おもちゃコーナーでの激闘
ピアノタワーに置かれているデリートボンバーの数は分かった。ショップエリア、マンションエリアに二つずつ置かれている。そのうちの一つはおもちゃコーナーにあったが、デリートボンバーを守るエドラムと言う騎士もいた。奴はおもちゃを利用しながら私に攻撃を仕掛けていたが、逆に狭いおもちゃコーナーで戦うせいで、奴はおもちゃの箱の下敷きになった。だけど、そんなことで倒れる奴ではないだろう。
「ぐ……ぐぐぐ……グッハァァァァァ!」
やっぱり。奴は魔力を解放して上にあるおもちゃの箱を吹き飛ばした。私は剣を構え、奴を睨んだ。
「こんなことで私を倒せると思うなよ」
「はいはい。強がりは牢屋の中で言ってくださいね」
私はため息を吐きながらこう言った。奴は私を睨み、剣を持って襲い掛かって来た。だけどまぁ剣の腕は初心者に毛が生えたレベルだ。私の方が上だ。
「く……クソ……やはり当たらないか。剣の鍛錬もすればよかった」
「毎日鍛えていれば、かなり強くなるわよ」
「うるさい! 私は剣より魔力を使う方が得意なのだ! これ以上見下すと、酷い目にあうぞ!」
「それじゃあやって見なさいな。ま、さっきと同じようにおもちゃを使った小細工で攻撃するんでしょ?」
「その通りだ。だが、私を本気にさせた今、お前に生きる道はないぞ!」
奴は偉そうにそう言って、魔力を解放した。それと同時に、奴の周囲にラジコンや動くぬいぐるみなど、いろんなおもちゃが動き始めた。
「エクスさん! 気を付けてください!」
後ろから心配そうな表情のティノちゃんの声が聞こえた。私はティノちゃんの方を向き、ブイサインを作ってこう言った。
「大丈夫。奴はすでに小細工をしていたってことは大体予想できていたから。で、ソセジさん」
急に声をかけられたせいか、ソセジさんは一瞬だけ驚いた表情をした。
「この戦いで発生する賠償金ってどうなりますか? 結構高い値が付く物が壊れると思いますが」
「それは多分……上がやってくれると思う。ピアノタワー関係者も、何らかの保険とか対策は練っていると思う」
「大丈夫ってことですね。それじゃあ安心して暴れられます」
ショップエリアで売り物が壊れた時に、いろいろと賠償金が発生し、私がそれらを払うのかとちょっと心配だった。必要最低限のお金しか持っていないし。だけど、それがないなら安心して戦える。その会話を聞いていたのか、エドラムの顔は引きつっていた。
「自分の心配よりも、金銭の問題を考えていたのか」
「まーね。私、流浪のギルドの戦士って身分だからあまりお金持ってないんだよねー」
「私に殺されるとは考えていないのか?」
「そうよ。あんたさ、その実力で私に勝てると思ってるの? はっきり言うけど、あんたの実力じゃあ私に怪我一つ負わせることはできないわよ。天と地の差。あんたなんて余裕で勝てるわよ」
と、私は奴に言葉を返した。その言葉を聞いた奴は怒りの形相を見せ、魔力でおもちゃを操った。
「何度も私を見下すなよ! お望み通りお前を殺してやる!」
奴の魔力によって、操られたおもちゃが一斉に私に襲い掛かって来た。奴は魔力をおもちゃに入れ、それを使って操っている。斬って壊しても、中の魔力が爆弾のように破裂するだろう。その時におもちゃの破片を私に当ててダメージを与えるつもりだ。実に分かりやすい攻撃方法だ。
私は突進してくるおもちゃをかわしつつ、どうやって奴を倒そうか考えた。怒りで我を忘れているし、私を倒すことしか考えていないだろう。これでティノちゃんやソセジさんに攻撃が来ることはない。まぁ、いつものように一撃で奴の腕を斬り落とせばいいか。
(エクス、奴が操るおもちゃが近くに来たぞ!)
