でこのことを上に伝えないと」
「それは無理ね。あんたはここで私に斬られるから」
私は奴に接近し、魔力の剣を振り上げた。奴は攻撃を察して後ろに下がり、両手に魔力で作った鎖を発した。
「それじゃあ俺も本気を出そう! 鎖は二つ増えたぞ。さて、どう動く?」
「敵に自分の行動パターンを言わないわよ。自分の目で見て自分の脳みそで考えなさい」
ため息を吐きながら私はこう言った。奴は私に向かって二本の鎖を動かした。私はジャンプして鎖をかわし、奴に接近しようとした。だが、奴はさっきの鎖の攻撃でくっついた家具を私に向かって動かしていた。
「大理石のテーブルと、巨大薄型テレビのコンビネーション! これが当たったら流石の君も生きていられないだろうねぇ!」
「簡単にことを考えない方がいいわよ」
大理石でできたテーブルと、大きなテレビが私に向かって飛んで来た。だが、こんな物は魔力の剣で斬ることができる。私はそれらを斬り、奴の方を向いた。奴の手から放たれていた鎖は消えていたが、私は奴が次の攻撃の手を考えていると察した。
「話通りすごい腕だ。だが、小細工の腕は俺の方が上だよ!」
奴は魔力を解放し、部屋全体にある家具を私に向かって飛ばした。予想通り、奴は魔力の鎖をばらして周囲に散らばせ、家具をくっつけて私に攻撃を仕掛けた。
「これじゃあ君も避けることができないねぇ!」
「避けないわよ。困難はこの剣で斬り開く」
ソファー、巨大なランプ、エアコン、私の身長と同じくらいある立派な時計、ゲーム機、耐震性がある本棚など、ありとあらゆるものが私に向かって飛んで来た。だが、さっきと同じように魔力の剣で斬ることができる。私はそれらを斬って行ったが、家具を斬りすぎたせいで魔力の剣が消えてしまった。
「あらま」
「フフフ……使いすぎて魔力の剣が消えたようだね」
奴はこのタイミングを狙っていたようだ。奴は魔力の鎖を私に向かって放ち、叫んだ。
「これで君を捕まえる! 自由を奪えばこっちのもんだ!」
どうやら、私を鎖で捕らえるようだ。安易な考えだ。私に向かって飛んでくるのなら、私がどう動いても鎖は追尾してくる。なら、捕まえる前に奴を斬ればいい。そう思った私は猛スピードで奴に接近した。
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