ザムの最後の手段
ギルドの戦士たちは、ジャッジメントライトのアジトを攻撃するためにデリートボンバーを使った。このおかげでアジトの崩壊は拡大したのだが、ザムにとどめを刺そうとした瞬間に爆発したため、この戦いに決着をつけることはできなかった。
「いつつ……運がないわね」
下の階に落ちたエクスは立ち上がりながらこう言った。ティノは魔力を解放してゆっくりと降りていた。その後、エクスとティノは急いでザムの姿を探した。
「ザムはどこへ行ったんでしょうか?」
「あいつもどこかに落ちたはず。早く探してとどめを刺さないと。本音を言うと、落下した時に死んでいればいいんだけど」
エクスがこう言った直後、近くの瓦礫の中からザムが姿を現し、エクスに攻撃を仕掛けた。
「卑劣なことをするわねー。ま、悪人だからこんなことをするのも当たり前ね」
「誰が悪人だ! 悪はお前だ!」
ザムは叫びながら剣を振り下ろしたが、ティノがバリアを発して攻撃を防ぎ、エクスがザムに向かって反撃を仕掛けた。
「悪は大人しくくたばりなさい!」
「大人しくくたばるのはお前だァァァァァ!」
エクスが反撃をすると察したザムはすぐに態勢を整え、再びエクスに攻撃を仕掛けた。その直後、二人の攻撃がぶつかった。エクスは俺を使っているため、その時の衝撃を感じた。グウッ! 全身が痛む! 刃の傷が広がったようだ。だが……ザムを倒すため、何が何でも踏ん張らないと!
「くたばれ、エクス・シルバハート!」
ザムは魔力を解放し、力を強めた。あと少しで倒れると思うのに、ザムはまだ倒れない。クソ、一体どれだけ傷を付ければ倒せるのだ?
「こんの……倒れるのは……あんたよォォォォォ!」
エクスは叫びながら魔力を解放した。エクスの強い魔力を感じる。ザムの剣の刃とぶつかり合っているせいか、ザムの力を感じている。エクスの力は、それ以上だ!
(行けるぞエクス、このままザムを倒せ!)
(はい! この一撃で、あの野郎をぶっ倒します!)
エクスは俺に返事をし、開放している魔力を強くした。そのおかげか、ザムに押し勝ち、体勢を崩すことに成功した。
「ぐがっ!」
「終わりよ!」
体勢を崩したザムに向かい、エクスは俺を振り下ろした。
勝った! これで勝った! 長かったジャッジメントライトとの戦いが終わる! ザムに一閃を与えることができる! 私はそう思いながらヴァーギンさんを振り下ろした。ヴァーギンさんの刃はザムに命中。そしてそのまま深く傷付けた。
「グガッ! ウワアアアアア!」
ザムは悲鳴を上げていた。ヴァーギンさんを振り終えた後、私はヴァーギンさんの刃に付着した血を拭い、ザムの様子を見た。斬られた個所から大量の血が流れている。ザムは震える右手で斬られた個所に触れ、魔力を使って治癒しようとした。しかし、私とティノちゃんとの戦いで魔力を使いすぎたせいで、治癒はできなかった。
「そ……そん……な……治癒が……でき……ない……」
「魔力の使い過ぎで、治療ができないようね。これで本当に終わりね。覚悟しなさい。今、捕まえるから」
「エクスさん。私が雷の縄で奴を縛ります」
「そうね。今の状態で感電させれば、あいつは動けないと思うし」
ティノちゃんは雷の縄を作り、倒れているザムに近付いた。私はこれで全てが終わると思い、息を吐いていた。だが、そうはいかなかった。
「終わるわけには……負けるわけにはいかない! 私の敗北は、正義が負けることを意味する!」
ザムは左手をズボンのポケットに突っ込んだ。まずい……ザムはストッパーブレイクを使おうとしているのか!
「そうはさせないわよ!」
私は風の弾丸を発し、ザムが持つストッパーブレイクが入った注射器を破壊しようとしたが、ザムは大声を発して私が発した風の弾丸を消し去った。
「残念だったなぁ……」
ザムは気持ち悪い笑顔で私とティノちゃんを見ながら、ストッパーブレイクを注入した。クソッ! ボスである以上、使ったら後には戻れないストッパーブレイクを使わないだろうと思っていたけど……いざという時のために持っていたのか! 安易な考えだった!