おっと、ヴァーギンさんの声が聞こえた。考えている中、奴が操るおもちゃが近くにいた。私は魔力を解放して風を発し、おもちゃを近くの箱に向かって飛ばした。箱に当たったおもちゃは爆発し、周囲の物を燃やし始めた。
「どうだ? この爆発を受けたら、いくらお前でも助かる見込みはないだろう」
「当たればの話。当たらなければ意味ないじゃない」
どや顔で爆発の威力のことを奴は自慢していた。あほらし。そんな単純な攻撃に私はやられないっての。それよりも、いいアイデアが浮かんだ。奴は魔力を爆発のように使うことが得意のようだ。それを利用してやろう。そう考えた私は奴の近くにある高く積まれたおもちゃの箱の上に飛び移った。
「おーい。私はここだよ」
「ふん。高い所に飛び移って、ボス猿のつもりかい?」
「私がボス猿だとしたら、下にいるあんたは役立たずでおバカな子分ってわけね」
私は笑顔を作りながらこう言った。奴はバカにされていると思ったのか、顔をトマトのように真っ赤にして魔力を解放した。
「これ以上私を愚弄するなァァァァァ! そこで止まっていると、私の魔力で貴様を爆死させてやるからなァァァァァ!」
「はいはーい。あんたの言う通りここで待ってまーす」
私は笑いながらこう言った。冷静な状態なら、何故敵の言うことを聞くのだろうと考えるだろう。だが、今の奴は挑発され、怒りで我を忘れている。周りが見えていない状態が一番危険なのに。
「死ねェェェェェ!」
奴が操るおもちゃが一斉に私に向かって飛んで来た。私は魔力を発し、奴の上から風を発した。すると、奴の上空にあったら飛行機のラジコンが奴に向かって落下した。
「あ……」
落ちてくるラジコンを見て、奴は唖然としていた。これから自分がどうなるか分かったのだろう。
「ティノちゃん、ソセジさん。すごい爆発が起こると思うからバリアを張って!」
私の声を聞き、ティノちゃんはすぐにバリアを展開した。流石ティノちゃん、私がやろうとしていることを理解している。私はすぐにその場から離れ、二人の近くに着地した。しばらくして、落下したラジコンが奴に命中し、爆発した。その後、奴が操っていたおもちゃはその爆発がきっかけで次々と誘爆していった。
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
爆発音に紛れ、奴の悲鳴が聞こえた。奴も考えていなかっただろう、まさか自分が作った爆弾でやられるなんて。
数分後、爆発は収まった。私は黒焦げになった奴の体を漁り、デリートボンバーが入ったケースを開けるカギを取り出し、すぐにケースを開けてデリートボンバーを止めた。
「ふぅ、これで二個目」
私は安堵の息を吐きながらこう言った。すると、倒したはずの奴が少しだけ動いた。
「ぐ……ぐう……まさか……私の技を……利用するとは……」
「あんたもバカねぇ。単純な技ほど、相手に察知されやすく、下手したら逆手に取られるのよ。特に、爆弾のような威力が高くて扱いが単純な物は、対策もできるし逆に使われるのよ」
「そのことを考えられないように……私を愚弄したのか……」
「その通り。ギルドの戦士を呼んだから、大人しく捕まってね」
私は奴に向かってこう言った。だが、奴は苦しそうに小さく笑い始めた。
「負けたよ。だが、デリートボンバーはまだ三つある。私はあっさり負けてしまったが……他の三人は……強いぞ」
「あっそ。あんたと同等なら楽に倒せるわ」
私はため息を吐いてこう答えた。その後、外から来たギルドの戦士がエドラムを連れて去って行った。
「後三つですね。このエリアにはあと一つあるんですが……まだ見つかっていないようですね」
「そうね。でも、守る奴がいるからそいつの姿を見れば、近くにあるってことが分かるわ」
私はそう言って周囲を見回した。その時、ギルドの戦士の悲鳴が聞こえた。デリートボンバーを守る騎士を見つけ、そいつと戦って返り討ちにされたのか。私たちは急いで声がした方へ走り始めた。
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