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テロ阻止作戦開始


 翌朝。私は剣の稽古をしながら今後のことを考えていた。ジャッジメントライトがそう簡単に情報を流すことに、私は不信感を持っていた。これから起こすであろう重要な計画を、そう簡単に敵に漏らすだろうか? 挑戦状と私は受け取ったが、罠である可能性もある。だけど、相手がやる以上こっちもそのつもりで行く。それだけだ。


「エクスさん。おはようございます」


 後ろからティノちゃんが声をかけてきた。まだパジャマ姿で、起きたばかりだからか目をこすっている。私は剣の素振りを止め、ティノちゃんに近付いた。


「おはよう。ゆっくり眠れた?」


「少しは……」


 と、不安そうにティノちゃんはこう言った。明日、大きな戦いがあるから緊張しているのだろう。私はティノちゃんの肩に手を置き、しゃがんで話しかけた。


「明日が怖いの?」


「少しだけ。もしかしたら、死ぬかもしれないので……」


「確かにね。でも大丈夫。私があいつらを斬りまくってやるから」


 私は笑顔でこう言った。ティノちゃんは私の笑顔を見て、この人なら本当に問答無用で敵を斬りまくるかもしれないと考えたのだろう、安堵の息を吐いた。


「エクスさんがそう言うなら安心しました。でも、無茶はしないでください」


「大丈夫よ。引き際は考えているから」


 心配そうに声をかけたティノちゃんには私はこう言葉を返した。その後、ティノちゃんは着替えるために部屋に戻った。それと同じタイミングで、ヴァーギンさんが語り掛けた。


(明日のことに関してだが、作戦は練ってあるのか?)


(今入っている情報だと、明日テロを起こすことしか聞いていません。相手がどんな武装で来るか、どんな仕掛けで騒ぎを起こすか分かりません)


(分からないことだらけだな)


(だから、私ができるのは力の限り敵を斬りまくることです。とにかく敵の数を減らして手数を減らせば、敵は思うように行動できないはず)


(その通りだな。エクス、ティノが言ったことと同じだが無茶はするなよ)


(ヴァーギンさんも心配してくれているんですね。ありがとうございます)


 私はそう言うと、ヴァーギンさんは小さく笑った。さて、そろそろ朝食の時間だし、鍛錬を終えて部屋に戻ろう。


 朝食を終えた後、私とティノちゃんはソセジさんやバッハのギルドの戦士と共に作戦会議に出ることになった。このテロ阻止作戦を指示するのはギルドの上役だが、見た限りだと現場に出ていないような人で、頼りにならないという気持ちがあった。頭が回るのか、あれこれ話をしていたが、予想外のことが発生するとは考えていないようだ。ソセジさんは途中でため息を吐き、ティノちゃんも眠いのか眠気と戦っていた。私は髪をいじりながら早く終わらないかと思っていた。それから数時間後、会議は終わった。


「無駄な会議だった。現場に出るのは戦士なのに、現場を知らない人間が指示をするな……」


 と、ソセジさんが終わったと同時に深いため息を吐いてこう言った。どうやら私たちと似た考えを持っているようだ。


「ソセジさんもさっきの会議、真剣に話を聞いていなかったんですね」


「ああ。敵が我々の考え通りに動くわけがない。上役が考えるどの作戦にも穴がある。はっきり言って無能だ。天下りした政治家や、コネで上り詰めた無能は使えない」


「私も同じ気持ちです。とにかく明日、私たち現場の人間で行動を考えましょう」


「その通りだな」


 ソセジさんはニコッと笑ってこう言って、部屋に去って行った。さて、明日もあるから今日はもう休もう。




 翌日。私たちギルドの戦士は早朝にギルドの建物から出発した。日は登っておらず、街灯がまだ周囲を照らしていた。時計を見て、午前一時になったことを確認した。ギルドからピアノタワーまで車で数分。あまり時間がかからないのだが、敵の妨害があると予想してわざと遠回りのルートで向かったのだ。