「フハハハハハ! いいぞ……いいぞいいぞ! 力が戻って来たぞォォォォォ!」
ザムは魔力を解放しながら高らかに笑い出した。ティノちゃんは私の横に移動し、魔力を解放した。
「エクスさん……もう一度本気で戦わないといけませんね」
「ええ。ティノちゃん、もうひと踏ん張り行ける?」
「もちろんです。命を懸けて戦います」
「お願いね。それじゃ……行くわよ!」
私は魔力を解放し、ティノちゃんと共にザムに向かって走り出した。ザムは大声を上げながら剣を振り上げ、私に向かって剣を振り下ろした。私はすぐにネメシスソードを取り出してザムの攻撃を防ぎ、ヴァーギンさんを使ってザムの腹を突き刺した。
「フン。効かぬぞ」
剣を突き刺されたというのに、ザムは笑いながら私にこう言った。私は後ろに下がり、それに合わせてティノちゃんが無数の魔力で作られた剣を作り出し、ザムに向かって放った。
「魔力の剣か。来るがいい!」
ザムは両腕を振り回し、ティノちゃんが発した魔力の剣を壊し始めた。だが、全ての魔力の剣を壊すことはできず、一部の剣がザムの両腕に突き刺さった。深く突き刺さっているようにみえるが、それでもザムの動きは変わらない。
「どうした? それで本気か? 私はまだ戦えるぞ!」
ザムは笑いながらこう言った。私とティノちゃんは後ろに下がり、呼吸を整えながら話をした。
「ストッパーブレイク……あれは新型でしょうか? 結構厄介ですね」
「そうね。今まで与えたダメージも無駄になったのかしら?」
「その可能性もありますが……これは私の考えです。ストッパーブレイクには痛みの感覚を麻痺させる、麻酔のような効果もあるかもしれません。痛みがなくなったと言いますが、それはただ、痛みを感じなくなっただけだと思います」
「だとしたら、与えたダメージはそのまま。感覚が麻痺したせいで、そのことに気付いてない。あるいは、回復したと勘違いしているってわけね」
「その通りです。それと、今のザムの姿を見てください。回復したと勘違いして笑っているようですが、さっきの傷から血はまだ流れています。このまま攻撃を続けたら、出血の量は増えていずれ倒れるかもしれません」
「そうね」
私とティノちゃんが話をしていると、ザムは私とティノちゃんの方を向いて大声を発した。
「呑気に話をしている場合ではないぞ! このままお前らを殺してやるからなぁ!」
と言って、ザムが襲い掛かって来た。
(来るぞ、二人とも!)
「ティノちゃん、バリアを飛ばせる?」
「何か作戦がありますね。分かりました」
「できれば、分厚くて、一瞬でもザムの動きを止められるような奴をお願い!」
「はい!」
ティノちゃんはそう言って、飛び上がって襲い来るザムに向かって私の願い通りのバリアを発した。ザムはそのバリアに激突し、動きを止めた。その寸前に、私は急いでザムの後ろに回れるように走り出した。
「こんなバリア、すぐに壊してやるぞ!」
ザムは力を込めた右のストレートで、バリアを粉砕した。予想通り。
「ティノちゃん、割れたバリアの破片を操って、あいつに突き刺して!」
飛び上がりながら私はこう言った。ティノちゃんはバリアの破片を動かし、ザムに向かって動かした。
「フン! こんな攻撃効かぬぞ! ティノ・オーダラビト! お前から殺してやる!」
「そうはさせないわよ。大事な相棒を殺させてたまるもんですか!」
ザムの背後に回った私はヴァーギンさんを両手で構え、ザムの背中に突き刺した。深く突き刺したと思うが、ザムはゆっくりと私の方を振り向き、にやりと笑った。
「きーかーぬーぞー。こんな攻撃、全然効かぬぞォォォォォ!」
ザムは魔力を解放し、私を吹き飛ばした。そして、吹き飛んだ私に向かって回転しながら蹴りを放った。
「グガッ!」
蹴りを受けた直後、自分でも変だと思う悲鳴を上げ、そのまま床に向かって吹き飛んで激突した。
(エクス!)
激突した際、手を放してしまったからヴァーギンさんを少し離れた所へ落してしまった。すぐに起き上がってザムに攻撃を仕掛けたいが……思ったよりダメージが重い。すぐに……動けない……。
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