「さて、ピアノタワーへ到着したぞ」


 と、運転手がこう言った。それと同時に私たちを乗せたトラックが停まり、後ろの扉が開いた。


「作戦始まりだ。奴らがもう動いている可能性もある。気を引き締めて動くように」


「了解」


 ソセジさんの言葉を聞いた戦士たちは、一斉に返事をした。私とティノちゃんは頷いて返事をし、外に出た。ピアノタワーに明かりは灯っておらず、人の気配もなかった。当たり前ね、前もってギルドからピアノタワーに住んでいる人やお店を出している人たちにテロが起こるから避難してくれと前もって教えていたからだ。これでピアノタワーにいる人たちの身は安全……ではない。ピアノタワーが攻撃されたらこの周辺の人たちに危害が及ぶ。避難勧告をしたのだが、まだ逃げていない人もいるだろう。とにかく、被害者が出ないように、ピアノタワーが破壊されないように戦わないと。


 私とティノちゃんは周辺を見回すことになっている。周辺に、武器を持ったジャッジメントライトの一員がいる可能性があるからだ。


「ティノちゃん、魔力の探知はできる?」


「今やっています。まだ、魔力を持った人の探知はできないのですが」


 すでにティノちゃんは魔力を使って敵の位置を把握しようと考えて動いている。だが、一の把握はできていない。敵は騒動を起こすまで、魔力を取っておくつもりか。やみくもに探すのも時間がかかり、手間になる。さて……どうやって敵をあぶりだそうか。そう思っていると、銃声が聞こえた。


「敵がいたぞ!」


 と、敵の存在を知らせる声が響いた。ティノちゃんはすぐに行こうとしたのだが、私は止めた。


「待ちなさいティノちゃん。この声は敵も聞いたはず。自分たちの居場所がばれた以上、敵は自分から姿を現す」


 私がこう言うと、近くの茂みからアサルトライフルを構えた黒マスクの集団が姿を現した。


「ばれた以上しょうがない! 作戦開始!」


「汚れた世界をリセットするため、行動を開始せよ!」


 奴らはそう言って私たちに向かってアサルトライフルを発砲した。ティノちゃんはその動きに反応し、バリアを張った。電車の時と同じように、奴らが使うアサルトライフルは粗悪な物だった。


「可哀想な人たちね。そんな粗悪品で戦えって言われるなんて」


 私はそう言って奴らに近付き、アサルトライフルを斬り落とし、奴らの腕や足を狙って斬った。


「ぐ……うう……お前は、エクス・シルバハート!」


「我々の邪魔をしようとしている女か。ゴクラクキブンの件でジャッジメントライトはお前を憎んでいるぞ」


「上等。私もあんたたちのことを憎んでいるわよ。イカレ集団」


 私は目の前にいた黒マスクの顔面に向かって蹴りを放った。蹴りを受けた黒マスクは小さな悲鳴を上げて後ろへ吹き飛び、そのまま倒れた。もう一人の仲間は私を見てナイフを取り出そうとしたが、私はそいつの足を強く踏んだ。


「あっだー!」


「そんな弱い力でテロを起こすつもり?」


 私は踏まれた足を抑える黒マスクを見てこう言った。奴は私を睨んでいる……だろう。黒マスクのせいで表情が分からない。だが、そんな奴に向かって私は蹴りを放った。


「がっふぅ……」


 と、情けない声を上げて奴は倒れた。さて、ここで騒動が大きく広がった。各地で銃声が聞こえるし、爆発音も聞こえる。で、私とティノちゃんはピアノタワーから少し離れた所にいる。多分、敵の大物は直接ピアノタワーへ向かうだろう。


「皆、雑魚の相手はお願い」


 私は近くにいたギルドの戦士にこう言った。いきなりこう言われたギルドの戦士は戸惑いながら、私にこう言った。


「あの、これじゃあ作戦と違いますが。作戦としては、敵が出るまでここで待機して、敵の存在が確認出来たら殲滅するまで戦うと」


「それじゃあ時間がかかってテロを起こそうとした首謀者を逃がすわ! この騒動を手っ取り早く終わらせるには、敵の頭を叩くこと! それは私がやっておくから!」


 と言って、私とティノちゃんは急いでピアノタワーへ向かって走って行った。


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